ブラピ主演の最新作、『ブレット・トレイン』の公開が始まり、早速週末のレイトショーで観賞してきた。伊坂幸太郎原作の『マリアビートル』を原作に、ハリウッドで映画化された作品だが、日本の新幹線を舞台に、東京から京都に移動する間に、様々な殺し屋が新幹線に乗り込み、世界一不運な男“レディーバグ”(てんとう虫)をブラピが演じる痛快アクション映画である。
『ブレット・トレイン』の“ブレット”という言葉だが、弾丸という意味で、Bullet Train(弾丸特急)という言葉は日本の新幹線を指す言葉として有名だ。しかし、これまで弾丸はブレットではなく、“ブリット”と書くのが一般的であったが(スティーブ・マックウィーン主演の同名映画が有名だが)、発音的にブレットという表記に変わっているのがまず印象的であった。
ブラピはなんだかんだ好きな俳優で、彼が主演している主要な映画はだいだい観ているので、今回も彼の最新作を観てみたいと思ったことと、日本の小説が原作で、舞台も日本、しかも新幹線が登場する映画としてどのように映画で描かれるのかという純粋な興味もあった。
観賞した結論から言うと、映画としては良くも悪くも観終わった後にさほど余韻も残らない映画だった。物語も、逆に原作の小説ではどうなっていたのかと思ってしまうくらい展開にイマイチ感もあり、最後までのめり込めない自分がいたのも事実だ。しかし、冷静に振り返ると、そんな映画でも特筆すべきポイントがいくつもあった意味では興味深い映画であったとだけ言っておこう。
最初にダメだしだけ纏めてしておくと、日本の新幹線なのに殆ど日本人客が乗っていない(笑)。結構残酷な殺しのシーンなどもあり、狙いとしては、タランティーノ監督の『キルビル』的なカルトテイストの映画になっていると言えば聞こえはいいが、やや中途半端感は否めなかった。また、随所にブラックジョークみたいな笑いが散りばめたアクションコメディーというつもりで制作したと思うが、どうも日本人にはウケない感じのギャグや会話のやり取りも多く、全体的にイマイチ感情移入し辛かったように思う(アメリカ人にはもう少しウケるだろう)。
また描かれた日本の描写も、結局コロナで日本ロケしておらず、LAでのセットによる撮影だったこともあり、相変わらず日本の描写は結構ヘンテコなデザインで違和感満載(昔よりはかなりマシになったが)。新幹線も東京-京都間が夜行列車みたいな設定になっているし、富士山の位置もヘンテコ。新幹線も、ひかりやのぞみならぬ“ゆかり”号になっていて、車内も普通の新幹線のグリーン車でもありえないような座席コーナーもある設定。これはこれで結構笑える。
とあるブリーフケースを回収するミッションの為に新幹線に乗車することになった運の悪い殺し屋、レディーバグに次々とクセの強い殺し屋たちが乗り込んできて、車内での壮絶バトルが繰り広げられていくのだが、途中で、各殺し屋の乗り合わせた背景などのショートエピソードが突然挿入され、この展開はまるで『キルビル』のようなパクリ(笑)で凝っていたものの、この為か逆に全体のテンポとして少し退屈に感じるシーンもあった。
東京オリンピックの公認キャラにも似たゆるキャラが登場し、そのキャラの特別専用車両みたいなものもあって、クールジャパンもテンコ盛りだ(笑)。そして殺し屋キャラの中でも特にキャラ立ちしているみかんとレモンと名付けられた二人組の殺し屋が登場するのだが、1人が途中駅で蹴り下ろされてしまうものの、何とか新幹線の外にしがみつき(あのスピードでこれは絶対にあり得ないので笑うしかないのだが(笑))、更にあり得ないのが、運転席のフロントガラスを素手で叩き割り、車内に戻ってくるのだ。新幹線レベルになると、相当な強化ガラスなので、そんな人間のパンチくらいで割れるようなフロントガラスなんて絶対ありえないのだが、ここはギャグの一つとして割切るしかない。。。
ダメなところをいっぱい書いてしまったが、特筆すべきポイントを次に紹介しよう。まずはヘンテコな日本の描写だが、見方を変えれば、『ブレードランナー』的な未来都市みたいな面白さもあって、完全に架空の都市だと割り切って観れば面白いかもしれない。ブラピは相変わらずカッコいいし、いい味を出している。そしてクセの強い殺し屋たちもなかなか慣れてくると味わい深い。そしてキャストで言えば、プリンス(王子)と呼ばれる、女性が登場したり、ホーネットという女殺し屋も登場する点で、女性もクセが強くて面白い。犯罪組織のドン、ホワイト・デス(白い死神)と呼ばれる男に昔主人を殺された日本人、エルダーとして渋いアクションを見せるのが、日本を代表するアクション俳優の真田広之。なかなかインパクトのある刀さばきを見せており、存在感を放っていたのは良かったのだが、ある意味こんな映画に真田広之を借り出していいのかと、ちょっと心配になってしまった(笑)。
ここからネタバレになるが、今回映画の最後にサンドラ・ブロックが友情出演しているのも面白い。実はブラピへのミッションをサポートする役で、映画の冒頭から声で出演していたのだが、最後にサンドラだとわかる設定。更にはチャニング・テイタムも新幹線に乗り合わせた乗客として短いながらも良い役割を果たす。実はこれ、サンドラとチャニングが主演していた映画、『ザ・ロストシティ』にブラピが友情出演していたことへのお返し的な友情出演とも言えるキャスティングとなっているのではないかと思われる。
ツッコミ所が満載の『ブレット・トレイン』だが、おバカなB級カルト映画として観賞すれば意外に楽しめるし、僕のように最新のブラピや真田広之を楽しみたい人には一度は観賞することをおススメしたい、そんな映画であった。