The Timeとはプリンスが発掘、育成してきたバンドであり、プリンスの大ヒット映画、『Purple Rain』の劇中に登場するバンドこそがThe Timeなのである。映画の中では『Jungle Love』と言う曲を披露しており、当時ヒットした。
このバンドのボーカルであるモリス・デイは最高にインチキ臭い、セレブ風チャラ男で、いつもスーツでキメて、金にモノを言わせて女性をナンパするキャラクター。まさにイメージとしては、"ファンク業界の高田純次"である。これがかなりチープで、今見ると結構笑えるのだ(笑)。
しかし、このバンドはそんなコミックバンド的な扱いでは終わらない。本当の凄さは、その音楽的な才能だ。知ってる方も多いだろうが、The Timeにはシンセ担当のジミー・ジャムとベース担当のテリー・ルイスがいた。この二人が、ジャネット・ジャクソンの大ヒットアルバム『Control』をプロデュースして一躍有名プロデューサーとなった、あのジャム&ルイスである。プリンスファミリーには、こんな隠れた素晴らしい才能も潜んでいたのだ。その後ジャネットの成功と共に、ジャム&ルイスもヒットメーカーとなり、テディー・ライリー、ベビーフェイスらと共に一時代を築いた敏腕プロデューサーとなったのだ。
話をThe Timeに戻すと、彼らは一度1985年頃に解散状態にあったが、プリンスの興行的に失敗した映画、『Graphtti Bridge』の為にThe Timeのメンバーが再結成。そして、1990年にリリースしたアルバム『Pandemonium』が兎に角素晴らしいのだ。このアルバムは高田純次色満載なのだが、ジャネットの作品にも通じるキレのあるファンク、ロックが冴え渡る作品で、ジャム&ルイスの特徴的なカラーが色濃くアルバムに反映されている。特にBillboardのR&BチャートでNo.1を獲得したシングル『Jerk Out』は、彼らを代表するヒット曲となった。このシングルの歌詞が見事に高田純次的でかなり面白い。
この他、アルバムタイトル曲の『Pandemonium』と『Chocolate』はファンキーで、ノリノリで素晴らしい出来映えだ。特に『Chocolate』は、ちょっとエッチな比喩も散りばめられた僕のお気に入りの一曲。"適当ファンク"が満載かと思えば、ベビーフェイスのような美しいバラードの『Sometimes I Get Lonely』や、『Donald Trump(Black Version)』(ドナルド・トランプが大統領候補となった今、ある意味16年の歳月を経てタイムリーな曲でもあり)も秀逸なバラードで、お気楽/高田純次キャラとの見事なギャップを見せ付けてくれる(笑)。今振り返ると改めて全体のバランスも良く取られていることに気が付く。ロックなナンバーの『Blondie』と『Skillet』も見事だし、プリンス的なファンク『It's Your World』は特に体がリズムに合わせて動き出してしまうような傑作だが、アルバム全体を通して、とても気分が上がる一枚だ。
このアルバムは、1990年当時にCDで購入し良く聴いていたが、これまでBook Offにも売らずに大切に保管していた。久しぶりに引っ張り出して聴いてみると、やっぱり素晴らしいし、改めて1990年当時に戻してくれるアルバムである。あのジャム&ルイスの原点を垣間見る意味でもオススメの一枚である。
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