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『007/スカイフォール』などの監督で知られるサム・メンデスが監督した本作は、第一次世界大戦を舞台にした戦争映画である。メンデス監督が自分の祖父から聞いた戦争体験談をもとに映画化したものらしい。物語は至ってシンプル。ドイツ軍 vs. フランス・イギリス軍からなる連合軍が消耗戦を繰り返していた1917年に戦線で起こった一つの出来事を物語として組み立てられている。
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ドイツ軍が要塞化された陣地を築き待ち構えられている“罠”であることを前線にいる部隊に知らせ、直ちに攻撃を辞めさせることを伝える為、二人の若き上等兵(ブレイクとスコフィールド)が命をかけた伝令を持って敵軍が残る戦場を駆け抜ける。時間があまりない中突き進んで行くのには、もう一つ大きな理由があった。それはブレイクの兄がその前線にいるということだ。このまま知らせないで終われば、兄は間違いなく死んでしまう。兄を救い出したい一心でブレイクとスコフィールドは前線へと突き進むのだ。
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今回特筆すべきなのは、映画全体を“ワンカット”で撮影したかのような撮影手法。実際にはところどころでカットしながら映画全体があたかもワンカットであるかのように上手くフィルムを編集しているのだが、この手法は古くは僕の尊敬するアルフレッド・ヒッチコック監督が、映画『ロープ』で実験していたものだ。
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また、この映画はワンカット撮影ということ以上に、カメラ自体が役者の目線で一緒に動き回っている点が特徴で、まるで自分も同じ戦場にいるかのような臨場感が凄い。すぐ近くに敵がいるのではないか!という緊迫感・緊張感を観ている我々も疑似体感することが出来るのだ。まるでロールプレイングゲームに参加しているようでもある。これは、同じ戦争映画という意味では過去にスティーブン・スピルバーグ監督の名作『プライベートライアン』でも似た手法が取られ、尋常ではない緊迫感とリアリティーを産み出すことに成功したが、今回もそれに近い効果を見事に発揮している。戦闘機が近くに墜落してくるシーンや、爆弾が降る戦場をひたすら前に向かって走り続けるシーンなどは感動もので、あたかもワンカットかのように視線を変更せずに見せており、視覚的に見事な効果を実現している。
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残念ながら、アカデミー作品賞の受賞とはならなかったが、新たな戦争映画としてかなりの秀作であると感じた。確かにストーリーはシンプルである為、アカデミー作品賞を獲得するにたる社会問題や裏テーマという要素には欠けていたという点で仕方ない気もするし、純粋に他の名作戦争映画と比べた場合、物語の深さという点では若干物足りなかったような気もするが、それは決して映画として劣っているわけでは無く、むしろ大スクリーンで視覚的に見せるという意味では映画の醍醐味を感じさせるに相応しい映画だと感じた。また『1917』は、これまでの戦争映画に比べてもおぞましい残酷なシーンはそう多く無い(戦場に転がっている死体などはかなり出てくるものの)。その意味でも、女性にも見やすい、新たな戦争映画という意味では、良く出来た作品であったように思う。