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愛犬との絆の物語 原田マハの『一分間だけ』

先日、本屋さんである文庫本を目にして、思わず手に取ってしまった。それは原田マハの『一分間だけ』という小説であった。原田マハという作家は知っていたが、実は一度も読んだことがなかったし、2007年に出版された小説らしいので結構前の作品だが、今まで不覚にも聞いたことがなかったのだ。しかし、今回見たこの作品の文庫本版カバーには、可愛い寝顔のゴールデンリトリーバーの赤ちゃんの写真。そしてタイトルが『一分間だけ』。きっとワンちゃんとの切ない物語だろうと想像は出来たが、妙にこの小説の物語が気になって、そのまま購入してしまった。

ここ2週間くらいで通勤電車の中で一気に読んでしまったが、やはり想像していた通り、何とも切ない物語。特にワンちゃんを飼っている身としては、心が締め付けられる物語であった。

物語は、ファッション雑誌の編集者の藍が、ある日ゴールデンリトリーバーのリラを飼うことになった。恋人の浩介と一緒に育てたものの、仕事が生きがいの藍は、日々の忙しさに翻弄され、何を愛し何に愛されているのかを見失っていく・・・。浩介が去り、残されたリラとの生活に苦痛を感じ始めた頃、リラが癌に侵されてしまう。愛犬との闘病生活の中で藍は『本当に大切なもの』に気づきはじめる、というのがあらすじだ。

それなりの決心をしてリラを飼い始めた筈なのだが、仕事が生きがいの中で、藍は、“リラがいなければ”と、次第にリラのことを面倒に感じ出してしまう。愛犬家としては、“なんて酷い!”と思ってしまったが、やっぱり人間とは弱いものである。頭ではわかっていても、ついつい愛していた者を遠ざけてしまったり、厄介に感じてしまい、自分を見失ってしまうものだというのもそれなりに理解ができる。その意味ではとても共感出来る物語であった。

ワンちゃんは本当にピュアだ。人間のように様々な趣味やライフスタイルがあるわけでもなく、日々淡々と過ぎていくが、そのくせ人間みたいに長生き出来ないわけで、一瞬一瞬が貴重な時間なのである。飼い主に褒められることを唯一生きがいにしていると言っても過言ではない。そんな一途でピュアなワンちゃんを少しでも幸せにしてあげたいと思ってしまうが、それもまた人間の勝手なエゴかもしれない。

リラは闘病の末亡くなってしまうのだが、読んでいて思わず昔飼っていた柴犬マックのことを思い出してしまった。僕の腕の中で最後息を引き取ったマック、そして今飼っているきなこもいつかは自分より先に亡くなってしまうリスクが高いわけで、そんなことを考えてしまうと、とても切なくなる。こういう切ない動物もの、ワンちゃんものの小説は泣けてくるので読むのが辛いなあといつも思いながらも、やっぱりついつい引き寄せられて読んでしまう。

この『一分間だけ』を原作に、台湾で実写映画化されていることを知り、小説がどのように描写されているのかがちょっと気になり、思わずDVDも購入した。まだ観ていないが、次回小説との比較について別途ブログで取り上げることにしたい。

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