vernishingとはニス塗りのこと。
rが抜けてvanishingとなると、消えてなくなること。
Eは2台のチェロを所有している。
そのうちの1台は、真っ黒な色をしている。
1930年にドイツで製作されたというそのガングロチェロは、決して高価な楽器ではないけれど、まあまあである。
チェロが2台あるおかげで、ドイツの家では二人で一緒にチェロを弾いて楽しむこともある。
先日、何を考えたのか、突然彼が、この黒いチェロのニスを塗り替え始めた。
黒いニスを落としているところ。
マニキュアをオフしているときにそっくりじゃん!
考えてみれば、そもそもこんな真っ黒な木はないわけで、着色されていたのである。
ニスについて、Eの言っていることがよくわからなかったので、自分でも調べてみたら、弦楽器用のニスには、オイルニスとアルコールニスの2種類がある。
ニスは透明なものだけではなく、様々な色の着色ニスもあり、楽器の色は職人のニス塗りによって作り出されているということなのである。
なぜ真っ黒に塗られてしまっていたのか?
使われている木があまり良いものではなく、木目が美しくないと判断されたのかもしれない。
あるいは、ある時期の持ち主の好みだったのかもしれない。
一昔前流行ったガングロ少女たちのことを思い出した。
黒い着色ニスを取り除いた状態がこちら。
木目が確認できる。
やすりがけもした状態とのこと。
いやいや、当然ながらテールピースまで外して、指板にニスがつかないようにカバーしたりしちゃって、あんたは弦楽器職人だったんかい!と突っ込みを入れたくなるような作業工程の様子に仰天してしまった。
板の接着が悪いところを見つけたということで、修復中。
YouTubeの弦楽器職人さんのサイトを参考にして勉強し、かつて自分のヴァイオリンの修理をしたことがあるという。(彼もかつて少しヴァイオリンを習っている時期があった)
「もちろん、高価な楽器には、怖くて手が出せないよ」
ニスは木を保護して強度を高め、楽器の響きをよくする効果があるという。
実は、冬休み前にMRI検査でペディキュアを落とさねばならず、落ち込んでいたのであるけれど、それならばと、Eが塗りなおしてくれた。
それが、なかなかに満足のいく素晴らしい出来だった.
欧州人あるある話のひとつであるが、彼は自分のアパートのリノベーションを自ら行っている。
日本人からすると、日曜大工の域をかなり超えた仕事ぶりなのである。
そなこともあって、今回のチェロニス塗り替えについても、まあ、彼なら良い仕事をするのではないかという気がしている。
次回、塗りなおしをされたこのチェロが、どんな響きに変化しているのか、次回ドイツで弾くのが楽しみである。
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