満ちるは桜。

好きなものを書いてる普通の人日記。

クリスマスケーキの美味しい期限

2021年12月27日 01時48分00秒 | その他
クリスマスイブに彼と会わないと決めたのは理由があった。
2人とも繁忙期だったから、
早めに帰るのは理由が必要だったのだ。

何たって12月は忙しい!

先週は今月中に終わらせたい事が山積みで、
夜中にようやく自分の時間があれば御の字。
定時に帰れた日なんて、今月なかったと思う。
クリスマスが特別でワクワクするとか素直に言い出せなくなったものの、
やっぱり、その日に会いたい気持ちは私にだってある。
でも、だ。忙しい日に早く帰るという目標が出来ると気忙しくなり焦ってしまう。
2人とも全く器用じゃない。
焦ったら逆にミスってしまいそうだ。
そうなれば帰るのは遅くなり、目的と逆行する。
色々話し合った結果、「土曜のクリスマスが本物だ。」という答えを2人で決めて、
土日にのんびりする事に決めた。

…のが先週だっただろうか?

蓋を開けてびっくり、
忙しい中でも早め早めを目標に仕事を仕上げてきた結果、
イブに定時に帰れるではないか!

今更連絡する???
いや、でも彼だって忙しいとか言ってたし、
飲み会とか金曜日だしあるのかな?
クリスマスイブだし流石にない?
みんなどう過ごしてんのかな?
そもそも、明日会うんだし…どうしよう
考えがまとまらなくなりそうだったが、
連絡しても、返事がなければさっさと帰宅すれば良いのだ。
そう思ってメッセージを送った。

「お疲れ様。何と定時に終わったよ!
お仕事遅くなりそう?頑張ってね。」

よし、なんとなく疑問文も入れたけど、
最後にはしなかったから返事なくても自分的にセーフ。
そんな事を考えつつ送った。

「お疲れ様」

?????

即返事が来る。

連絡可能なのかと思い、電話してみると即繋がった。

「あれ?電話できる?」

「うん」

「お仕事終わったの?」

「うん、終わった」

「そうなの?私も終わったんだよ。」

「あ、それでさ、ケーキ貰ったんだよね」

「ケーキ?」

「うん、なんか会社がケーキくれたんだよね。」

「へー、どんな?」

「いや、本当普通〜の。クリスマスケーキ」

「ホールの?」

「ホール」

「え〜すごい」

「うん、本当クリスマス仕様のヤツ」

「そうなんだぁ。じゃあ明日一緒に食べよう…」

「明日…」

「ケーキいつまで?」

「今日までだよ」

「だよねぇ」

「今日の方が美味しいと思うよ」

「だよね〜」

「もう帰れるんでしょ?…会おうよ」

「うん、会う」

「それじゃあさ…」

彼が夕飯はどうする?というから、
私はまた嬉しくなって、夕飯をどうしようかな?と思った。

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にちよーび

2021年05月16日 20時08分00秒 | その他
今日も今日とて

良い子って怠いね

何でこんなバカ真面目に過ごしてるんだ
 
いや、真面目じゃなかったから

今しんどいのか

会いたくても会えないのに

好きな人なんて虚しい響きだ

相手は知らねーわ

何もないんだから最低限で良いじゃん

もう無理したくないよ

頑張りたくない

頑張るって自分に嘘つくことだよ今の私からすれば

意味わかんない

ストレスストレスストレス

自分は要らない人間だってわかってた

ますます不要な人間だってわかってきた

捨て駒だ捨て駒

消える気はないけど

絶対いてやる

誰か抱きしめて欲しい

誰かなんて嘘

好きな人だ好きな人

妄想の好きな相手だ

バッカみたい

金づるなんだ金づる

金づるなのに金はなくて本当ごめん

ごめんしかないな

望むような好きじゃなくてごめん

当分ギブアップだ

しんどいな

割り切れないから今日も良い子だ
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明日また

2021年01月29日 01時36分00秒 | その他

"明日世界が終わるんだって"

明日世界が終わるんだって
明日世界が終わるんだって
明日世界が終わるのならば

汚いまんまの自分の部屋も

しばるものすらほうりだし

君に会おうと思うのです


明日世界が変わるんだって
明日世界が変わるんだって
明日世界が変わるのならば

変わらぬものなどないからと

諦めていた気持ちすら

変えてみようと思うのです

明日明日が来るんだって
明日明日が来るんだって
明日明日が来るのならば

明日の君に会えるよう

今日の自分を少しだけ

大事にしようと思うのです

明日会えたら
明日会えたら

明日会えたらその時は…
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9月のセピア

2020年09月29日 00時53分00秒 | その他
過ぎゆく思い出たちが
やけに眩しく見える
あの日の風の中に君がいた

9月に降った雨は
流れる涙の跡
やむ様子も見せず降っている

わかってた わかってた
こんな日が来ることなんて

虹の向こう その果てに
今君がいる
あの時のまま
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好き

2020年08月14日 21時26分00秒 | その他

好き

君の一言で

嬉しくなっちゃうから

そばにいたくなる


コンプレックスたちが

あるのは変わらないけど

前より許せるのは


うん、君のおかげ!


当たり前を変えてくれた

君と幸せになりたい

切なさくれたって良いよ


明日も会いたいな


君が耳元で

私の名前言うから

帰りたくなくなる


声音が変わったのは

眼差しが優しくなったのは

息づかいを感じたのは


ねぇいつからかなぁ


当たり前になったことが

こんなにも幸せくれる

切なさくれたって良いよ


明日も会いたいな


手を繋いで散歩して

日向ぼっこしようか

それとも


当たり前になったことが

こんなにも幸せくれる

切なさくれたって良いよ


今日もありがとう

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ファジー

2019年02月24日 01時35分04秒 | その他
目覚めたら変わってた
何も変わらないと思ってたのに
カーテン越しのにぶい朝 期待だけ眩しい

優しい声音に 溶けてくグレー
月の空に願ってた 同じって何かな
つま先だちした想い 揺れてばかり

I’m in love with you
好きだって何度伝えたかな
返ってくる答えにいつも 心は あぁ…
白い雪が重い 黄昏

変わりゆく街並みみたいに
変われてしまえたら良いのに
消えてゆく星みたいに綺麗なら、まだ

I’m in love with you
好きだって何度聞いたかな
いつになれば慣れるのだろう 心は あぁ…
黒い髪が揺れる かわたれ

あの日飲んだファジーネーブル
隣にいたよね
ふいにあたる膝から 消えたの 距離が…

愛してる
好きだって何度伝えたかな
曖昧な笑顔に もう笑えない 心は あぁ…

I wanna be loved by you
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結末調整

2017年12月09日 22時35分09秒 | その他
クリスマス時期か…
そう思って帰路を急いだ。
その間、昼の出来事をエフ氏は思い出していた。

「この書類で確認したいことがあるんです」
「そうなの?」
「この書類、扶養されてる方が書かれてないですよね?」
そう言って事務の人が書類を突っ返してきた。
返されたのは年末調整の書類だった。
扶養している者などを書く書類だ。
年末調整はサラリーマンにとって大事なものだ。
月々の給与から差し引かれていた源泉所得税の精算を行うからだ。
月々多めに引かれている事が多いから、年末調整で精算すると大概還付、お金が戻ってくることになる。
「え?」
「だから、あの、奥様を去年扶養に入れられてたので…今年も配偶者控除に入れられるのかと思って一応確認なんです」
「そりゃ、去年と変わらないよ。」
「じゃあ、書いてください」
「えー、テキトーにやっておいてよ」
「ダメです。娘さんがいつもよりバイトで稼いでて扶養入れません、書類作り直し提出し直しってなったの忘れたんですか?」
扶養者が多ければ多いほど、税金は少なくなる。それなのに娘がバイトで稼ぎまくったものだから、扶養に入れないのに扶養にいれてるという連絡が会社に入った上、税金を再計算する羽目になった。
「そんなの、いちいち娘のバイト代なんて聞かないよ」
「…はぁ。じゃあ言いますけど、
プライベートな事は聞き辛いんです。
仮にですよ?年末に離婚とかされていたら扶養に入らないですから。
でも、こちらとしても会計事務所の方に『この方去年と違いますけど…』って聞かれたら、聞かないわけにいかないんです。」
「わかったよ、すいません」
「エフさんだから、一応確認してるんですよ。損しますから。聞かなきゃ扶養無しで年末調整しちゃうんですからね」
「そっか、ありがとう。ごめんなさい!」
「いえ、大丈夫です。あ、それ、明日までに再提出してくださいね」
「わかったよ」

配偶者控除かぁ、俺はずっと配偶者控除できるんだろうか?
去年は娘だって扶養に入っていた。
娘が扶養から外れるくらいバイトしてたのを知ったのは一昨年だろうか?
そんな娘だって独立して家を出た。
今年はもう妻と二人で年末を迎える。
でも、もしかすると来年は妻だって働きに出て、扶養から外れるくらい稼ぐかもしれない。
もしかすると、違う理由で外れるかもしれないし…

