東京フィルメックスでは、8日間で17本もの映画を見たというのに、性懲りもなく昨日もまた、映画を見るためキネカ大森へ出かけました。この日の映画はテルグ語の『コムライヤ爺さんのお葬式』(2023)で、今年に入って本格的なインド映画公開に乗り出したテルグ語映画上映組織「インドエイガジャパン」による配給作品です。まずはチラシ画像と映画のデータをどうぞ。
『コムライヤ爺さんのお葬式』
2023年/テルグ語/129分/原題:Balagam(親族)/日本語字幕:内海千広
監督:ヴェーヌ・イェルダンディ
出演:プリヤダルシ、カーヴィヤ・カリヤーンラーム、コータ・ジャヤラーム、スダーカル・レッディ
配給:インドエイガジャパン
※11月15日(金)より、キネカ大森、シネリーブル池袋ほか全国順次公開中
上は入場時にもらったポスカです。え、公開半月なのにまだポスカが? と思ったのですが、もう一つの劇場からのプレゼント(後述)と共に、ありがたくいただきました。この日は映画の日で料金が1,000円だったせいもあってか、結構お客様が入っていました。とはいえ、3割ほどというところで、ラーム・チャランやNTR Jr.の主演作とはやはり集客力が違うようです。
物語は、村の名物じいさんであるコムライヤ(上写真)の行状から始まります。おしゃべりで、すぐ何にでも頭を突っ込んでくるし、厚かましくてスケベで口うるさく、人に愛される反面迷惑がられてもいるじいさんのコムライヤ。彼には家をついでいる長男と、他の町に住む次男、そして疎遠になっている娘がいました。長男の息子サーイル(プリヤダルシ)は、村にビリヤードなど新商売を持ち込んでは失敗する借金まみれの若者で、間もなく結婚するため、花嫁の持参金で借金を返そうともくろんでいます。ところが、元気いっぱいだったコムライヤ爺さんが突然亡くなってしまい、家族や村人はあわてふためき、大いに嘆き悲しみます。青くなったのはサーイルで、結婚延期なら花嫁の持参金も入らず、借金返済が果たせません。村から出ていた次男一家や、20年前の行き違いから疎遠になっていた娘一家もやってきてお葬式が執り行われますが、サーイルは婚約者の機嫌取りに夢中。お葬式と火葬はとどこおりなく終わったものの、その後の供養としてカラスに供物を捧げても、そのご馳走になぜかカラスは見向きもしません。このご馳走をカラスが食べてくれないと、コムライヤ爺さんの魂は成仏できないので、遺族だけでなく村全体が大騒ぎになってしまいます...。
この、亡き人の成仏を願って食事をカラスに食べさせる、という風習は、先日東京フィルメックスで上映されたインド映画『サントーシュ』(2024)にも出てきており、北インドでも南インドでも慣習となっている儀礼のようです。ただ、カラスは気まぐれなので、食べてくれるかどうかはカラス次第、ということで、本作ではカラスがなかなか食事に手を付けてくれなくて何日間にもわたる騒動になります。このトラブルと、コムライヤ爺さんの娘が20年前から実家に帰ってこなくなったトラブル――息子たちと娘婿との確執とが延々と描かれる物語で、針小棒大的ストーリーは見ていてちょっと疲れました。スター俳優も出ていないし、どうしてこの作品を? という疑問が膨らむ『コムライヤ爺さんのお葬式』でしたが、インドエイガジャパンはこの後「第2回テルコレ」も予定しているので、そちらはまた別途ご紹介することにします。
で、この日『コムライヤ爺さんのお葬式』を見に来ていたのが、大森にあるインド宮廷料理のレストラン「マシャール」のオーナーであるアリ三貴子さん(上写真)。この日の夜には、現在公開中のシャー・ルク・カーン主演作『JAWAN/ジャワーン』とコラボしたスペシャルディナー3種のうち、ヴィジャイ・セードゥパティのコースターがもらえる南インド料理を食べに行く、というので予約をお願いしていたのですが、その前に思わぬ邂逅ができて2人とも大喜び。こちらでもちょっと書きましたが、三貴子さんとは以前吉祥寺に住んでいた頃からの友人で、確か1990年前後に写真の現像を受け付けてくれるお店(当時はそういうものがあったんですよ~。