郷愁のなかに
ひとつの季節が埋没していく
ぼくの憧れの季節
ぼくのまどろみの春が
そして
ぼくの内部では
無数のさなぎが
可憐なしじみ蝶になる
戸外を歩いていくと
春の花 春の光
自然のポエムが待っている
ぼくは歩いていく
海まで続く川沿いの道を
視界に広がる水辺の景色
ゆっくりと歩いていくと
季節の変化を発見できる
ぼくは見る
春カモメの軽やかな飛翔や
川面の光るさざ波を
歩きながらぼくは想う
これから行く海辺のことを
潮の香りや光る海を
片道三十分を歩くだけでも
いのちの感覚がよみがえる
戸外を歩いていくと
春の声 春の歌
自然の祝福とめぐりあう
歩きながらぼくは聴く
水鳥のなきごえや
木の葉のそよぎを
いまは春
ぼくの五感も散歩していく
こんど引っ越しをするときには
海辺の小さな家を選んでみよう
妻と二人だけだから荷物は最小限にしよう
けれども 兎とリラの木は 連れて行こう
早朝 最初に顔をあわせるのは兎のラビだ
ぼくがおきると そばにきて エサをねだる
性格のおとなしい白と灰色の毛並みの兎だ
話しかけながら 軽く おでこをなでてやる
兎は 8年前に 娘のるみなが買ってきた
娘たちが巣立った後も 部屋で飼っている
共通の話題の主人公だから家族の中心だ
兎のラビは 妻には とくになついている
兎とすごす部屋の前庭に リラの木がある
春になると 可憐な赤紫の花が咲きそろう
調布から神戸に さらに木更津から幕張へ
引っ越しのたびにも連れてきた唯一の木だ
リラの木は30年ほど前に植木市で買った
調布の家に 苗木を植えた思い出の木だ
リラの木を見ると 青春の日々を思いだす
移り住んだ場所の 周囲の情景も思いだす
こんど引っ越しをするときにも
兎とリラの木は 連れて行こう
兎のラビとも 毎朝 顔をあわせるだろう
リラの木も 春には 花を咲かせるだろう
鳩が歩いている
鳩と一緒に歩く影
公園の広い芝生には
散在する鳩の群れ
歩きながら鳩を眺める
鳩の観察は素早い
誰かがポップコーンを投げると
鳩がいっせいに群がっていく
四方から飛んでいく
飛翔のシルエットが芝生を走る
半円に広がる空からは
ふりそそぐ太陽の光
早春の光のなかでは
光と影が鮮やかに見える
すれちがう人の微笑や話し声
地面でゆれる木の葉の影
午後の噴水の広場にも
ひとかたまりの鳩の群れ
立ち止まって鳩を眺める
歩いている鳩
羽ばたいている鳩
求愛の動作をしている鳩
さまざまな鳩の影が動く
いくつもの鳩の声がきこえる
いまは 鳩たちの愛の季節
ぼくの視界のなかでは
もう 春はまばゆい
沈黙の空間と時間の
無限の奥行き
ぼくらをとりかこんで
沈黙のはてしない世界がある
沈黙がひととき結晶して
花を咲かせる
いのちの輝きになる
とびかうカモメの飛翔になる
沈黙から生まれるポエジー
それは夜明けのひかり
娘たちの優しい微笑
マリンブルーの海の景色
ぼくらは歩いていく
この春のひとときを
沈黙の空間と時間の
数々のポエジーを感じながら
雲の切れ間には
青空が見える
この青空のかなたにも
沈黙のはてしない世界がある
フォトポエムにようこそ!
ご訪問、ありがとうございます。
「フォトポエム 西尾征紀(Nishio Masanori)」は、閲覧数が135万を突破しました。
2月のフォトポエムでは、フォトポエムと遊ぼうをお届けします。
西尾征紀には、8つの詩のブログがあります。
フォトポエム、夢の飛翔、ポエムワールド、海のフォトポエム、春のフォトポエム、夏のフォトポエム、秋のフォトポエム、冬のフォトポエム。
8つの詩のブログのトータル閲覧数は、530万を超えました。
写真の試みでは、PIXTAも更新しています。素材写真も、3191枚になりました。
西尾征紀の詩と写真を、これからも、よろしくお願いいたします。
![現代詩ランキング](https://blog.with2.net/img/banner/c/banner_2/br_c_3653_2.gif)
現代詩ランキング
どうぞ、よろしく!。
西尾征紀 (Nishio Masanori)