40周年記念アルバムのリリースを機に、また久しぶりに松田聖子にハマってしまった。黄金期の名曲の数々は、今年春に紹介したベスト盤、『SEIKO STORY ~80’s HITS COLLECTION』がおススメである。1980年のデビュー曲『裸足の季節』から1989年のシングル『Precious Heart』までのシングル27枚を完全収録した上に、当時B面曲やアルバム収録曲の中から人気の高い曲なども収録している最強の内容。80年代黄金期の松田聖子を満喫するには最高のベストアルバムだ。
そして、改めて松田聖子を色々と分析してみたくなったのだが、黄金期ではなく、90年代以降の松田聖子にもスャbトを当てて、改めてシングル曲などを聴いてみることに。27曲目のシングル、『Precious Heart』がオリコン1位にならず、それまで持っていた24曲連続1位記録がここで途絶えてしまったのだが、実はこの曲もプリンセスプリンセスの奥居香が作曲した良い曲なので、1位が取れなかったのが不思議なくらいだ。
80年代の10年間は、まさに松田聖子がフル稼働して、大ヒット曲を量産し続けた時期だ。しかし、85年から少しずつ新たな展開が始まる。1985年には郷ひろみと破局。しかし、そのすぐ後に神田正輝と結婚。1986年には、長女沙也加を出産し、1987年にはアルバム『SUPREME』で完全復帰(このアルバムも大ヒット)。そして1987年にはシングル・アルバム『Strawberry Time』をリリースし、当時“ママドル”という言葉も流行した。また、世界的なプロデューサー、デビット・フォスターを迎えたアルバム『Citron』、そしてシングル『Marrakech』をリリースし1位になるなど、その人気は継続したが、明らかに結婚・出産後は新たな展開を見据えた活動が目立った。
結婚を機に、きっぱりと券\界から姿を消した山口百恵とは違い、松田聖子はママになってもアイドルを続ける方向性を打ち出し、それまでの女性の働き方や価値観にも大きな影響を与える結果となったことは間違いない。まさに新たな時代を切り開いたロールモデルと言える。
そして、オリコン1位を取り続けるという最前線での活動にも少し翳りが出てきた1989年、時代の変化を察知してか否か、松田聖子は米国進出に取り組み始める。これを機に、これまでの作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂(松任谷由実)のヒットパターンからは離れ、セルフプロデュースの道を選ぶ。ヒットチャートからは少し遠ざかってしまったかもしれないが、一方でメディアへの話題には事欠かなかった。
米国進出では、大成功までは行かなかったものの、『The Right Combination』ではカナダで2位になるなど、先駆者として一定の成果を残し、ある意味それまでのアイドルからは脱皮して、アーティストとして生きて行く道筋を作っていったのはさすがである。そして、僕が今回注目したのは、この米国進出を果たした1年後の1990年には、『We Are Love』で再び日本の音楽業界に復帰を果たし、その後20年間、年に1回くらいのペースでシングルとアルバムを出し続けていること。1990年代以降の松田聖子も、実は黄金期に勝るとも劣らず、精力的な活動をしているのだが、案外知られていない。
1990年代に入ると、チャゲ&飛鳥、小田和正の大ヒット曲や、ミスチル、B’z、ドリカム、TRF、安室奈美恵、GLOBEなどの小室ファミリーが一気に台頭し、CDセールスも200万枚以上は当たり前のメガヒット時代に突入した。そんな中で、松田聖子の存在はやや“昔のアイドル”として消費者の目には映ってしまったのかもしれない。まさに時代が激変していたのだ。そんなメガヒット時代に引っ張られるように、松田聖子も『あなたに逢いたくて~Missing You~』を1996年にリリースし、自身最大のヒット作・キャリアハイとなった100万枚以上 のセールスを突破している。黄金期の松田聖子でも成しえなかったセールス記録である。
今回、1990年以降の松田聖子シングルヒットの中から、自分が特に好きな曲を一気にダウンロードして、松田聖子1990年-2020年までの20年間のベスト盤を作ってみた。収録曲は下記の通り。この多くは、ベスト盤、『SEIKO STORY 90’s-00’s HITS COLLECTION』にも収録されているので、ぜひチェックしてみて欲しい。
(松田聖子 1990-2020年ヒット曲マイ厳選コレクション)
1) We Are Love (1990年、31枚目のシングル)
2) きっと、また逢える・・・ (1992年、32枚目のシングル)
3) あなたのすべてになりたい (1992年、33枚目のシングル)
4) 大切なあなた (1993年、34枚目のシングル)
5) A Touch of Destiny (1993年、35枚目のシングル)
