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絶対見逃せないイップ・マン”シリーズ第3作『イップ・マン 継承』

2017-04-16 | 香港映画

甄子丹(ドニー・イェン)主演、葉偉信(ウィルソン・イップ)監督による葉問(イップ・マン)シリーズの第3弾がやってきます。日本でもすでに、『イップ・マン 序章(原題:葉問)』(2008)、『イップ・マン 葉問(原題:葉問2)』(2010)が公開され、ソフト化もされていますが、今度は原題『葉問3』が『イップ・マン 継承』という邦題で公開の運びとなりました。まずは基本データからどうぞ。

  (c)2015 Pegasus Motion Pictures (Hong Kong) Ltd. All Rights Reserved. 

『イップ・マン 継承』  公式サイト 

2015年/中国・香港/広東語・英語/105分/原題:葉問3 

 監督:葉偉信(ウィルソン・イップ)
 主演:甄子丹(ドニー・イェン)、張晋(マックス・チャン)、熊黛林(リン・ホン)、譚耀文(パトリック・タム)、マイク・タイソン 

 配給:ギャガ・プラス 

4月22日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開

  (c)2015 Pegasus Motion Pictures (Hong Kong) Ltd. All Rights Reserved. 

『イップ・マン 序章』では、1935年の広東省佛山市を舞台にした流派間の争いと、1938年に佛山を占領した日本軍の軍人(池内博之)との争いが描かれ、イップ・マンが香港へ逃れるまでが語られました。続く1949年から始まる『イップ・マン 葉問』では、香港にささやかな道場を開いたイップ・マンと、そこにやってくる弟子(黄燒明/ホァン・シャオミンら)との絆、地元の武術家(洪金寶/サモハン・キンポーら)との確執などが描かれましたが、今回の『イップ・マン 継承』では1959年の香港が舞台となります。中華人民共和国も成立してから10年が経ち、情勢が落ち着いたのでしょうか、イップ・マン(ドニー・イェン)と妻ウィンシン(張永成/リン・ホン)は長男を勉学のため故郷佛山に送り、小学生である次男のチン(葉正)と3人で暮らしていました。チンを学校へと送り、また迎えに行くイップ・マンでしたが、チンが学校で級友とケンカしたと聞き、相手のフォン(張峰)も一緒に家に連れ帰って手当をします。それを聞きつけてフォンを迎えに来たのは、その父チョン・ティンチ(張天志/マックス・チャン)でした。チョン・ティンチもイップ・マンと同じ詠春拳の武術家で、息子に自分を「師父」と呼ばせていました。イップ・マンとチョン・ティンチは、互いに道を究めようとする武術家として、通じ合うものを感じます。

 (c)2015 Pegasus Motion Pictures (Hong Kong) Ltd. All Rights Reserved.

その頃、賭け格闘技場をボスのフランク(マイク・タイソン)から任されているチンピラのサン(馬鯨笙/パトリック・タム)は、小学校の建っている土地を買収するよう、フランクからせかされていました。力づくで校長にハンコを押させようと小学校に乗り込んだサンと手下たちでしたが、イップ・マンやその弟子たちに追い返されてしまいます。その後、放火や暴力などあらゆる手を使いまくるサンは、ついにイップ・マンの息子チンを誘拐し、イップ・マンに手を引かせようとします。サンの格闘技場で稼いでいたチョン・ティンチは、一時はサンに頼まれて仕方なく彼らの味方をしますが、サンの汚い手に怒り、イップ・マンと共に闘います。そして、イップ・マンはフランクと対決することになるのですが...。

 (c)2015 Pegasus Motion Pictures (Hong Kong) Ltd. All Rights Reserved.

前2作と同じく、イップ・マンの前に次々と現れる、敵との対決が見せ場になっています。上写真のマイク・タイソン演じるフランクとの対決はちょっと...なのですが、まあ、タイソンほどの人をコテンパンにやっつけるわけにもいかず、といったところでしょうか。その分、チョン・ティンチとの対決は、二人の最終対決以前に展開する様々な競い合いからして見応えがあります。チョン・ティンチを演じているマックス・チャンは山田孝之似の大眼美男子で、貧しい人力車引きでありながら、拳法の研鑽を続けている市井の武術家をシリアスな表情で演じています。ドニー・イェン演じるイップ・マンが春風駘蕩(たいとう)といったほんわか風情なら、マックス・チャン演じるチョン・ティンチは研ぎ澄まされた剣かしなやかなムチのような雰囲気。どの場面でも、この2人のからみ合いがビシッとした空気を醸し出していて、実に絵になります。