デジカメの今では考えられませんけどね)でアルバイトしている三貴子さんと知り合い、その後彼女がインドに行ったりして私と友人たちが発行していた「インド通信」の会員になってくれて、ずっとお付き合いが続いたのでした。その後、パキスタン人のアリさんと結婚して、お子さんたちができてからも「インド通信」を通じてのお付き合いが続き、しばらくご無沙汰していたら、大森に立派なインド料理店「マシャール」を開いた、というわけで、この間別の友人と初めてランチしに行ったのでした。「マシャール」というのは松明(たいまつ)という意味で、1984年の同題の映画もあります。下がお店の外観と、その窓の一画です。お店のHPはこちらです。
で、今日いただいてきた「『JAWAN/ジャワーン』南インドスペシャルベジタリアンターリー/¥2,800円 ヴィジャイ・セードゥパティのコースター付き!」のディナーも、こちらでもご紹介したのですが、それぞれのメニューの個別紹介もちょっとしておきましょう。
ミニプレーンドーサ~これがターリー(お皿とかお盆の意味。ご飯とおかずの盛り合わせを入れる器を指すのですが、転じて「定食」という意味にもなったりします)で、真ん中にそびえているのがドーサーです。中に何も入っていないので「プレーンドーサー」と呼びます。まん丸のドーサーを焼いて、円の半径に一箇所切れ目を入れ、それでじょうご型にくるっと巻いてあるのですが、ベテランのコックさんでないと、こうはきれいに円錐形にはなりません。全体の面積としてはかなり大きいため、これだけでもお腹いっぱいになります。食べる時はドーサーをちぎって、サンバル(左手奥の野菜入りスープ)とチャトニー(その手前の四角いお皿2種。白い方がココナツチャトニーで、赤い方がトマトチャトニー)をつけて食べます。昨日はサンバルがあまり塩辛くなく、ちょっと物足りなかったのでお塩をもらいました。インド人にとっての”味”は、塩気が効いているかどうかが判断の基準となるのですが、日本人向けに塩味を薄くして下さっていたのでしょうか。
レモンライス~一番手前のがレモンライス。細長いインディカ米なのですが、実に上手に炒めてあって、さらさらと軽めなのにお腹に応えます。唐辛子がいっぱい入れてあり、取り出して食べたのですが、全体としては全然辛くはありませんでした。
サンバル~南インドのスープで、ドーサー、イドリー、ウッターパム、ワダーイーなど、スナックを食べる時にはサンバルとチャトニーが欠かせません。ナスや瓜など、いろんな野菜が煮込まれています。
ポリヤル~いわば南インド風の野菜炒め。でもマシャールのはすっごく上品な味で、いくらでも食べたくなります。いつか一度、ポリヤルだけを食べに行きたい私です。
トマトチャトニー&ココナッツチャトニー~これは最初にご説明したのでパス。ココナツチャトニーはインドでなら、わちゃっという感じで出てきて、かけまくって食べるのですが、日本だとココナツは結構値が張るので、少量でもしょうがないですね。
ワダイ&グリーンピースティッキー~どちらもスナックで、ワダイは「ワダー」または「ワラー」と言うことも多いです。太ったドーナツという感じで、このままチャトニーとサンバルをかけて食べたり、ヨーグルトにどっぷりと浸けて「ダヒー・ワダー」として食べたりします。右の「スティッキー」の方は、特にこれというスナックに与えられた名称ではないのでは、と思いますが、ここのお品では「お焼き」という感じですね。
スージーハルワ~食後の甘味、デザートです。スージーはセモリナ粉(ひきわり小麦とも。米や小麦、トウモロコシなどから作られる粉)のことで、このハルワーが私は一番好きです。ほかにはガージャル(にんじん)ハルワーも人気ですが、スージーの方が手間いらずなのと安価なのとで、ご家庭でもお鍋にいっぱいとかよく作られます。中にカシューナッツなどを入れ込むこともありますが、マシャールのスージーハルワーは上品な和菓子みたいな味でした。
そして最後は、キネカ大森でもらったチャイ無料券を使って、濃くておいしいチャイで締めました。ごちそうさまでした!