6) 輝いた季節へ旅立とう (1994年、38枚目のシングル)
7) 素敵にOnce Again (1995年、39枚目のシングル)
8) あなたに逢いたくて~Missing You~ (1996年、40枚目のミリオンヒットシングル)
9) さよならの瞬間 (1996年、43枚目のシングル)
10)哀しみのボート (1999年、49枚目のシングル)
11)櫻の園 (1999年、アルバム『永遠の少女』収録曲)
12)素敵な明日(2002年、57枚目のシングル)
13)しあわせな気持ち (2005年、65枚目のシングル)
14)いくつの夜明けを数えたら (2010年、75枚目のシングル)
15)特別な恋人 (2011年、76枚目のシングル)
16)永遠のもっと果てまで (2015年、81枚目のシングル)
17)薔薇のように咲いて、桜のように散って (2016年、82枚目のシングル)
18)風に向かう一輪の花 (2020年、アルバム『SEIKO MATSUDA 2020』収録曲、新曲)
1990年にセルフプロデュースとなってからは、松田聖子自ら作詞・作曲などを手鰍ッるようになった。それまで松本隆による何とも詩的で美しい歌詞だったのが、松田聖子自身の歌詞は、“あなたに逢いたい”、“愛がすべて”、みたいな、直接的で愛の感情を赤裸々に表現した作品が主流となり、松本隆の歌詞が好きだった僕も、当時の直接的な松田聖子の歌詞は正直あまり響かなかった。でも、今改めて聴いてみると、上記18曲はなかなかの名曲揃いだ。
この中でも特に好きな曲が、『さよならの瞬間』。この曲は松田聖子の作詞・作曲ながら、曲全体のトーンとしては、80年代のヒット曲風でもあり、また切ないメロディーが哀しみを誘う失恋ソングだ。歌詞も、直接的な表現を少し避けて、松本隆が手鰍ッたかのような曲になっているのも好きになった理由だ。
そして続く『哀しみのボート』は、11年ぶりに松本隆を迎えた曲でもあり、とても切ないバラードの秀作である。発売当時は僕もシングルを購入したのを良く覚えている。この『哀しみのボート』が収録されているアルバムが、1999年にリリースされた『永遠の少女』。そのタイトル通り、松本隆を全面的に迎えたアルバムとして、80年代に少し回帰したような仕上がりとなっており、往年の松田聖子ファンは大いに喜んだ。
アルバム『永遠の少女』には、もう一つ重要な曲が収録されていることを最近初めて知った。松田聖子の黄金期を支えていた作曲・編曲家の大村雅朗が1997年に他界してしまったが、その2年後にリリースされたこのアルバムに、彼の遺作となった『櫻の園』という曲が収録され、当時話題を呼んだらしい。大村雅朗は、松田聖子とも年齢が近く、同郷(同じ福岡)だったこともあり、若い頃から意気投合して、兄のような存在として慕っていた人物。あの『SWEET MEMORIES』や、松田聖子の人気曲、『セイシェルの夕陽』の作曲者として有名だが、実はその他も数多くの松田聖子ヒット曲の編曲を手鰍ッており、80年代を代表するヒットメーカーなのだ。この遺作は、当初他の歌手向けに製作されたが、事情によってお蔵入りになって、松本隆が預かっていたもの。大村の死後、松本隆が“この曲を松田聖子が歌ってくれたら、大村雅朗も喜ぶだろう”として、残された曲に新たな歌詞を付けて、このアルバムに収録された。当初大村の曲だということを松田聖子には伏せて、レコーディングが開始されたらしいが、大村を連想する歌詞やメロディーから松田聖子も途中で感づいてしまい、2番の収録で泣き崩れてレコーディングが中断することもあったというエピソードも知ることが出来た。この背景も知った上で改めてこの美しい曲を聴くと、何とも切ない気持ちになるが、かなりの名曲ではないかと思う。改めて大村雅朗と松本隆の非凡な才能を痛感することが出来る曲となっている。
76枚目のシングル、『特別な恋人』は、松田聖子30周年記念として、あの駐烽ワりやが初めて松田聖子に提供した曲。駐烽ワりや自身がカバーしたバージョンは、アルバム『TRAD』に収録されている。
そして81枚目のシングル、『永遠のもっと果てまで』は、1984年の『時間の国のアリス』以来、実に31年ぶりに、作詞:松本隆、作曲:呉田軽穂(松任谷由実)を迎えて制作された、デビュー35周年記念シングル。このゴールデンコンビによる新作も、松田聖子ファンには大変嬉しい出来事であったと言える。
最後に、2016年にリリースされた82枚目のシングル、『薔薇のように咲いて、桜のように散って』は、あのX-Japan/YOSHIKIによる楽曲提供。こちらも紅白歌合戦などでYOSHIKIとの共演で披露され、話題となった。
40年間で、実に82枚ものシングルをリリースし続けてきたこと自体凄い功績だが、黄金期の80年代以降もなかなか良い曲を世に送り出しており、再評価されるべきかもしれないと感じた。
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