まず、この魅力的な本屋のャbプデザイン自体に興味を持った上、僕の大好きな"ロボット"をテーマにした本であったこと、そしてロボット自体もかなりレトロで可愛いデザインであったことにも惹かれて、本を手に取り、衝動買いした。
本のカバー画が、「よるくま」、「ぼく おかあさんのこと…」などで知られる人気の絵本作家・酒井駒子さんが担当して、このロボットのイラストがまた可愛くて、すっかり虜になってしまったと言うのも衝動買いの一因。やはり本のカバー画や装丁は、本を売る為の重要な要素である。
『ロボット・イン・ザ・ガーデン』は、2016年ベルリン国際映画祭で「映画化したい一冊」に選ばれた、英国版「ドラえもん」小説として紹介されていたが、あらすじは下記の通り。
AI(人工知能)の開発が進み、家事や仕事に従事するアンドロイドが日々モデルチェンジする、近未来のイギリス南部の村。法廷弁護士としてバリバリ働く妻エイミーとは対照的に、仕事も家事もせず親から譲り受けた家で漫然と過ごす34歳のベン。エイミーはそんな夫に苛立ち、夫婦はもはや崩壊寸前。
ある朝、ベンは自宅の庭で壊れかけのロボットのタングを見つける。「四角い胴体に四角い頭」という、あまりにもレトロな風体のタング。けれど巷に溢れるアンドロイドにはない「何か」をタングに感じたベンは、彼を直してやるため、作り主を探そうとアメリカに向かう。そこから、中年ダメ男と時代遅れロボットの珍道中が始まった……。
作者は、イギリス人のデボラ・インストールと言う作家。よって、これは洋書ベストセラーの日本語訳である。
突然庭に現われた時代遅れのロボット、タングとの関わりによって、中年ダメ男である主人公のベンが、自分の人生やこれまでの結婚生活を振り返り、自分を取り戻し、再生されて行く成長物語。壊れかけているタングを直してあげる為、自宅のイギリスから、アメリカ/LA~ヒューストン、東京、そしてパラオをベンとタングが珍道中するロードムービーみたいな要素がとても楽しく、特にパラオではかなりドラマチックでハラハラした展開もあり、道中かなり個性的な人々との出逢いを繰り返しながら、ベンとタングの絆が深まって行く様子が見事に描かれている。ロードムービーと書いたが、まさに映画化したら絶対に面白くなるストーリー展開だ。ベルリン国際映画祭で"映画化したい一冊"に選ばれたと言うのも納得である。
タングが常に子供のようにピュアで、純粋で可愛らしく、レトロな外観ながら、他のアンドロイドには無い、秘められた高性能~ある種の人間らしさ~を持っている設定が見事なギャップを産み出しており、何とも愛おしい作品である。「とにかくタングがかわいい!」と世界中の読者を虜にしている物語である。
中盤までのドラマチックなロードムービー展開で、タングは最後に一体どうなってしまうのだろう、とかなり不安になるのだが、ベンとタングがイギリスの自宅に戻った終盤は、ベンとエイミーの再生物語が中心となり、最後は穏やかなハッピーエンドで終わるのがとても良かった。映画的に盛り上がるには、タングには何かが起こったり、タングを永遠に手放してしまうような悲しい展開にして、ドラマチックにしがちだが、そうならないのが個人的にはとても良かったと思う。
ベンが、一度別れた妻のエイミーとの新しい関係を構築し始め、明るい期待感を残して終わるが、そこにタングの存在がしっかりと組み込まれて行くであろうことが明示されるのが何とも嬉しい。旅によって、ベンにとってかけがえの無い存在になったタングが、やがてエイミーにとってもかけがえの無い存在になって行くが、二人の関係性の中でタングが果たす役割の大きさが上手く表現されている。最後は何とも幸せな"余韻"があり、その後を描く続編を期待したくなってしまった。
多くの読者がコメントしているが、僕も読み終わった後すっかり"タングロス"になってしまった。タングは子供のようでもあり、可愛いペットのような存在でもあり、まさにタングを愛おしく感じる、オススメのロボット物語、そして人間の成長物語であった。
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