皆さんも、キネカ大森に映画を見にいらしたら、ぜひ前後にマシャールにお立ち寄り下さい。昨日は、『コムライヤ爺さんのお葬式』のほか、『花嫁はどこへ?』も上映中だったのですが、こちらにも結構観客の方がいらしてました。『花嫁はどこへ?』は10月4日公開ですから、もうすぐ2ヶ月のロングランですね。来年の松竹配給インド映画は『KILL』(原題)という血まみれ映画らしいのですが、『花嫁はどこへ?』のヒットに気を良くして、もう1本ぐらい買って下さらないかな、と思っています。ツイン配給の『カルキ 2898-AD』が1月3日から(公式サイト)、SPACEBOX配給の『ジェイラー』が2月21日から(公式サイト)と来年のラインアップも決まりつつあるので、今のうちに今年の公開作を全部見ておきましょう。ということで、シャー・ルク・カーンの『JAWAN/ジャワーン』(公式サイト)も「マシャール」のご馳走と共にどうぞよろしく。
シンプルにバスティマライスですかね
細長いお米うまそう!って思いました
amazonでタイ米は切らさないように買ってるんですが,インド料理店のこのもっと細長いのはまた違った味わいがありますね
1ヶ月くらい前に久々に新たにみたインド映画,
花嫁はどこに
わりとよくて,また私もみやすい作品あればって思っています
浅いボリウッドファンなのである程度洗練されていて,後味いいような作品がまた紹介されたら見に行こうって思います
きっとうまくいく
pk
シークレットスーパースター
きっと強くなる
スルターン(アヌシュカ・シャルマのではなくて最近別作品もあるようですね)
あたりの感じのライトな初心者でも楽しめる作品の紹介また期待しています!
もうアラカンになってしまいましたが,
若い時にヨーロッパやタイくらいじゃなくて,インド行っておけばよかったなあと思う昨今です
先生のように私より上の世代でインド映画紹介されているのはほんとリスペクトのみです
文章もへんなねじれもクセもなくて,やはりその年代で大学まで卒業されているというのはやはりそういうものだなって感じます
ではまたたまに読みに来ますね!
インド料理ネタに食いついて下さり、ありがとうございます(笑)。
バースマティ・ライスもいろいろあるようで、昨年近所のインド食材店で買ったバースマティは、すごくりっぱな長尺種で、さすがの私も「手強いなあ。タイ米の方がいいわ」と思ったぐらいです。
タイ米はアメ横センターの食材店に買いに行くのですが、1㎏入りの袋があって、ありがたいです。
5㎏のはなかなかなくなりませんからね。
”先生のように私より上の世代でインド映画紹介されているのはほんとリスペクトのみです
文章もへんなねじれもクセもなくて,やはりその年代で大学まで卒業されているというのはやはりそういうものだなって感じます”
という部分ですが、私たちは戦後のベビーブーマー世代なので、大学進学当たり前、という世代だったのではと思います。
”その世代で大学卒業”という言い方ができるのは、私の父母世代=明治生まれの世代ではないかと思います。
私の家は父が医師だったので当然大卒、母も樟蔭女学院の女専(今の短大に当たる?)を出ているので、大学に行くのは男児女児とも当たり前、という家庭でした。
母がたまに自慢していたのは、母の母がお茶の水女高師(今のお茶大の女子高等師範)を出ている、ということで、確かに明治の中期生まれの女性が大学に行くのは珍しかったんだろうと思います。
というわけで、naokiさんのご文章を読んで、ちょっと時代錯誤では、戦後生まれの世代は大卒なんて標準装備だけどなあ、と思った次第です。
私の場合は、大学で学んだヒンディー語の恩恵をフルに受けているのですが、大学では「勉強のやり方」を学んだ、という意識も強いです。
今の大学や高専で学ぶ皆さんも、いくつになっても役に立つ「勉強のやり方」を憶えて卒業してほしいですね。