そんな事を考えていると目の前に人がいた。
「エフさん、ですね?」
一瞬聞き取れず無視して歩いた。
「エフさん、前のショートメール見ていただけましたか?」
確かにショートメールで最近おかしい迷惑メールは来ていた気がするが、そんなものはいつだったかも覚えていない、よくある事だ。
こういうのは最近の時代柄、無視に限る。
下手に相手して絡まれて殺されたらたまらない。
「エフさん、無視はないんじゃないですか」
「エフさん、僕、死神じゃないんですよ。
あなたの元に来た僕は、天国からの派遣者なんですよ。」
こいつは頭がおかしいんだ。そう思って自然と早歩きになる。
「ちょっと、警戒し過ぎですよ!」
「あの申し訳ないが、君に見覚えが全くないんだ。人違いだと思うんだよ、すまないね」
ずっと隣を歩いてくる男に怖くなり、思わず声が出る。
「まさか!携帯番号080-xxxx-……、家族構成、奥様のエムさん、娘さんが3人、息子さんが1人、犬を以前一頭飼っていて…」
「街中で何言ってるんだ君は!」
思わず声を荒げた。
「信じていただけましたか?」
「いや、たしかにそれは人違いではなさそうだ」
「そうでしょう」
そう言って男は笑顔を見せた。そして、
「でも、こんな事言ったからって『間違いない』とか口走ったら普通に悪人にカモられますから。僕の善人具合に感謝してくださいね」
と、偉そうに注意した。
そして、笑顔で
「いや、まぁ信じてもらえれば良いんです。」
といった。
「で、何の用なんだい」
「あ、これは意思の確認で来ただけなんで、
僕が何かを今するとかではないんですよね」
なんなんだ、と思うと彼は言った。
「申し遅れました、私天国から来ました株式会社ミカエルのエルと申します。
この度はお手間を取らせて申し訳ないのですが、
サービスのご確認で参りました。」
「あ、その顔は全く信用されてませんね(笑)」
「いいんです、いいんです」
「僕としても、あまり事情がわかったままに決められても面白くないんで…」
そう男が矢継ぎ早に言葉を続けるので、
「で、用件はなんなんだい?」
と、エフ氏は男に尋ねた。
「あのですね、エフ様も60に差し掛かって参りましたので、
人生の結末を迎えるにあたり、どういったご選択をされるか決めていただきたいと思いまして。」
「はぁ」
「色々、あるんです。
少なくとも、この決定はいつから開始されるものかは決まりで言えないんですけども、
少なくとも僕がエフ様にご提案させていただいている、という事で、
今後どこに行く予定なのかはご想像していただきたいと思います」
「天国にでも行けるっていうのか?」
「いや、まぁ、ふふふ、こちらからは申し上げられないんですよね」
「まぁいいや、で?」
真面目に聞くだけ馬鹿らしい。
「で、それでですね、今後、頑張りの還付をいつにされるか決めていただきたいんです」
「え、この場で?」
そもそも何のことか全くわからないのに。
「いえ、年末に再度聞きに来ますから」
「また会わなきゃならないのか」
「ええ。で、ですね、今エフ様は奥様がいらっしゃるので、配偶者控除がございます。
この事で悲しみに属される事柄が多少控除されますね」
「なんなんだそれ」
「いえ、なんとなく聞いていただければ、こちらで調整しますから」
「関わる方がいればいるほど、控除が増えます。
つまり、大概の場合は『嬉しい』『幸せだ』と思う割合が増えるんです。
人生においてエフ様がされてきたことで、
エフ様が還元してもらえる幸せというのは決まっておりまして」
「こちら側で還付される幸せは管理しておりますので、
もちろん関わる事で負担が増える方というのもいることにはいますが、大概においてそんな事はないので」
「で?」
「いえ、それで、この度エフ様も人生の結末を調整する時期に入られたのです」
「なんだそれ」
「ですので、わかりやすく単純にシンプルな話に削ぎ落として説明させていただきますと、
苦労せねばならないこと、人生において、エフ様にしていただきたいという事は決まっております。
ただ、人生においてエフ様も多くの事をされてきてますから、
その度に多目に、端的に言えば頑張り過ぎていることもあるわけです。」
「はぁ」
「それで、そういうことが多い方は私共がこうして参りまして、その分をどうやって還付していくか確認させていただいているんです」
「俺の人生は普通だよ」
「多くの方はそうおっしゃいます。だからこその調整なんですよ」
「そうかなぁ」
「幸不幸は人々の考え方ですから、
一概になんとも言えない事柄ではあるんですけどね。
それでも、この度私共も公平なサービスを、ということで点数化を進めて参りまして」
「はぁ」
「元々、人によって受けられる幸せと呼ばれる事柄や点数というのはあるんです。
でも、それを超えて頑張ってきた方…まぁほとんどの方ですよ。
そういう方にこうしてお話を聞いているんです」
「何を?」
「人生の結末を迎えるにあたり、
この還付される幸せをどういう風に還付するかです」
「そうなんだ」
「わかりやすく言うと、日本人の方で特にサラリーマンの方にはこういう説明させていただいているんですけど、年末調整を人生で行うようなものと考えていただければ」
「あぁ」
わかるようでわからないような…
「そこでですね、わからないように人生の流れの中で少しずつ還付されるか、退職金のように一度に還付するかご選択をお願いいたします。」
「一度に還付って、どんなことがあるんだろう」
「お答えしたいのですが、人によって感覚の違いがございますから、具体的には何ともお答えしがたい質問なんです」
「そんなもんなのか」
「ええ。こちらとしては奥様を始めとする他の方の人生の兼ね合いもございますから、結末をすぐにお伝えることはできかねますし」
「とりあえず、話は聞いたから、少し考えさせてくれないか」
「ええ、お気持ちはわかりますので。来週にでもまたお会いしましょう」
そういうと男は消えていた。

エフ氏はなんとも言えない気持ちのまま自宅に着き、
「ただいま」
そう言って玄関に入った。
「あら、珍しいのね」
妻のエムが驚いた顔で玄関に来た。
「何が?」
「ただいまなんて、ここ何年も言ってないわよ。お帰りなさい」
ただいまって素直に言ったんだから、そっちだって素直におかえりだけ言えば良いのに!
そう思いながら手洗いうがい、そして着替えを済ませ居間に行く。
「なぁ、今日変な男に絡まれたんだよ」
「どんな?」
「天国から派遣されたとか言うんだ。
俺、変なヤツだから無視してたんだけど、ずっと話しかけてくるんだよ」
「やだぁ。それでなんかカツアゲでもされたの?大丈夫?」
「いや、幸せを還付するだとか何だとか、
何だか怖くてさ。なんかよくわからないし、
家族にも影響が及ぶとかいうし、わからないから結論は言わないで帰って来たんだよ」
「そうなの。不思議な話もあるのね。
あんまり気にしないで、気分変えて夕飯にしましょ」
「そうするよ」
「今日は出掛けたから、早いけどクリスマスっぽいケーキ買って来ちゃったのよ」
「へぇ」
「だから、夕飯食べたらそれもあるって考えて夕飯食べてね」
「はいはい」

そう言って夕飯を二人で食べ、その日は眠りについた。

「…エルさん?」
夜中、エフ氏の妻が電話をしている。
「はい、何でしょうか?」
「私ね、還付の話だけど…夫と違う還付の仕方にして欲しいの」
「可能ですが、なぜでしょうか?ぜひアンケートとしてこたえていただけないでしょうか」
男は興味津々の様子で尋ねた。
「うーん、なんか、答えが難しいんだけどね。」
「はい」
「なんか、その方が二人の幸せが交互に還付されるような、何がどう作用したかわからなくなると思うの」
「そういう可能性もございますね」
「そうね、あなたは素直に答えられないと思うけど」
「ええ、ご理解ありがとうございます」
「あなたは配偶者控除があるって言ってたけど、これは作為的な人的控除みたいなものよ」
「そうですか」
「今日私に素直に報告してくる姿を見てたら、
何だか家族みんなもそうだけど、私たち二人でどう幸せになれるか考えちゃったのよ」
「そうなんですね」
「だから、そう、二人だから幸せが倍以上になって、悲しみは減って…って、
時期がズレれば色々な作用があって楽しいかなぁって」
「かしこまりました。お答えありがとうございました。で、そういうお答えでしたら、どう選択されたか、ご主人にはお伝えしますか?」
「いや、私は共に歩んできたと思ったからこそエルさんに『それなら絶対エフも還付されるはずよ。』って質問したのよ。
なのに、あの人私のこと聞かなかったみたいなんだもの。
そこはちょっと、なんか腹立つの。
だから、私に話がきた事は言うだろうけど、選択した内容は言わないでおいて欲しいわ」
「かしこまりました、それでは、これで確認は終了とさせていただきます」
「はい、どうぞよろしくお願い致します」
「ええ、お幸せに!」
そう言って電話は終わった。

(終)
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人生登記簿

2017年12月08日 01時27分41秒 | その他
人生には限りがある。
それはまぎれもない事実であり、それ故に人間は不老不死の夢を抱いてきた。
不老不死は創作話の中の夢物語だが、それでもいかに長生きするか?それとも豊かな人生というものを謳歌するか?人々は常日頃から意識せずとも心の片隅におき考えている。
30XX年、エス氏もそんな事を思案していた。
「さて、もうそろそろ書類が集まる。
これをどうすれば受理してもらえるのだろうか…」
エス氏は人生初の試みの直前だった。
人生に関する登記である。
エス氏が生きる時代に、日本人にとって生年月日はさほど重要な意味を持たなくなった。
なぜか?
100年前に施行された人生登記簿法が大きな理由だった。
これにより、日本人は何歳の自分でいるかを自分で選択できるようになった。
戸籍と同時に人は人生に関して登記をしなくてはならなくなったが、これにより同時に安楽死の選択も可能となった。
人生登記簿の閉鎖を4ヶ月前に宣言、すなわち皆にいつ人生の幕を閉じるか宣言すれば、手続きを踏んで死ぬことが可能になったのである。
「あなた、何してるの?」
エス氏の奥さんが話しかけた。
「ああ、以前から話していた登記のことだよ。」
「…気持ちは変わらないの?」
「ああ」
「私も病気を治す為にこの制度を使ったことがあるけど…」
「そうだ、だから僕と君は出会えたんだ」
「そうね」
エス氏は結婚していた。妻は生年月日を考えたら大分年上であるはずだが、年齢はエス氏の年下だった。
人生の登記は開始と終了があるが、その中に一つイレギュラーなものがあった。
それが休業登記である。登記が済むと身体は冷凍保存される。そして、また時期が来れば休業登記を取消し、人生の続きを始めるのだ。
妻は以前病の為に人生の休業登記をし、凍結作業をした。病の治療法が開発された時、親戚が手続きを踏んで彼女は解凍され、人生が再開されたのだ。
その為、生年月日と経過年月が一致しなくなった。
「それにしても、こんなことがあるんだな」
「こんなことあるのかしら…」
「人口調整の依頼が来るなんて思わなかった。3年人生を休業して待てば働かずして三千万の依頼お礼金が手に入るなら良い話だよ」
「3年て、長いわ」
「待たせてすまないが、その間よろしく頼むよ。」
「ええ」
こうしてエス氏は人生初の登記を行い、人生の休業が行われた。

「お昼のニュースです。
休業登記をすれば人口調整お礼金が貰えると騙し、
登記簿を不正に改ざんして安楽死にみせかけ、凍結させたまま相手を死亡させる事件が発生しました。
犯人は意味不明な言動を繰り返しており、
他にも登記手続きに慣れた協力者がいるとみられています…」


(終)
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妄想話

2017年08月31日 20時45分27秒 | その他
歌詞を書いてみたいなーって思う。
いつも書きがちな自分の感じじゃないやつ。




Pie

ふれてるのに わからない
わかってる もう

ストロベリー チェリー ピーチ
love you,sweetie ...

指がなぞる気持ち
アメスピの香り
帰れって合図

いつも いえないあたし

どれくらいすき?

love you
love you
love you...

おやすみっていいたい

スカートのすそみたいに
ふわり ゆらゆら

チョコレート ヨーグルト クリーム
love you,sweetie...

指がなぞる気持ち
キャンドルの香り
薬指のリング

いつも いえないあたし

かえりたくない!

love you
love you
love you...

