かりんとう日記

禁煙支援専門医の私的生活

タバコ屋のおばあちゃん

2006年08月24日 | がん病棟で
たばこセールス日記って知ってます?
たばこ屋さんが仕入れや売り上げの内容を記録する出納帳のようなものらしいんです。

Kさん(76)は昔ながらのたばこ屋のおばあちゃん。
売るだけでなく、自分も吸っていたので、肺がんになってしまいました。
小細胞癌という肺がんで、ただいま抗がん剤治療の真っ最中です。
点滴の本数が多いので、足の悪いKさんにとってはトイレに行くのも一苦労。
ご本人の希望で治療中の1週間だけ、尿道カテーテルを入れてトイレに行かずにすむようにしています。

たいていの患者さんはへとへとになってしまう治療なのに、Kさんはとっても頑張っています。
たばこ屋は一人で切り盛りしていたので、今は店を閉めていますが、自販機は稼動中
病床でよくタバコセールス日記を広げて、なにやら色々と記入している姿をよく見かけます。
他の人には任せられないみたいです。
入院中も週に一度は店へ出かけて行きます。

『最近のタバコの売り上げはどう?減っているんじゃない?』

「そんなことないわ、横ばいよ。店閉めてる今はお得意さんは来ないけどね」

タバコを買うついでにKさんの顔を見るのを楽しみにしてくれているお客さんたちがいるとか。
もちろんKさんは病気になってからタバコをやめています。
でも一人暮らしのKさんにとって、店は命の綱なんですね。

一人暮らしをしている女性は強い人が多いです。
がんになっても、自分の人生を見失ったりしません。
Kさんもその一人。
主治医としては、逞しく、賢く病気をつきあっているKさんのような患者さんは、安心して診ていられます。
ただ、Kさんの生きるパワーの一つになっているのがタバコセールスという点だけは、ちょっと複雑な気持ちになっているワタシ











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2 コメント

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タバコ嫌い (よこすかのよっしぃ)
2006-08-25 03:00:23
 娘は大のタバコ嫌い。去年コーラスでナポリに行き、ホテルの部屋がタバコ臭かったので、フロントと交渉して部屋を換えてもらいました。



 息子は不動産屋に就職し、毎日仕事場で燻製になって帰ってきます。文字通り、娘に"煙たがられ"て居ります。



 かく言う私も、週に一度、精神障害者作業所のお手伝いをしていますが、タバコを吸わずにいられない人が多いようです。台所の窓を開け、換気扇の下で吸ってもらっていますが・・・。



 私はここで、禁煙サポート専門ドクターなるものをはじめて知りました。また、勉強させてもらいに来たいと思います。よろしく。
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Unknown (cellopy)
2006-08-27 10:10:51
はじめまして!

コメントありがとうございます。



イタリアやフランスは、意外と喫煙に関して寛容な国なんですが、でも最近はやはり変わってきていますよ。

フランスでも飲食店の全面禁煙化が行われるようです。

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