僕はかなり前から、作家の川上未映子が好きだ。男性作家で言えば、村上春樹、そして女性作家の中では川上未映子、綿矢りさ、小川糸が好きだが、中でも川上未映子が一番好きである。そんな川上未映子の最新エッセイ集、『深く、しっかり息をして』が先月出版された。
雑誌『Hanako』に12年間連載されていたエッセイから厳選したエピソードを1冊の本に纏めたもの。表紙のワンちゃんのイラストや色使いもなかなか可愛くて、つい手に取りたくなる本である。
川上未映子のサイン本は既に2冊持っているが、今回もサイン本を保管用にゲットして、読み用としてもう1冊購入してしまった(笑)。
川上未映子の小説も素晴らしいものが多いが、エッセイもかなり楽しい。特に村上春樹と川上未映子はエッセイも好きで必ず買ってしまうが、この好きな2人の作家が対談した『みみずくは黄昏に飛び立つ』は最高だった。やっぱり作家自身に興味のある作家さんはエッセイでその素顔や私生活を垣間見れる気がして、いつも読むのが楽しみになってしまう。
川上未映子はとても不思議な作家さんである。僕は彼女のルックスもかなり好きだし、歯に衣着せぬタイプで、目力もあって、少しセクシーで危険な香りがするようなイメージを勝手に抱いているが、その意味ではちょっと椎名林檎にも似た香りがする点で、とても魅力的な女性である。でもエッセイを読んでみると少し彼女の印象が変わる。イケイケのようで、でも至極全うな考えを持っていて、その感性も共感出来る点が多い。
今回のエッセイは、コロナ禍も挟んだ過去12年間のエピソードを収録しているが、母として子供や家族への思いや、何気ない普段の出来事、出産、子育てなど身近な話から、コロナ禍での行動制限の中での過ごし方や、好きな映画や歌手について、そして戦争、コロナ、ジェンダーレス、結婚観など幅広いテーマを取り上げており、その視点や課題認識もかなり的を得ていると感じ、共感してしまった。
自分的に特に面白かったのは、ホイットニー・ヒューストンの話、愛犬が亡くなったしまった時のエピソード、金縛りを楽しんでいる話、“女子力”について、レオナルド・ディカプリオの夢の話、性教育としての雛祭り、高価なジュエリーを間違えて買いそうになった話などなど。
僕は男臭い作家より、どちらかと言えばフェミニンなものの方が妙に共感出来るところがあるようだ。その意味で川上未映子は女性でありながら、どこかサバサバしているところが男性的でもあって、自分にはちょうどしっくりとくる感性や価値観が心地良いのかもしれない。
川上未映子の最新エッセイを読んで、また彼女の小説なども読みたくなってしまった。