おはようっていいたい

帰りたい場所はあるのに
君のいるとこに帰りたいの あたし

love you
love you
love you...

I want the fruit of our love.
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学生時代に書いたもの06

2016年11月04日 01時13分46秒 | その他
(野暮メモ)
高校の頃書いた作品。
神様が出てきますが、特定の宗教をあらわすものではありません。
何となく心にある神様と天使の存在みたいなものと、
空を飛びたい!みたいな、空が「飛びたい存在」である事への反発みたいなものがあったから書いた記憶。
何より最後のシーンへ無理矢理にでも繋いで書きたかった。
きゅうたという名前は単に変わった名前にしたかったのと、
多分南Q太さんの漫画好きだったから。
そして、伊織は桂正和さんのI"sが好きだったんでしょうね!
最後のシーンを書きたかったキッカケはレイアースのアルシオーネを見たから。
そんな記憶がある。
ちなみに、吃驚は「びっくり」と読んで欲しいです。(ルビふれるのかな?)

(メモ終わり)


神様は、もう私を見守らない。



触れる世界

そう、私がその事を内心で考えること自体は罪ではないのです。寧ろ自然な行為のように思われます。ですが、その事は口にした途端、罪となって私を責めてきそうだと私は思いました。
 実際は、私の考えた事は罪ではありませんでした。早く言ってしまえば良かったとさえ思いました。なぜなら彼女はそれを聞いても嫌がらなかったのですから。寧ろ私の考えを微笑みながら聞いてくれました。
 ここまでは、私のしたことは罪ではなかったと私は思います。今は、そう思えます。失礼だったかも、しれませんがね。ですが、私が次にしたことは、私にとって悲しく、後悔という言葉を思い出さずにはおれない結果となってしまいました。ですから、私のした行為は、罪になり得るのです。
 
―――――・・・私は、彼女から羽を奪いました。
                             葉月薫

一、

「あら?あの子?あぁ、よく見たわよ。あの子可愛いものねぇ。きゅうたちゃんでしょ?―――・・・羽?ああ、いつも背中につけていたわね。本物かですって?あらっアハハ。偽物よ。きゅうたちゃんが言ってたもの。『これは取り外し可能なんだ』って。なぁに?何でそんなこと聞くの?私テレビに出ちゃうのかしら、アハハハハッ。」
                       通りすがりのおば様より

「?あの子?きゅうたって言うんだ。ふーん。天使のコスプレしてる人。あの人にそっくりだよね。葉月さんの奥さんにさ。あれっ?やっぱこーいうことって言っちゃ駄目だった?でも似てるじゃん。顔はさ。」
                       通りすがりのお子様より

二、

天気雨が降った日。あの人(妻)は死にました。空には太陽が出ているはずなのに、頬を伝う水は、私の泪だけではありませんでした。あの人は、この空の様に穏やかに死ねたのでしょうか?私は、この空に降る雨は、私の泪であって、あの人が苦しんだことを表していないことを祈りました。死ぬ時くらい、神が安らぎを彼女に与えてくれると、私は信じていたのです。あの人の葬儀が終わっても、私の泪は少なくなってはいたものの、止まってはくれませんでした。あの人は私の最愛の人でした。死ぬには若過ぎます。強く、純粋で、そして何より温かかった人。私の心に最初に灯を燈したのは、間違いなくあの人でした。私の人生は、本当に平凡なものですけれど、そんな表現をしたくなります。
 それくらい、彼女の存在は私にとって大きいものでした。大きくて、思い出にすることが出来ないくらいに。


でも、それでも私はきゅうたに出会ったし、思い出の量は際限なく増えていく。 


三、

 彼女に出会ったのは、あの人が死んだ事を認めようとした日。泪の乾ききらない、葬儀場からの帰り道ででした。
 ○月☓日(△曜日)晴れ
今日は伊織の葬儀の日だった。一通り葬儀を済ませ、家に帰った。帰り道の途中、公園に立ち寄った。ベンチに座って人の流れを見ていた。もうこの人の流れの中に、伊織が来ることはない。そう思うと私は淋しかった。
そんな事を考えていると、不図天使の羽の様なものをつけた彼女に会った。
                           ―――葉月薫の日記より 

「伊織ッ?!」
思わず出てしまった声を、彼女は聞いてしまったみたいだった。
「あら、残念!私、伊織って名前じゃないんだな!」
彼女はやはり妻そっくりの可愛らしい声で、元気よくそう言った。
「・・・へ?」
「私!私きゅうたって言うの!」
「・・・はぁ。」
「あなたのお名前は?」
「葉月ですけど」
「葉月?下のお名前?」
「あ・・・下の名前は薫ですけど・・・。」
「そうなの!よろしくねッ!薫!」
羽をつけた彼女は、何かを思う暇も、何かを聞き返す暇も与えてくれなかった。
「あ、私の名字は神無月だよ!」
「そうなんですか。・・・。」
「・・・何か気になることでもあって?」
ようやく与えてくれた機会を私は逃さなかった。
「その羽は・・・?」
「これ?欲しい?なら、あなたに差し上げるわ!」
「・・・え?!」
そういったと同時に、彼女は今まで確かに背中から生えているようにしか見えなかった羽を取り外して私に手渡した。


 彼女ですか?とにかく不思議っていう形容詞の似合う女の子でしたよ。嫌な意味じゃなくてね。それに、私に手渡してくれた羽あるじゃないですか。会うたびにつけてるんですよ。だから最初、私は彼女は天使の・・・言っていいのかな?天使のコスプレでも好きなのかなって思ったんですよ(笑)。

                  四、

いつの間にか普通に話すようになった娘。それがきゅうたでした。いつも、足が向いてしまう公園に、いつもどおり羽をつけた彼女がそこにいたのです。最初のころは、本当にひどいもので、私は彼女を通して伊織を見ていました。
 きゅうたはそれくらい、妻にそっくりだったんです。伊織は、まだ幼さを残した少女のような女でしたから。

 私が伊織の死を認めようかと思おうとした日。そんな日にあったからきゅうたを伊織ではないかと思いたくなる。それを弱さと呼ぶのか、仕方のないことだというのか、私は知らない。
 ○月□日(×曜日)曇り
 今日はまたきゅうたに会った。会話をしたと思う。まぁ、だからきゅうたの奇妙な話を聞くことになったんだけど。それにしても毎日つけているこの日記に、きゅうたと会ったこと位しかもう書くことがない。やっぱり伊織がいなくなったというのが大きいのか?
                         ――――葉月薫の日記より
 きゅうたに初めて会った次の日あたりから、三十分仕事に行くのを早くしなければならなくなった。始まる時間が早くなったのだった。それに伴い終わるのも早くなったため、妻としていた夜の散歩代わりに、仕事帰り歩くことにした。
 帰り道。曇っているために少し薄暗い。帰り道の途中に公園があり、公園を通ったほうが早いので公園を通って家に帰ることにした。
 そんな時だった。お約束であるというべきなのか。きゅうたと会ったのだった。夕方、雲が空を支配していたとき、天候のせいで色の暗い木の下にきゅうたは居た。
 「あっ!薫さんですよね?こんばんわですー!」
『こんばんわです』って・・。と思いながらも、挨拶をしないわけにもいかない。別にきゅうたを無視したいわけじゃないから。
「こんばんは。えっと・・なんて呼べばいいですか?」
「好きに呼んでいいですよ。あー・・でもこれって一番困っちゃうよね!えと、私のことはきゅうたって呼び捨てにして!私も薫って呼び捨てしますから!」
「じゃ、こんばんは、きゅうた。」
「薫、こんばんはです♪」
 私がその日目に付いたもの。それはやっぱりきゅうたの背にある羽だった。どうしてもそれに目が行ってしまう。
 きゅうたはそれにきづいたらしく、少し微笑みながら言う。
「薫、私の羽がほんとに気になるんだね。ずっと見てるよね。私、そう見られるたびに羽はずして薫にあげたくなっちゃう。」
あげたくなっちゃうといったのと、はずしたのと、どちらが早かっただろうか。こうしてきゅうたにもらった羽が家にもう三つはある。そして羽を渡した後、きゅうたは嬉しそうな顔をして背を伸ばす。羽がなくなってすっきりしたというような態度で。
 きゅうたが私に羽をあげるのは、もちろん私が珍しそうに見ているからだけではない。それはきゅうたを見ればわかる。演技が下手だから。
「くれる位なら、どうしてきゅうたはいつも羽をつけているんですか?」
「神様がね、つけていないと許してくださらないの。だから、一応つけているだけ。」
「神様・・・?」
「そう!神様!薫ねー、神様にそっくりなんだよ。だから私初めて薫見たとき吃驚しちゃった。」
  私も、初めてきゅうたを見たとき伊織だと思ったよ、と言いたい衝動に駆られた。だけれども私ははっきりとは言わずにこう言った。
「きゅうたも、私の知っている人によく似ていますよ。」
「大事な人?」
「そうです。大事な人ですよ。私の奥さんです。」
「じゃ、可愛いね!その奥さん。」
「あはは。・・・・そうですね。可愛いです。」
 どうしても、その‘可愛い奥さん’はもう死んでしまって居ないことは言えなかった。
 私は自分が気になったことに話題を移した。
「・・・きゅうたは今神様がいるといいましたが、その方はあなたの大事な人のあだ名ですか?」
「違うよ!あー!やだ!薫、今私が変なこと言ってるって思ってるでしょ?」
はいそうですよ、と言えるわけがない。私は黙っているしかなかった。
 黙りこんでいると、私にとって信じがたい光景が目に入った。
きゅうたの羽が、また生えている。
「私、天使なの!だから、神様もいるの!」
「天使ですといわれて、信じる方がいると思いますか?・・・すいません。これってずるい言い方ですね。信じられないってちゃんと言えばいいですね。」
 そう言うと、きゅうたは悲しそうな顔をしたあと、真剣な眼差しでこう言った。
「信じてくれなくても、天使です、しか言いようがない場合、どうすればいいの・・?」
 この問いに、きちんと答えたことは、今も私の中で数少ないいいことであったと思える。


「天使です、って言えばいいんじゃないでしょうか。」


 なんで、こう答えたかですか?きゅうたが、真剣だったからです。ごまかしもせず、私は自分をどう説明すればよいのか、それ以外に方法がわからない。そんな感じだったんです。だから、その前に自分で言った言葉をふっとばしてあんな答え方をしたんだと思います(笑)。多分きゅうたにとって、私の質問は人間に対して「人間であるって信じられないです。だからちゃんとわかるように自分を説明してください。」と言った位困ってしまう言葉だったんじゃないかな。私がそんな事言われたら、困っちゃいますから。
五、

