昼前に
女性はふらっと現れた
父がこのように悪くなった訳
その経緯を聞くにも
常に話は二転三転して落ち着かない女性に
父は父で
フーフー息を漏らしながら
「わ、わしの財布はっ、どうしたんかー」
と
落ち着かない
やはり女性は
財布を知らないといい
その言い方も
決して穏やかではなかった
そんなやり取りをする中
昼食が出た
父に用意されたそれは
普通の白米のご飯に
焼き魚、酢の物
キャベツのサラダ
白菜の漬物
卵スープ
なんとデザートに
カットされた梨まで出た
完食まではしなかったものの
割とよく食べてくれて
梨を食べるときには
柿も食べたいなどと言うので
とても安心した
トイレも尿瓶に自分でとり
部屋の中にあるトイレにも
点滴をしたまま
ツタツタ歩いて入っていった
そのそばで
女性は笑顔で接するのが
ワタシには
気味悪い光景だ
食後からしばらくして
おやつにグレープのゼリーが出た
父がそれを食べ始めると
女性が笑顔でこう言った
「あしたー、わたしがー◯国(女性の母国)に
帰るじゃーチケットがあ、とれたからあ、今からそこに取りに行ってくるんでえー」
は？
このひと
何いってるん？
父が
「そうか、そうじゃのー」
そういうと
部屋から出ていった
何なら
もう2度と
現れるなと
ワタシは
このとき
心底思った
つづく