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招待スピーカーに、あのアップル社スティーブ・ジョブズにヘッドハントされ、やがてスティーブ・ジョブズをクビにした元アップル社CEOのジョン・スカリーや、世界的に有名な人工知能の権威であるレイ・カーツワイルも招聘。また、国内からは元大阪府知事、大阪市長の橋下徹、更には元ジャイアンツの桑田真澄も登壇。何とも多彩な顔触れだ。
この中で、橋下徹は『今、日本に足りないもの』と題して、日本にも改革が必要で、改革を実現するには"ソフト"である立派な政策も必要だが、立派な政策を実行する為の体制が"ハード"として重要であると、ITのセミナーに上手くこじ付けた説明をしていたが、大阪から日本を変える試みが失敗に終わった裏話や今後の展望などをあの独特な歯に衣着せぬ巧みなトークで、とても面白かった。
しかし、今回一番感銘を受けたのは、桑田真澄のトーク。彼独特の間合いと、意外にも観客を引き込む、その巧みな話術には驚いた。
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桑田真澄はジャイアンツで23年、通算で173勝を上げた。常勝ジャイアンツの一時代を築いた大投手だが、その記録よりもある意味記憶に残る投手であった。自分でも言っていたが、彼は持って産まれたズバ抜けた素質は特に無かったという。背も高く無い。清原みたいに恵まれた立派な体格も無い。大谷やダルビッシュのような150kmを超えるようなストレートや、田中将大みたいにヤラシイくらいに落ちる変化球があるわけでは無い。しかし、彼はこのコンプレックスをバネに、打者の心理を読んで裏をかき、抜群のコントロールで三振を取る"頭脳派"投手としてはピカイチの才能を開花させていった。まさに、影で人知れず努力をし続けた人なのだ。
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また、トークによれば、彼は決して順風満帆で華やかな野球人生では無く、多くの挫折を経験して、その度に這い上がってきたと言う。その中でも特に大きかった二つの挫折について語っていた。一つは小学生時代。勉強が全く出来ない彼はみんなに"アホやな〜おまえ"とみんなにバカにされ、傷付いた時に自分には野球しかないと打ち込んだが、その後小学3年の時、野球部で先輩にイジメを受けて大好きだった野球部を辞めてしまったこと。中学では再び野球に打ち込み有名にもなったが、PL学園高校で清原和博に出会い、世の中には体格と野球の才能に恵まれたヤツがいるもんだと、自分の体の小ささにコンプレックスを痛感し、最初は彼のピッチングが全く通用しなくて再び挫折したこと。
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コンプレックスや挫折があったからこそ彼は人一倍考え、努力したこと、そして何よりも、彼の根底には"野球愛"が常に貫かれていたことがトークから伝わってきたのがとても印象的であった。
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守備の上手さゆえに起きてしまったジャイアンツでの怪我による長期離脱、そしてカムバック。その後年齢から来る衰えや若手の台頭により、野球人生も終盤に差し鰍ゥった時、彼は大リーグに挑戦することを決意。もう選手としての価値も旬を過ぎていたこのタイミングでのチャレンジは誰もが無防で、成功するわけが無いと思った。しかし、それは桑田真澄にとって諦められない"夢"であり、誰も彼の夢を止める権利は無いのだ。しかし、予想された通り、メジャーの壁は険しく立ちはだかった。ピッツバーグパイレーツに入団が決まると2Aから3Aと上がるが、なかなか一軍メジャーには上がれない日々が続き、更には足の怪我もあって試練は続く。
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しかし、2007年6月10日、対ヤンキース@NYヤンキースタジアムでメジャー初登板の機会を射止める。このゲームで、桑田真澄 vs 松井秀喜の対決も実現する。なんと幸運なことに、当時NYに住んでいた僕は、たまたまこのゲームをヤンキースタジアムで"生観戦"することが出来たことが、今でもかけがえの無い思い出である。桑田真澄が自分の夢を実現した歴史的な瞬間に立ち会うことが出来たのだ。その時にまだ幼い娘と撮った一枚の写真がこちら。
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トーク終盤のテーマは、"ホンモノに触れる"だった。桑田にとって、大リーグを生で経験することは、"ホンモノ"に触れると言うことであった。やはり、何事もホンモノを体験することに勝ることは無いのである。トークでは、会場から4人をステージに呼び桑田真澄が使っていたグローブ、PL学園時代のユニフォーム、ジャイアンツ時代のユニフォーム、パイレーツのユニフォームをそれぞれ観客に触らせた。まさに"ホンモノに触れる"体験を共有したのが印象的な講演であった。
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仕事で参加したITのセミナーではあったが、思わず桑田真澄のトークに引き込まれ、感銘を受けた貴重な機会となった。