 その日から、彼女は単なる妻に似た女の子から、きゅうたという人にかわりました。一人の人間として、意識し始めたのです。思い出に出来ない伊織をそのままに、私は彼女に対しての興味を抱き始めたのでしょう。妻とは違う、彼女に。

 ただし私がそれに気づいたときっていうのは、大分遅かったですね。妻とは違うんだっていうことに気づいたのが。私はそのときまで、彼女を通して伊織しか見ていなかったと思います。多分、これを言ったら悪いかもしれませんが、きゅうたが天使じゃなかったら、私は彼女を伊織としてしか、見れていなかったと思います。まぁ、もしもの話はないのが常ですし、それに・・。もしもの話は私には要らないんですよね(笑)。彼女たち二人に会えたことが、私の幸せですから。

 きゅうたに会ってから、すでに三ヶ月のときがたっていた。毎日待ち伏せでもしたかのように帰り道の公園にいた彼女に、私はいつも話し相手になってもらっていた。
 「あ、薫やっほー!」
「こんばんは。」
 これが、いつもの私たちの挨拶だった。公園にいたきゅうたが、仕事帰りの私を明るく迎え入れる。
「いつも不思議だったんですが、きゅうたは私と話した後どうしているんですか?」
「んー・・。信じてくれるかどうかわかんないけど、空に帰る。」
「・・・・。空に帰る? 」
 返事を何もしないのもいやだし、とりあえず私はきゅうたの言ったことを言ってみた。
「そう!空に帰るの。やなんだぁ。」
「空に帰る・・ですか?どういうことかよくわかりませんが、何故、きゅうたは嫌いだと感じるんですか?」
 そう言うと、きゅうたはいつもつけている羽を広げ、こういった。
「私にもね、家があるし。空のどっかに。だからね、この羽を使って空までいくの。そしたらいっつも、神様が私を待っていてくれてね、私をお家に帰してくださるの。」
 きゅうたのものの言い方から、私はきゅうたが『神様』に対して好意を抱いていることを感じ取った。
「言い方からすると、きゅうたは神様が空で待っていることは嫌じゃなさそうですが、何が嫌なんですか?」
 私は微笑んでこういった。きゅうたは、私がそういうと空を見上げて嬉しそうな顔をした。
「薫って、いつもこの空を見てるんだよね。」
「ええ、そうですよ。」
 夕暮れ時、燃えるような赤が雲と合わさって空が美しかった。聞こえるのは、公園のせいもあるのか幸せそうな音ばかりで、私には不似合いな気がした。
「私ね、天使であることがね、誇りなの。」
「そうなんですか。」
「うん。でもね、私、空を飛ぶのは、好きじゃないの。」
「なぜですか。」
「私は、この公園とかね、薫がいるところのが好きなの。」
「・・・そうなんですか。」
 私がそういうと、きゅうたははっきりとこういった。



    「私は、見下ろすための空は要らない。見上げるための空がほしい。」
 



 きゅうたね、これほんとにはっきり言ったんですよ(笑)。だから、よくわかりました。きゅうたがこの、私たちがいる場所にわざわざ来た理由が。空が、本当に綺麗な日だったんで、余計にきゅうたの気持ちがわかりそうな気がしましたね。いつも、私が望まなくても気がつけばそこにある。それが空だったんですけど、きゅうたに会ってからよくわざと空を見上げてみたりしました。・・・もちろん、今も見ますよ。

六、

 きゅうたはいつもどおりでした。会うたびに、会話をしました。神様が、よく会話に出てきたのを覚えています。きゅうたにとっての神様は、絶対的存在だったに違いありません。

○月△日(△曜日) 晴れ
 今日は、きゅうたと話していてわかったことがあった。神様って人間くさかったんだなぁ(笑)。でも、根本的なところは違わないような気がする。ま、神に対するきゅうたの気持ちは、私の神に対する気持ちとは根本的に違うと思うけど。神に対するきゅうたの気持ちは、私の伊織に対する気持ちに似ていると思うからなぁ。
―――――――葉月薫の日記より

 きゅうたは、私と時々食事をした。時間的に大丈夫なのかと思ったが、神様は気長らしい。きゅうたによると
「別に、怒んないよ。正体ばれちゃってるせいもあると思うけど。」
らしい。
「そうなんですか?待っているのも、疲れるのではないでしょうか。というか、神様って誰かを待ったりするものなんですか・・?」
「んー・・。待つよ。神様が待ちたいなぁって思った方だったら。だって、おかしいと思わないの?薫とか、人間を作ったのが神様だと仮定したときにさぁ、神様に人間に似たところがひとつも無いなんて。たいてい作ったものは、作った人にどこか似てるもんじゃない?だから、薫が誰かを待つことがあるんなら、神様だって似たようなこと、すると思わない?」
 そう言いながらきゅうたは私の作った味噌汁をすする。
「そうですよね。」
「あと、薫が言う神様と、私の言う神様は、違うと思うなぁ。」
「そうですか?」
「うん。違うと思う!神様はねっ、優しい方なのよ!そして、私の意志を尊重してくださるの。だからね、今私ここにいるんだよ♪」
 そう、きゅうたは神様って違うでしょ?と言いたげな風に私に話しかけた。
「ほんとに、違いますね。私にとって神様は、私を遠くから見守っている方といった感じですよ。優しい方だろうとおもいますが。あと、私たちの運命を、神の意志とおっしゃるかたもいます。自分の意思を尊重しているのは自分の周りにいる人たちであって、神様だとおっしゃる方もいませんね。」
 一生懸命神様について話すきゅうたに、私は同意してみた。きゅうたはそれを聞くと、こう言った。
「へぇ~、薫たちの神様って放任主義なのかな(笑)。でもさ、人の心の支えになっているところとかは似てるね。」
「そうですね。」
きゅうたはそれから私の作った食事をとっていた。そして、ポツリとこういった。
「神様ってね、すごくいい人なの。私、ほんとはこうして薫と食事することも出来なかったかもしれないんだ。・・でもね、神様がね、許してくださってね。私の頭をなでて、いってらっしゃいってね、言ってくださったんだぁ・・・。」
 きゅうたはそう顔を赤らめて嬉しそうに微笑む。
「神様は、一人しかいらっしゃらないんですか?」
「・・・。いっぱいいるよ。でも、その人その人にとっての神様は、ただ一人でしょ?」
「きゅうたにとっての神様は、そのかたお一人でしょうね。」
そう言って私は微笑する。
 

 この時、きゅうたは演技が絶対に出来ないだろうなって思いましたね(笑)。多分、きゅうたは神様が頭をなでてくださったって辺りで、自分が嬉しそうな顔をしているってまったく気づいていないと思いますから。顔が赤くなっているのは、気づいていたと思いますが。

七、

 きゅうたが何故、私に話しかけてきたのかわかった日。そんな日に、私もきゅうたをとおして伊織を見ていたことを告白することになる。それは、今の私にでも出来ること。でも、きゅうたの羽を受け取ることは、今の私なら絶対に出来ない。

相変わらず、きゅうたは神様の話を嬉しそうにするのだった。でも、嫌な気分には不思議とならなかった。それよりも、話し相手がいることのほうが嬉しかった。
 そして、相変わらずきゅうたは私の作った食事をとっていた。神様のことを嬉しそうに語っても、神様を待たせることは苦にならないのだろうか。
「神様を待たせるのは、嫌じゃないんですか?」
「・・神様、私が来るのに丁度合わせて来るし、私のことを待つことを楽しんだりしないから。」
 少しきゅうたが淋しそうな顔をした気がした。
「きゅうたなら、神様を待つとしたら、待つということを楽しみますか?」
そう言って、私はきゅうたが違うことを考えるように仕向けた。
「うん。絶対楽しむ。だってさ、わざわざ私のとこに来てくださって、しかも私が待っているから、その約束している場所に来るんだって考えたら、すっごい嬉しいもん。」
「確かに好きな方を待つというのは、来るとわかっていたら楽しいでしょうね。」
「うんうん!絶対そう!来てくれることが前提だよね。」
きゅうたは私の意見にすごく納得していた。
「待っている間は、何をなさるんですか?」
「えっとねぇ・・。でもやっぱり早く会いたいし。似てる人探すの! 」
「似ている人を探すんですか?」
「そーだよ♪似てる人をね、探すの。でもさぁ、探してなくっても、薫に会ったよ。」
「そういえば、私と神様が似ているとおっしゃっていましたね。」
「うん、そっくりだったから、薫に話しかけたんだ。・・薫は怒るかもしれないけど、私、神様に似てるってだけで、薫に話しかけたんだ。最初に薫に会ったとき、確かに薫と目はあったけど。」
 それを聞いた私は、なにか、どこか心の奥で引っかかっていたものが、ストンと落ちていくのを感じた。
「そうなんですか。・・かまいませんよ。きっかけは。それに、きゅうたは神様に似ていることを私に話しかける切っ掛けにしかしていないじゃないですか。」
 こう言った自分の顔は、はたしてどんな顔をしていたのだろう。目は、うつろじゃなかっただろうか。ちゃんと、きゅうたの顔を見れていただろうか。
「確か、薫の奥さんって私に似てるんだよね?」
「・・ええ。」
 心の奥底で、別に言う必要性は無いじゃないかという声が確かにした。だが一方で、自分のしていたことをきゅうたに言っても、笑って終わりじゃないか。という声もした。
「そんなにそっくりなの?」
 きゅうたは、相変わらずの声、そして態度だった。そこには、確かにいつもとは違う私が居たけれど。
 そして私は告白する。

「はっきり言って、私はきゅうたが天使とわかる前まで、きゅうたを通して伊織しか見てなかったんです・・。」


 重苦しい感じが、自分にだけした。顔は、赤かったのかもしれない。
「ふーん。薫ってすっごい奥さん思いだねー。伊織って、呼び捨て?いいなぁっ。フフっ、すっごいイイな。そんなに思われるなんて、奥さん幸せものだね。」
 そう言って、きゅうたは微笑んだ。 
「思う相手は、触れることももうかなわないんですけどね。」
 私は、出来るだけ無表情になるよう努めた。
「・・・・そういえば、奥さんってどこにいるものなの?」
「・・私の奥さんは、空に居ることを私が勝手に願ってます。」
「・・はっきり言ってほしいんだけど。無理?」
 表情を変えないよう努めるのにかなり苦労した。手が汗ばんでしかたがなかった。




もう、死んで私のそばに居てくれないんです。




 こう言ったときですか?すごくつらかったです。きゅうたに言うってことは、強制的に自分にも言うことになるでしょう?「伊織は死んだんだ」って。だから、あの時はそれを言うのがたまらなくつらかった。でも、それをきゅうたには知られたくないんですね。だから無表情にしたいって思うんです。そしたら、ものすごい苦労を要したんですよ(笑)。だから、めったに汗をかかない手のひらに、汗なんかかいてしまったんでしょうね(苦笑)。
 
