ある国立公園の湖畔にクリンソウが群生している。花の時期には多くの観光客が訪れ、マスコミにも取り上げられている。しかし、それを喜ばない人たちもいる。彼らによれば「クリンソウは人為的に持ち込まれたもので、もともとあの場所にはなかった。環境上問題だ」ということらしい。
ある県立自然公園の小さな湿原には水芭蕉が咲いていたが、これも人為的に持ち込まれたものだとして問題になった。10年ほど前には国・県・市が一体となって「生態系維持回復事業」の中で水芭蕉の除去が行われた。
侵略的外来種のように地域の自然環境に大きな影響を与えるものならいざ知らず、その土地に適合して生き延びている植物を、なぜ目の敵にしなければならないのか。
元々いなかった場所に蔓延るという意味では、その最たるものは人間だ。人間はいたるところを開発し、自然を壊してきた。その結果、多くの生物を絶滅に追いやった。さらに人間はその経済活動で地球に大きな負荷を与え、温暖化等地球規模の問題をおこしている。
その人間が、在来種を守るためという名目で、可憐な水芭蕉を引き抜いている。なんとも皮肉なものだ。