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1974年重慶市に生まれたマックス・チャンは9歳から武術を始めたとかで、全国武術大会で好成績をあげ、1998年に袁和平(ユエン・ウーピン)のスタントチーム「袁家班」に加わります。そう、今回の『イップ・マン 継承』のアクション監督はこのユエン・ウーピンなのです。マックス・チャンは袁家班のスタントマンとして、『グリーン・デスティニー』(2000)でスクリーン・デビュー。その後俳優やアクション監督としても映画に関わるようになり、2004年以降は俳優として活躍しています。『グランド・マスター』(2013)でも重要な役を演じて、香港電影金像奨の助演男優賞に輝いていましたね。『イップ・マン 継承』のパンフには、アクション監督の谷垣健治さんが書いた「イップ・マンとドニーをめぐるいろんな思い出」という楽しい一文があり、そこに『イップ・マン 継承』の撮影現場で撮られた、マックス・チャン、ユエン・ウーピン、ドニー・イェン、谷垣健治諸氏の集合写真があります。いいですねー、男たちの友情と師弟愛が伝わってきます。

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師弟愛と言えば、本作では冒頭に、イップ・マンに弟子入りしようとする李小龍(ブルース・リー)も登場します。演じているのはもちろん、トラック・スーツが似合うあの人、『少林サッカー』(2001)の炎のゴールキーパー役陳國坤(チャン・クォックワン)です。1959年と言うとブルース・リーは19歳ですから、もう渡米していたのではとも思われますが、細かいことは言いっこなし。イップ・マンとブルース・リーとのからみが見られるだけで、我々観客は満足するのです。ほかにも、田(ティン)師父役に梁家仁(レオン・カーヤン)、警官の肥波(太っちょポー)役に鄭則仕(ケント・チェン)、小学校の黄先生役に呉千語(カリーナ・ン)、校長役に劉以達(タツ・ラウ)、新聞記者役にほんのちょっとの出演ですが蔡瀚億(ベビージョン・チョイ)ら、豪華な面子が脇を固めています。予告編を付けておきます。

「イップ・マン 継承」予告編

それにしても、香港の人たちは広東の英雄と言えるイップ・マンが本当に好きですね。今年は1997年7月1日の香港返還(中国側から言うと「回帰」)から丸20年ですが、2008年の『イップ・マン 序章』から始まった怒濤の「イップ・マン・ブーム」は、返還後の香港人の不満をぜーんぶぶち込んだかのような盛り上がりでした。ドニー・イェン主演の3作品のほか、邱禮濤(ハーマン・ヤウ)監督による、杜宇航(デニス・トー)主演の『葉問前傳』(2010)と黄秋山(アンソニー・ウォン)主演の『イップ・マン 最終章(原題:葉問終極一戦)』(2013)と、実力派監督による連作が続きました。香港の人々にとっては、「中国から逃げてきた」「詠春拳の師父」「ブルース・リーの先生」というようなキーワードがグッと胸に響いたのかも知れません。返還直前に流行った「黄飛鴻(ウォン・フェイホン)」シリーズに通じる、「広東の英雄待望論」としてくくれるのでは、とか思ったりしています。

 (c)2015 Pegasus Motion Pictures (Hong Kong) Ltd. All Rights Reserved.

イップ・マン師父は1972年末に79歳で亡くなるので、もう1作ぐらいシリーズは作れるかも知れませんが、もしかしたら『イップ・マン 継承』がラストになるかも。イップ・マン・ファン、ドニー・イェン・ファン、中国武術ファン、アクション映画ファン、そして香港映画ファンの皆様は、絶対にお見逃しなく!!



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2 コメント

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よしだ まさし様 (cinetama)
2017-04-18 10:29:28
コメント、ありがとうございました。

『葉問4』の情報もありがとうございます。
そうなんですか~。
『イップ・マン 継承』を見た時思ったのは、「ドニーさんも顔に年齢が表れるようになったな~」ということで、もし『4』が製作されるとすれば、葉問師父の晩年活躍期がいい感じで演じられるかも知れません。
待つことにしましょう!
返信する
葉問4 (よしだ まさし)
2017-04-17 12:44:35
『イップ・マン 継承』楽しみです。今回は、絶対に日本語字幕付きで劇場公開してくれると信じてDVDを取り寄せなかったので、随分と待たされました。

ちなみに、『葉問4』はすでに製作が発表されていています。トニー・ジャーが出るという噂もあるようですが、はたしてどうなりますことやら。これまた楽しみです。
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