  
八、

 きゅうたの願い、そして、天使であることの意味。その日、私はきゅうたから教えてもらいました。私は、自分の無力さをいつも他人から思い知らされる。そう確信した日。

 きゅうたと会う時間が、まちまちになっていた。それでも、私たちはほぼ毎日会っていた。
「神様がね、最近許してくださらないの。もう少しで、十月でしょ?そしたら、ここは日本だから、ある場所に神様が集合してしまうから。神様ね、私のことを守りきれなくなるから、これ以上薫とかに会わないほうがいいって言うんだぁ。」
「なにか、いけないことでもしたんですか?」
「・・・・。した。薫に会ったとか、そーいうことじゃないんだけどね。」
 きゅうたは、少し複雑な顔をした。
「何をしたんですか?」
 私は、きゅうたの行動に悪いところがあったか考えてみたが、見つけることが出来なかった。
「羽、もってる?薫は。」
「・・・。もっていませんね。もっていないから、私はきゅうたを見たとき吃驚したんですよ。」
「そうだよねぇ・・・。・・・。もって、ないんだよね・・。」
 きゅうたは明らかにさびしそうな顔をした。
「あのね、私、薫に渡したでしょ?羽をさ。それをね、見た違う神様が怒ってるんだって。だから、私に何かしら処罰を与えたいんだって。・・私にとっては単なる人にもかわらない存在なのに、私の運命決めるのね、私にとっての神様だけじゃ、無いんだって・・・。」
「それはおかしな話ですね。・・・そういえばきゅうたは、なにかここでしたいことがあるんですか?」
「・・・あるの。まだ。だって、神様ね、ここからの空をね、いつも見てたころがあったんだって。だからね、私も見ていたいの。それに・・私は空が好き。神様が見ていなかったとしても、絶対に好き。・・・・私が天使なのは、神様と会えるからだけどね。天使じゃなかったら・・・、神様を見ることすら出来ないもん・・。」
 きゅうたの目を見てみると、きゅうたは泣きそうだった。
 そして一言、言って泣いた。

「どうして、羽をつけていなきゃ、天使であることを誇りに出来ないのかな・・・?」


 初めて見たきゅうたの泣き顔は、悲しいくらいに伊織にそっくりだった。


 そう言われた時、私は何も出来なかったんです。ただ、きゅうたを見ていることしか出来なかった。そこに居るということしか、出来なかったんです。・・・・・無力ですね。きゅうたに何を言ってあげたらいいのかが、わからないんです。泣いている、それって、明らかにいつも通りの事じゃない筈なのに。


九、
 覚悟し始めていたこと。それは、確実に確信へと変わっていく。覚悟は決めるものとなり、私の前にのしかかる。つらい現実、変わらないもの。

 この頃から、意図的に空が見えるところへよく仕事が終わってからの夕方にきゅうたと見るようになった。いつだって空が綺麗な筈は無くて、天気が悪い日だって確かにあった。それでもいつもきゅうたは幸せそうに、空を眺めていた。背を伸ばし、羽を広げて。
 「・・本当に空が好きなんですね、きゅうたは。今日なんて、別に天気はよくないから青空なんて見えないじゃないですか。」
「わかってなーい!!薫!違うよそれって。少なくとも、私は違う!私は、空が好き。見上げるこの景色がね、好きなの。見上げるっていう、行為も好き。」
「空の状態は関係ないんですね。」
「そうだよ。・・薫、奥さんが怒ってるときは見向きもしたくないの?」
「・・・また答えにくい質問をしますね、きゅうたも。」
 確かに伊織が怒っていたら、あまり見ていたくはない。伊織が何かに対して怒っているのなら、その怒りをやわらげてあげようかなとも思うけれど、自分とけんかしているときなら怒りに任せて嫌いだと思ってしまうだろう。それは、確実に一時の感情だけれども。
 本当に返答に困ってしまった私に、きゅうたはこう言った。
「そのときは、確かに薫自身も怒ってるかもしれないけどさ、好きなのは変わらないでしょ?」
「・・・ええ。」
「でっしょー??だから、私は天気が悪くたって、好きだよ。神様が、居る場所なんだってわかってるし・・・。」
 そう最後に付け足したきゅうたに、思わず私は笑ってしまった。
「ははっ、きゅうたは本当に『神様』が好きなんですね。結局は、神様のことに話が落ち着いていますよ!」
「あはっ、ばれた?だって大好きなんだもん。神様のこと考えるだけでね、私優しい気持ちになれるんだぁ・・・。・・・・それって、少し悲しいけどね。」
「なぜですか?」
「だって、それって私がさ、神様とけんかしちゃうほど、意見言い合って、話し合うほどの関係じゃないってことなの。考えて、勝手に優しくなってるだけなんだって思うと、ちょっと悲しくなるってことだよ。」
そう、きゅうたは言った。やはりきゅうたは演技が出来なくて、悲しい顔を私にはっきりと見せていた。
「空、見たほうがいいですよ。見るの、好きなんでしょう?私と勝手に神様について話して悲しくなるだなんて、それこそおかしいですよ。好きな人のことや、好きなことを考えたら幸せになるっていうのは普通ですよ。ここに居られる時期も、わからなくなっているんでしょう?なら、空を見て、幸せになったほうがいいですよ。悲しくなろうとするより、よっぽど前向きです。」
「・・・・そうだね!!私、好きなことしてるほうがやっぱ好きだもんなぁ。」
「ははっ、当たり前ですよ、そんなこと。」
きゅうたは空を見上げた。やはり天気は悪かったのだけれど、なんとなく私も幸せな気がした。
 

好きなことをしているときとか、やっぱ人っていい顔するんだなぁって思いましたね。きゅうた、本当にいい笑顔をしてたんですよ。演技が出来ないし、する気もないから、いつだって素直な感情を顔に表してくれる。私はいつもそれを見てきゅうたのその時その時の感情を知ったんです。空を見ているときのきゅうたの顔は本当に幸せそうで、嬉しそうだったんで、私も幸せな気がしました。伝染した感じですか(笑)。


十、

神無月、神有月。きゅうたにとっての神様は、いつだって彼女の中にいる。それでも、神様がほかにいる事実は変わらない。たとえ、それが自分にとっては人以下の存在であっても。


十月が、本当に近くなっていた。紅葉が、紅くなっていったことが、それを示している。私ときゅうたは、相変わらず私の仕事が終わったり、休日の日に会ったりしていたのだけれど、時間が迫っているという形の無い不安が胸にあった。私にだけあったのかもしれないけれど。
「きゅうたは、どこかに行きたいですか?空がきれいなところは、本当はこんな街中よりずっと綺麗ですよ。」
「はっはー!残念、薫!・・・・気持ち嬉しいけど、私街中しか知らないし。それに、天気が悪かった次の日とか、すっごくいつも以上に綺麗に感じられるじゃない?わざと、自分の中で感動を作り出すのって好きなんだよね、私。だからここにいていい?」
そう言ってきゅうたは笑った。それにつられて私も笑ってこういった。
「別に、いていいですよ。私も、綺麗な田舎推奨者じゃありませんから(笑)。きゅうたが行く必要性は無いと思うなら、行かなくていいですよ。」
「ありがと、薫。・・・・ね、薫、私街中知ってるって言ったけど、具体的には知らないんだ。だって私がここに来るようになったのって、最近なんだよ。」
そう言ったきゅうたに対して、私は微笑んでこういった。
「もう確実に来て半年近くはたっているんじゃないですか?・・・街中を知らないんでしたら、一緒に出かけましょうか?街中からの空も、綺麗ですよ。それを見るだけでも、一応行く価値はあるでしょう?」
「・・・行くっ!!ありがと!!」
 そして、私たちは出かけた。街中を歩くことにしたのだった。街中は人であふれていて、いつもは苛々するからあまり行かないところだったけれど、きゅうたに教えてあげたかったから行くことにした。
街中は、相変わらず人で溢れかえっていて、ごみだめみたいだった。好きなところではないので、ついいやな表現をしてしまいたくなる。
そんな私を尻目に、きゅうたは街中を見ていた。とても、嬉しそうに。はしゃいでいるっていう感じだろうか。
「うわ~、街中って広いんだねっ!薫ン家の近くも人が多いなぁって思ったのに。比べらんないやぁ。」
「私の家の近くなんて、人は多くありませんよ。」
「えーっ!多かったよ!・・・・天使のいる数が少ないからそう思っちゃったのかな?」
「はは・・天使はきゅうた以外見たことが無いからよくわからないです。でも、少ないんじゃないですか?」
そう言って歩いた。きゅうたと私は街中を見ていった。街中の具体的なお店を、みて回っていった。大体、二時間くらい歩き回っていた。
「少し休みましょうか?」
「んー・・。休む。」
「じゃ、公園行きましょうか。この近くにあるんですよ。」
そう私が言うと、きゅうたはすごく嬉しそうな顔をした。
「本当?行くっ!!絶対行く!うわー・・・。すごく嬉しいなぁ・・。」
 手を頬に回して、態度でも嬉しさを表現する。
「ほんと、嬉しそうな顔してますよ。」
思わずそういって私は笑う。
「だって、嬉しいんだもん。」
そうきゅうたが言った。
歩いてすぐ、公園に着いた。いつも会っていた公園とは違い、規模が広い。噴水がある公園で、休日のせいなのか馬鹿みたいに人がいた。
「すっごい人だね。でも、いいな。すっごくイイ!いろんな公園あるんだね。こんなに広いのに、公園なんだ。」
「公園ですよ。大きさは、決まっていないんじゃないですか?よくわからないです。」
そういって私は微笑んだ。
 
 その後ですか?また色々歩き回って、最後にケーキを買いました(笑)。それで、いつも通り、ご飯作って、食べて。ケーキはデザートにしました(笑)。おいしかったですよ。


 「じゃあね!今日は楽しかったよ!! 」
 「楽しんでもらえたなら嬉しいです。」
 そう言うと、きゅうたは玄関に行き、ドアを開けた。

ガチャッ
ゴンッ

「・・・・痛い。」
 そう頭をぶつけてしまったらしい男の人が言うと、きゅうたはその男の人が誰なのかを確認せず謝った。
「えぇっ!!ごめんなさい!!痛いですよねー??!!すごい音しましたもんねー?!あああっ!!ごめんなさいー!!」
「君は、いつもはそんな言葉遣いなんだ。気を使わせているんだね。僕は。」
 そういうと、男の人は微笑みながら自分の頭をさすり、きゅうたを責めなかった。
「・・神様ですか?」
 私は思わず聞いていた。きゅうたの知り合いは、神様しか知らなかったから。
「そうです、って言うのも変だけど、神様です。話したいことあるんだけど、空に居たんじゃ誰が聞いてるかわかったもんじゃないから。今日は初めてのお出迎えってトコかな。」
「そうなんですか。」
 私は妙に納得した感じで言った。
「そーゆーコト。それにしても、うわー、ほんとに私と薫さんって似てますね。きゅうた、あなたの目、あってますよ。」
 そう神様が言うと、きゅうたは叫んだ。
「ちょっとまって!!二人で会話を進めないでー!!」
「きゅうた、僕ですよ。わかりますか?それ位は。」
そう言って神様はにっこりと微笑んだ。
「・・・・・・ッッ!!!!神様ッ??神様なんですか??どうしてここにいらっしゃるんですか!??いつもは、そんな・・・空の、私の家の結構近くで待っているだけじゃありませんか!」
「・・・話があってね。・・・薫さん、中にあがらせてもらっていいですか?薫さんにも、関係あると思うから。・・誰かに聞かれちゃ困るんですよ。三人だけでお話したいんです。」
「いいですよ。私以外には誰もいませんから。」
「ありがとうございます。」
 
 そう言って、私は神様を自分の家に上げた。自分でもおかしいくらいの自然さだった。

十一、

 神様、何故あなたは私を見守ることしかしてくださらない?私が何かをあなたに願うのは、罪なのですか?願ったら、罰をお与えになるのですか?私にとっての神様は、いつまでたっても融通の利かない、存在自体が罪のような方だ。

 神様ときゅうた、そして私。それぞれが、家の居間に集まり、コタツに入っているというかなり異様な光景だった。
「・・お茶出しましょうか?」
 そう私が言う。
「あ、もらえるんなら、いただきます。遠慮しませんよ僕は(笑)。」
「しなくていいですよそんな(笑)。」
 きゅうたにとっての神様は、かなり私に似ていて、それで人間という存在に似ていた。しゃべっていて、変に気を使う必要性もなく、とても気楽だったのを覚えている。
「・・・・神様がここに来たっていうことは、重要なことがあったんですよね。」
 きゅうたはいつになく弱気な感じで神様に問う。
「よほど僕は君に対して冷たい態度をとってきたみたいだね。ごめん。重要なことが無いと、きちゃいけない?・・・まぁ、あるんだけどね。重要な用事。」
「・・・冷たい態度をとっていたなんて、そんなことありません!!私には、勿体無いくらいやさしい態度です!私は、いつも神様との約束を破っていたのに、それをわかっていてもいつもとかわらず接してくださったじゃないですか。それが、どれだけ嬉しかったか!」
「そんな。きみが羽を取ったっていうことは、僕にとっちゃあたいしたことじゃないからね。ほかの人が言ってきたことだから、僕にとっては重要なことじゃない。それで、きみが嬉しかったんなら、僕も嬉しいよ。自分にとってたいしたことじゃなくても喜んでくれるならさ。楽なものだ。」
 「その言い方は冷たいと思います。」
 きゅうたがきっぱりと言った。
「だってそーいう言い方を選んだからね。・・結局、僕は何の力もありはしない。それなのに、君が喜んで、嬉しいと思うと、僕は罪悪感でいっぱいになるんだよ。」
「・・・・。その気遣いは、優しいって言うのかは微妙なもんですね。あ、どうぞ、お茶です。」
 そう言って私は神様にお茶を渡した。
「あ、ありがとうございます。・・優しくないですか?この気遣いは。」
 神様は苦笑する。
「私にとっては、やな気遣いですね。されたくありませんよ、そんな気遣い。それより、いい気分にさせてくれるほうがよっぽどいい。後で気づく優しさほど、いやなものはないです。たいてい、気づいたときはその人にお返しをすることが出来ない状態になっているんだから・・・。」
「薫が言ってることは、正しいと思う。・・神様、私もそう思います。で、重要な話って何なんでしょうか?」
「ちょっと待って・・。お茶飲む。」
 神様はそう言ってお茶を飲んだ。結構ゆっくりな動作だった。そして、ひと段落つけ終わるとこう言った。
「えっと、言いたい事っていうのはきゅうたはわかってると思うけど、十月のことについて。あと、きゅうたに対しての処分が決定したっていうこと。」
 事務的な言い方だった。出来るだけ、感情を込めないようにしているようだった。
「・・・・処分が、決まってしまったんですか?私は、結局何をされるんですか。」
「・・・言いにくい。けど言わないで勝手に処分されたほうがもっと気分が悪い。だから、言う。けど・・・その前にこれはわかっておいてほしい。この結果は僕の本意じゃない。不本意そのものだ。神様ってやつは、融通が本当に利かない。古いことを守っていれば、それが正しいと信じきっている。そんなやつばっかりだ。」
 神様はそう最後のほうを冷たく言い放った。私は、それを聞いて神様に問いかけた。
「・・きゅうたに、何かされるんですか?」
「される。正しく言っちゃえば、僕以外の神様って言うやつがさ、羽をとったやつが気に入らないからきゅうたを見せしめに殺してやろうってだけ。最近羽を勝手に取るやつがでてきたんだよ。邪魔だからって。そしたら気に入らないんだとさ。羽とるっていう行為がサ。」
「羽を取ったこと・・・?」
 きゅうたが、私に羽を渡したことを思い出した。あれが、神様にとってはやってはいけないことだったのか・・・。                   


後悔という味が、自分の口の中に広がっていく感じがした。

十二、
 きゅうたへの処罰。決めかけていた覚悟。すべてが私のもとに現実となって私に問いかける。おまえは、何をしてきたんだと。
 

 言いがたい沈黙が、居間に広がる。きゅうたは、黙っていた。私は、神様にまた問いかけた。
「それで、結局きゅうたはどんな処罰を受けるんですか?」
「・・・存在を、無にするそうだよ。つまり、殺したいそうだ。神様たちは。」
「・・・ほかの人たちを神様というのはやめてください!!」
 きゅうたが、突然そう大声でどなった。
「私にとっての神様は、あなただけです!!ほかの人なんて、どうでもいいです!・・・処分をしたいなら、してください。それで、気が済むのなら。そんなことをしても、私が空に近づくだけ・・だ・・・も・・っ。」
 きゅうたの声が、途中で止まった。代わりに、きゅうたの頬に泪がぽろぽろと流れた。
「羽が、そんなに大切なものだったなんて・・・。」
 私は、思わずそう言っていた。きゅうたが、殺されてしまうほど、してはいけないことだったなんて。そうと知っていたら、絶対受け取ったりしたくなかったのに。つけていてくださいって、ちゃんときゅうたに言えたのに・・・・。そんな思いが、私の中いっぱいに広がった。
「大切、らしいね。羽が。薫さんが受け取ったのは、不可抗力でしょう。知らなかったんだから。それに、僕が思うにきゅうたが薫さんに会った途端に羽をはずしていたんでしょう?」
「私が、珍しげに見ていたから・・。はずして、私にくれたんです。」
 そう言った。もう、後悔でいっぱいだった。
「神無月きゅうたって、名前言われたときから気づいていたはずでしょう?きゅうた。もう僕の力ではきゅうたを守りきれないことが。」
「・・・え?」
 私が、不思議そうな顔をすると神様はこういった。
「神無月。神無月ってきゅうたがここに来る際にもらった名字なんです。元は名字なんてものはないんですよ、私たちには。聞いているでしょう?薫さんも。きゅうたのフルネーム。神様がいないってことをさりげなく伝えたかったらしいですよ。もろばれ、センスなさ過ぎって感じですけど。きゅうたにとっての神様が僕だってことを考えての名前だそうです。もうおまえを守ってくれるやつは、何の力もないってね。」
そう、神様が言ったとき、泣いていたきゅうたがこう言った。
「神様は、いつだって一人だよ・・・。今ここにいる、この方だけだよ・・・・!!おかしいよぅ・・。だって、私にとって、いつだってっ!!いつだって・・・!神様は居るよ。神無月なんかじゃ、ないのにぃっ!っ、っく、・・・。」
そうきゅうたは主張する。決して、私以外は認めてはくれない主張を。認める私に一生懸命、主張する。私は小さな子をあやすように抱きしめる。それは、とても自然な行為だった。きゅうたは安心そうに目を閉じる。
 それを見た神様が、きゅうたの頬を触りながらこう言った。
「神さまは、僕だけじゃない。一人だけじゃ・・ない。僕だけだったら、君が死んだりなんかするわけないじゃないか・・・!」
 神様が、本当に悲しそうだった。きゅうたは、声を殺して泣いていた。
「声を押し殺してなく必要は、ありませんよ。」
 そう、出来るだけ優しい声できゅうたに言った。
「どうして?なんで・・・・・・?なんでっ、薫みたいな人に、会っちゃうんだろうね?」
「ははっ、会いたくありませんでしたか?」
 思わず私がそういう。きゅうたは、私の服をつかんでこういった。
「やさしすぎるよ・・・。私、思っちゃうよ・・・。人間だったらよかったのにって!! 」
「・・・・・。」
 私は何も言うことができなかった。


 
 後悔で、ただただいっぱいだった。羽を取ることが、いけない行為だなんて知らなかった。でも、知らなかったからしたことは、罪にならないなんてことがあるわけない。そう思った。結果きゅうたが死ぬのに、知らなかったで済ませることが、今の私にはもう不可能だった。それ位、存在が。きゅうたの、存在が。私の中で大きくなっていたことに、そのとき初めて思い知らされた。

 

十三、
さよならと、言いたいわけじゃない。言わざるを得ないから、言うだけ。本当は、また明日会って下さいねと言って、君と別れたかった。

 神様が、きゅうたを連れて帰ろうとした。
「・・もう、帰りますよ。きゅうた。きゅうたに対しての話は、まだあるんです。」
「・・・わかりました。帰ります」
 そうきゅうたが言った。私は、きゅうたを送り出して家に入った。
 こらえきれないものが、一人になって溢れ出した。後悔をして流す泪は、初めてのような気がした。こんな初めてなんて、経験したくはなかった。
 きゅうたは、このまま家に帰って、私のところには来ないまま、死んでしまうのかと思った。それは、いやだった。気づかないうちに、死んでしまうなんて。伊織のときに、もう経験した。あんな思いは、もういやなんだ・・・。
 

さよならという言葉ですら、今はほしい。
君がいなくなるのなら。



十四、


 きゅうたが、いつもどおり私と会う。いつもどおり、私と話をする。いつも通り変わらない。
唯一違うのは、私と、さよならの仕方。

 「やっほー!薫、今日お休みでよかったぁ。平日だから会えないと思った。」
 「有休というものが、きちんとあるんですよ。」
 そう言って、笑った。
 そして、公園に出かけていった。空は晴れていて雲ひとつない。空気も、澄んでいた。
「今日は、天気がいいですよ。やっぱり、晴れているほうが私は好きです。」
 私はきゅうたにそう言った。
「うん!私も晴れてる空、大好きだよ!今日、空がこんな風でよかった。最後だから、最高の笑顔見ておきたかったんだよね。私の大好きな、空の笑顔!」
 そう、きゅうたが笑顔で言った。
「・・・・最後?」
「うん。最後。・・・今日ね、私いなくなるんだぁ。」
「・・・・え?」
 あっさりと、悲しそうにも言わなかった。私は、悲しくて仕方がなかった。いつも、会う人が急に目の前からいなくなる現実。それが、私には辛い。
「薫、私を通して奥さんを見てるって言ったよね・・。」
「ええ。」
「・・そんなの、うそだよ・・。だって、私を通して奥さん見てたらそんな淋しい顔できないよ・・。」
「今淋しい顔をしているのは、あなたが消えてしまうといったからです・・。」
きっと、今私の言った言葉の語尾は、聞こえない。悲しみが口いっぱいに広がって、言葉の代わりに出るのは、泪だけだ。
「やだ・・薫。泣かないで・・。私、幸せなんだから。フフッ・・。無になったらね、私、やっと欲しかったものがね、手に入るんだぁ・・・。」
きゅうたが欲しいもの。私が欲しくなくても、いつだってそこにあるもの。きゅうたにはなくて、私には、与えられていたもの・・。
「そうですね・・。きゅうたにとってそれが幸せなら、私が泣いているのは・・おかしな光景ですね。」
「そうだよ!泣いちゃ、だめだよ・・。私、思っちゃうから。」
「何をですか・・・?」
「薫に対しての、おねがい。」
 もう消えそうなのか、きゅうたはどんどん薄くなって風に溶けていっているように思えた。泪がきゅうたをぼかしていって、声だけが、私にはっきりと聞こえる。
「どんなおねがいですか・・?」
私がそういうと、きゅうたは私の頬に手を持っていく。触れているはずのきゅうたの手のひらの熱さが、私には感じられなくて、頬にあるきゅうたの手を確かめずにはいられなかった。
「私のおねがい・・。ごめんね、二つあるんだ。」
そういってきゅうたは微笑んだ。私にはそのきゅうたの表情を感じられることがうれしくてならなかった。
「二つとも言って、結構ですよ。」
「二つとも言うよ。だって、もうこうして会えることはないもん・・。あのね、私が無になったら、空を見て。空にね、きっと私がいるから。奥さんも、フフッ私に似てるんだったら、きっといるから・・。奥さん目当てでいいから・・。ついででいいから・・。私のこと、思い出してね。」
 ついでに思い出すような、そんな中途半端な存在ではないよとはっきり言いたいのに、やはり相変わらず私の口は言葉を伝える機能を失ったままだった。
「あと一つはね、薫・・。泣かないで・・。それじゃあ、最後のおねがいが聞いてもらえるかわかんないじゃない・・。」
「言っていいですよ。」
そういうと、きゅうたは顔を私の耳に近づけて、つぶやくように言った。
「・・・・薫、笑ってよ・・。」
「・・・ははっ、そんな・・そんなことですか・・。」
「・・うん。」
「そんなこと・・・。簡単じゃないですか・・・・・・」

どうか、どうか、ちゃんと笑えていますように―――。

 目を細めるたびに、泪が頬を伝わって流れていく。きゅうたの手が、私の泪で濡れることはないような気がして、きゅうたのねがいを、叶えてやれていないような気がして、怖くて仕方がなかった。
 「薫、ありがとう。私、最後に会えた人が薫みたいな人でよかったなぁ・・。」

 そういったきゅうたが、少し泣いているように見えた。


 いやらしいくらいに空は澄んでいて、風は冷たい。きゅうたにとっての神様が、少しでも彼女に対して何かを思いますように。そう願った。きゅうたが悲しくなるような事じゃないことであるようにとも、願いつつ。
 空を見る。痛々しくて、悲しみだけが私を支配しているような錯覚を覚える。それでも、私は空を見上げて、二人の女性を思うのだ。
 ○月○日(○曜日)晴れ
 空を見た。きゅうたが、そこにいるといったから。伊織も、そこにいるだろうといったから。私が、そこに悲しみしか見出せなくなりそうだとしても。
  神様は、もう私を見守らない。私が、神を思うことがないように。
                     ―――――――葉月薫の日記より
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学生時代に書いたもの05

2016年11月03日 23時32分40秒 | その他
(野暮メモ)

高校2年の頃書いたもの。
俺女が書いたようなムズがゆさがある!
私がイメージしていたのは、
ジャンプの投稿ページに書かれていたネタみたいな男子。
くだらないことを楽しげに話してる感じを書きたかった。
受験の辺りの描写は自分の経験からしか書けないから、
文芸部で読ませた時に友達から
「これ実体験混じってない?」
って指摘受けて「バレバレか…」ってなりました。
ちなみに、紬田(つむぎだ)と鹿崎(しかざき)と読みます。
無駄に読めない漢字使いたい年頃だったのです。

(メモ終わり)



ふらふら


 まぁ何だかんだ言って、中三のときって楽しかったんだよな、やっぱり。
 中三の教室。まだ七月の教室は、受験生特有の緊張感に包まれていなくて、なんとなく暑さでやられそうだった。
「なんでこんなことになってんだよ・・・。」
 思わず心の中でつぶやく。
 感動の押し売り。まさにそんな言葉がぴったりと当てはまるビデオを、数学の授業に見せられた男子の一言だ。授業が事のほかに早く進み、余った時間に見せてくれたビデオ。
 うわ、最悪。そう思った。マジでやだよ。こんなもの、ほら泣けるでしょ?って上から見下しながら作ったんだろうなとか思うから。こんなので泣くのなんてそうそういないんじゃねぇの?そう思ってた。はい、そう思ってました!だ、け、ど!!ないてんだよなぁ・・・。それも自動的にぽろぽろと。
 同士を見つけようと教室を見回す。ビデオを見ているから教室が暗い。おいおいおいおい・・。誰も泣いてねぇよ!!男子なんかこの感動作を馬鹿にしている感じで見てる奴らまでいそうだよ!!
 でも、いるんだよ。ほら、いましたよ!俺の同士!
 「・・・・・・。」
 泣いていたのは、教室で一番真面目だといわれている男子だった。俺は思わずそいつを見てしまった。 
 「な、これ泣けるよな!」
 と一言添えて。ただ見てるだけなんて怪しく思われるかもしれないだろ、こいつに。そんなのはごめんだから。
 「うん、泣ける!」
 そういって笑いかけてきた。ま、一言添えたのは良かったって事だ。そう思って安心した。
 それから、あいつと仲良くなった。一番まじめなあいつは、勉強方面でもやっぱりまじめだった。ま、この頃なんて大体頭が良さそうで、大人しそうな奴=真面目みたいなところもあるから、そう考えればこいつが頭がいいことも普通のことなんだろうけど。頭がいいから、あいつにはずいぶん色々なことを教えてもらったし、俺も教えた。教えてやったことは、思い切り別方面のことだったけど、コイツにちょうどいい情報だったと思うから、別段気にしていない。
「なぁ~、俺ここわかんないんだけど。」
「あ、ここ?ここは公式使えば楽勝じゃん?」
「あ、ほんとだ。」
とか、
「あ、昨日のテレビ、○○でてたよね。見た? 」
「見た見た!あれあり得ねぇよな!」
が基本的な会話の軸。基本的に、趣味はあっていた。感動の押し売りで泣ける俺らだからだろうか?ってのは冗談だけど。
 過ぎ行く季節。夏休みは受験の総本山なんて言われた俺たちは、塾でかち合った。俺がまったくの偶然でコイツの通っている塾に行っただけだけど。
「紬田、ここ通ってたん?」
「鹿崎君ここにしたんだ!教えてやるよ、宿題。」
「マジ?ありがとー。」
 この頃はケータイも持ってなくて、情報交換は学校でだけ。パソコンは俺がつかってなかったし。今はケータイないとか考えられないけど、この頃は無くても大丈夫だったんだよな。
  ふらふら、ふらふら。
 俺はいつでもそうだった。結局この塾で得られたものといったら、合格率76%とか言う、受かるのか受からないのか微妙な数字の紙切れ一枚だった。紬田は、思い切りこの紙切れの最高数字の98%を打ち出していた。って記憶しかない。紙切れ、母親に見つけられた途端にどっかに持っていかれて消えたし。ま、マジであてになんねーけどさ、こんなの。俺、この数字が出た高校、結局猛勉強して首席で入学。すごくねー?紬田に教えてもらったトコ、今でもできるしさ。いや、それは当たり前か。
 夏休みが終われば、いよいよ勉強かなーとか思ってた俺は、実は文化祭があったことに気づいた。勉強はますます俺の中から遠ざかった。皆は隠れて勉強してんだよね、こん時。すげービックリ。紬田もこの時勉強時間をどうやって捻出するか考えさせられたらしい。今気づいたけど、紬田ってフツーに真面目だな・・。
 俺は、このときの紬田と一緒の塾にまだ通っていた。勉強は、まぁ、やっていなかったものを取り戻したのか、成績は微妙に(この時期なのに)上がった。うん、純心だったのかこの頃は真面目になったのも気持ち良かったな。俺、勉強してエライべ?みたいなさ。俺も根は真面目なんだよ。うん。
 雪が降りそうな季節には、確かこんな会話を紬田とした。今考えるとめちゃ恥ずかしい会話をしていた気ぃする。以下、俺の記憶抜粋。因みに雪虫は小さい虫で、冬を知らせてくれるいいヤツ。
「俺、雪虫って好きなんだよな。なんかもう少しで雪降りそーーっって感じがさ。」
って俺が言うと、
「ふーん。俺はこの時期に吹いてる冷たい風のが好きだけど。」
と紬田が言った。
「俺、雪虫になりてー・・・。雪虫ぐらいなら、好きなやつとかのどこにでももぐりこめそうじゃん?」
 こんなこと言ってる俺、恥ずかしいな・・。
「雪虫は傷つきやすいから、好きなやつのところに潜り込んだ途端速攻で死ぬよ。」
いや、確かにそうだけど。今思い出しても厳しい一言だよ。
「傷つきやすいとこが俺と雪虫の唯一の共通点だしな。別にそれはイイんだよ。」
「お前、俺と話してるときなんか傷ついたりしたの?」
「・・・お前のそーいう無神経なとこに傷ついてるっつーの・・。」
「じゃあ、俺はおまえのそーいうトコ見て傷つくことにする。」
「お前、何あからさまな嘘言ってんのよ?」
 う~わ~。恥ずかしい記憶だよね・・。以上俺の記憶。
 雪の降る季節になって、ツルツルの道路は「高校受験滑ろ」と言わんばかりに俺を転ばせた。この時本気で転びすぎて、高校落ちんのかなとか3日位不安になった気がする。勉強してんだから神様受からせてくれよ!って、神宮にいってお願いしに行った。きっちり5円玉だけ持って。帰り一円玉拾ってめっちゃ得した気分になったな。
 大晦日まできっちり塾で勉強。塾でうさんくさい合格のお守り貰って、合格の鉢巻きはもらえる予定だったのに貰えなかったから多少さびしい思いをした。
 年賀状は、あんまこなかったな。っつうか俺が出してないし。あ、でも紬田からはきた。なんか俺たち共通の話題に出てくるものが描いてあって、干支描いてねぇの(笑)。おまえ、年賀状には干支描いとけよ!って正月からツッコミ。この年賀状で初ツッコミしたよ俺は。
 ここまでだらだら細かく書いてみた。中学は俺にとって大切な期間だった。色々したしなー。結構、中学って無理しても退学とか無いし。いや、転校とかさせられるけど。俺も髪の毛くらい染めれば良かったな。っつー訳で、学校転校させられるくらいのむちゃはしなかった。紬田が真面目だったのもあって、俺もそれに染まったしな。朱に交わればあかくなる、みたいなね。
 受験日当日までは、もうわけわかんない。早かった。訂正印とかの存在知ったのそこでだったな。俺は訂正するのが嫌だったから、めちゃ気合入れて訂正なしで書ききったけど。
 「鹿崎・・。」
 「ん?どうした紬田。」
 「俺のトコ面接あるんだけど!」
 「うっわ、頑張れよ。俺面接ないし♪」
 「おまえそれ、他人事だと思ってるだろ・・・。」
 「いや、他人事だったら、頑張れすらおまえに言わない。」
 「じゃぁ、一応ありがとう。」
 「おう、どーいたしまして。」
 こーいう会話もしたっけな。ヤバイ。記憶が曖昧だよ。俺まだ22歳なのに。記憶やベー。
 卒業式になったとき、女子はカメラを持ってきていた。フラッシュの嵐。紬田の姿を探すと、いない。どこだよ、と一応思っていると、雪まみれでやってきた。
 「転んだ・・。」
 「ぶはっ!!あと五分で胸につける花くるから、早くコート脱げよ(笑)。」
 「わかったけど、笑うなよ。・・・。おまえなんか後一時間後くらいにボロ泣きだろ?」
「泣かないっつーの。」
「いや、おまえ泣くよ。」
 と言われた俺は、案の定ボロ泣きした。なんつーお約束。
卒業式は不安な気持ちと、学校での思い出とかがぐるぐるして、なんかわけわかんなくて、泣けた。もーボロボロ。いや、でもそこはお仲間同士。紬田も泣いてた。なんだ、俺たち感激屋なだけじゃん。
「鹿崎、おまえ泣いてるじゃん、やっぱり。」
「おまえも泣いてるじゃん。」
「だって泣けるべ?」
「泣けるよ!」
「じゃー将来また会うか!」
「は?」
「だっておまえ連絡手段無いじゃん。」
「電話あるだろ。」
「電話嫌いなんだよ。」
「そーかよ・・。で、いつ会うか?」
「大学卒業した後の、七月。」
「いいよ。」
ビデオを見た、あの七月だから。
「おまえ、浪人すんなよ!!」
「その前に高校合格だろ、おまえ!!(笑)」
高校は、別々になった。合格発表は卒業式の次の日で、俺は不合格をつげるための学校行きは無かった。でも、俺はなぜか不合格説を流されていたことを高校に入ってからのクラス会で知った。俺、落ちてねー!!!
そう、クラス会で俺と紬田はまた交流を再開したのだった。つうか、その時やっと俺がケータイ手に入れてた。ケータイのが俺はメールしやすいから好きだ。
「鹿崎、久しぶり!:」
「紬田久しぶりだな。」
「おまえ、・・・どこの高校に行ったの?」
「いや、おまえに教えた第一志望のトコだけど。」
「えっ?そーだったん?俺落ちたって聞いてたんだけど!!」
「嘘?!マジで?落ちてねぇよ!!」
「うわー。落ちてなかったんだ。」
「落ちてない落ちてない。」
「話しかけづらいとか思ってたんだけど、俺。」
「話しかけやすいのが俺なんだよ。」
「馬鹿だよコイツ(笑)。」
予備校は、一緒になったかな。で、今に至る。

今の俺は、22歳。成人も迎えて、これで堂々とお気に入りにのタバコもすえるってモンです。ビールはあんまり好きくない。それなら日本酒?いや、ジュースっぽいカクテルが好きだ。基本的性格は全然、今までの通りだし。変えようが無くないか?性格とかって。
 
 もー少しで七月が来る。約束した夏だ。
 高校生活は面白かった。大学生活ももちろん面白かった。
 浪人も、しなかった。でも就職はできなかった。 
 夏になり、俺はプータローだった。
 やべー。大学卒業して、ふらふらして、今までと全然かわんないのに、ふらふらって言葉だけが今年は先回りして、気分が暗い。親父には「プータロー」呼ばわりされてるし。いや、違うんだよ、俺はフリーターなんだよ。
 今気づいたけど、七月の卒業式の日って、何気に中旬だし、紬田が就職できてたら思い切り仕事か?とか思ってたけど、すげー強運で、日曜日だった。この際、休日返上とかは考えないでおく。
 当日、俺は学校への道を再び歩いた。いつも歩いていた道は、懐かしいものとなって俺の前に現れた。
 いつも見ていた校舎。もう来ることは許されないような、そんな聖域。本当なら、もうバンバン来ちゃったっていいんだろうけど、俺には無理だった。俺を拒否しているような感じがしたから。もう、おまえはくるなよって言われているような気がするから。だから今まで来ることができなかった。いままで俺たちを一番心配そうに見ていた学年主任の先生も、今じゃ俺が絶対に好きになれない小生意気な中学生を心配そうに見ている、その寂しさ。それを目の当たりにするのも、やっぱりいやだったから。

つまり、俺はまだガキなんだ。

 以前好きだった桜並木を見る。学校にある、たくさんの桜。やっぱりゴールデンウィーク中に咲き乱れてるあの頃に会ったほうが良かったよな、と思った。今は七月で、無意味に暑くて、これであいつが来なかったら、俺すっげぇ馬鹿じゃんかよ。桜が見れたら、まだ来ても良かったかなとか思えるかも知れねぇじゃん。タバコを吸いながら、暇つぶしに考える。
 グランドでは部活のために来ている学生が、走っていた。やっぱり、来るべきではなかったのか。俺はもう中学生ではないから、ここにいるのは不自然で、ぜんぜん自然じゃない。
 いろいろ馬鹿なことを考えていると、足音がこちらに近づいてきた。女子中学生か?と思っていると、ま、お約束って言えばお約束だけど、あいつだった。
 「うわっ!マジで来た!!」
 そう思った。あいつと目が合う。思わず声が出る。
 「絶対来ねーと思った!」
 あれ?声重なってんだけど。
 「予想どおりのこと言ってるよ!」
 あいつが笑った。
 

 蒸し暑い風、照らしつける太陽。


 そうだ、こんな感じだ。
 俺の夏は。
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学生時代に書いたもの04

2016年11月03日 15時10分25秒 | その他
誇り

僕はそんなに強くなくて、
弱いと認める
勇気もない

でもそれでも
僕は好きなんだ
好きで仕方がないんだ

好きなことを
誇りに思えるものが
僕にはあるんだ


僕は期待したくて
期待しないといいながら
結果が待ち遠しい

でもそれでも
僕は思うんだ
そう思っていたいんだ

どうしても
譲れないことが
僕には出来たんだ
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学生時代に書いたもの03

2016年11月03日 00時56分48秒 | その他
サクラ


桜が目の前にきて
クラリとする
もうさわらないで 期待してしまうから
さわって 期待していたいから

まだ あなたがわたしを好きだって

聞こえる声
わたしの耳にだけ 
わたしのそばであなたが
ささやくから
ちかづかないで わたしを拒むなら
ちかづいて それでもそばにいたい

いつだってとらわれるのはわたし

まう花びら
心をあらわす
いつもそこにいない心
いわないで あなたの心
いって 少しでもわかるなら

予想したことばではなくっても

まぼろし
わたしのまわり一面
あなたが見せるなら
ずっと見ていようか
突き放して ほんとうはきらいなくせに
突き放さないで わたしはすきだから

いつもわからないのは 誰も同じ
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学生時代に書いたもの02

2016年11月01日 23時27分01秒 | その他
ドラマ

いつだって好きだと思っていたのに
言えなかった
言葉にならなくて

初めて泣いてしまった話
奇麗事をいいなと思ってしまったとき
すべて あのときから

どうってことのない話
どうして、泣いてしまったのだろう

わかりきっている理由

好きだとわかっていたのに
言えなかった
認められなくて

初めて声をかけてくれた日
オレンジ色が好きな色に変わったとき
すべて あのときから

どうってことのない話
どうして、嬉しかったのだろう

君が君でいる故の話
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学生時代に書いたもの01

2016年11月01日 23時24分37秒 | その他


きいて

適当なことなら言わないから
それを前提にして聞いて
あなたが好き。

目に映るものが 全てじゃない
でも 実際には
目に映るものに左右されがち
たとえば あごのラインとか
私にはない 骨ばった手とか
なんか感じる 素敵よ

その手が 指が
私に触れればいい
その低音で 耳元でささやいて
感じるのは 声だけじゃないはずだわ

めがねをはずして
眼を 見せて 近づいて
下ろした前髪 さわっていいかしら

近づいてくれたら
感じるのは 吐息だけじゃないはず
おもみも くちびるも したも
全てが 安心する

信じてなんて 言わないから
ただ聞いて
わたしのおもみに いみを感じさせて










今の私の感想を。

高校か大学生辺りで書いたもの。
高校かなぁ?基本高校から大学に色々書いてたので。いぇーい文芸部!
年上の相手に本気に思って欲しい…
みたいなイメージで書いてました。
というか私、年の差カップルが好きだったんですよねー。
学生だからね、好みも少し今と違う。
話を設定考えたりして少し書いたりを繰り返す典型的オタクだったのです(笑)。
でもね!詩ならば!ポエマーにならなれる!
とばかりに数編書いてたので、アップしました。
完結した話とかも数個あったのよ。
いつかアップしよ〜。
ブログって便利ですね〜。
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