アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

インド映画@日本2023年の収穫

2023-12-30 | インド映画

2023年もあと少しになりました。大掃除も終わり、やっと映画を見る時間もできました。今年は、昨年から続く『RRR』のヒットのお陰でお仕事が次々と入ってきて、ありがたいけど忙しくてつらい、という1年でした。お仕事に付随する種々の連絡メールを書くのもグズな私には大仕事で、毎晩2時、3時までパソコンに向かっていた日が多かったため、お肌は曲がり角を曲がったどころか曲がり切りすぎて、もう取り返しがつかない状態に。まあ、しょうがないか、もうすぐ後期高齢者ですからね。そんな今年ですが、私にとっての「インド映画@日本」に関する大きな収穫が3つありました。それを簡単に書いておこうと思います。

①書籍:山田桂子+山田タボシ著「RRRをめぐる対話 大ヒットのインド映画を読み解く」(PICK UP PRESS)が出版されたこと

この本の評価できる点はいくつもありますが、何よりも、1本の映画全編について、これほど詳しく解説し、分析した本は、外国映画に関してはなかったのではないか、と思います。映画の舞台となる土地の地図と登場人物たちのキャラクター紹介に始まって、「地理的設定」「時代背景」「物語と登場人物」とインドをある程度知っている私でもすごく勉強になる解説が続き、後半は「植民地支配への『怒り』」「叙事詩になぞらえたふたつの『戦い』」「『血』は正義」、そして最終章の「友情と絆の物語」に至るまで、映画の各場面をツルハシで掘っている気分になってしまうような解説がぎっしりで、読み応えとはこのことか、と思う各ページでした。しかも、それを対話形式にしてあるのでとても読みやすく、時には「(笑)」マークが入るような軽妙な掛け合いにもなっていて、スムーズに読み進められます。著者のお二人、特に山田桂子さんが映画を実に丁寧に見ていることにも感心させられますが、映画を何十回と見た人でも、「そこは気がつかなかった!」という箇所があるのではと思い、学者の目のすごさに舌を巻く思いです。歴史学者ならではの視点が随所に生きているのですが、それを平易な言葉で語ってくれているところもありがたく、特に最終章にある元アーンドラ・プラデーシュ州が現在アーンドラ・プラデーシュ州とテランガーナ州とに分かれている件の解説は、これまでの浅い理解が深まった思いがしました。文中には、映画での該当箇所を示すタイムラインも出ているので、この本を片手にぜひ『RRR』のソフトを見てみたいものですが、まだ発売の案内がAmazonに出てきませんね。首を長くして待っている私です。

②シャー・ルク・カーン主演作が久々に日本で公開! 『PATHAAN/パターン』で『ブラフマーストラ』のイケおじが全貌を現したこと

シャー・ルク・カーンの主演作公開は、インドでも4年ぶりだったのですが、日本では何と何と10年ぶり! 2013年4月に公開された『闇の帝王DON ベルリン強奪作戦』(2011)以来ですからねー。『ブラフマーストラ』(2022)を見た人が、「あのイケおじは誰?」と言うはずです。『PATHAAN/パターン』はこう言っては何ですが、「フツー」の出来の映画だったので、日本の観客にとってはそれほどインパクトがなかったのですが、反対にインドでは「フツー」であるがゆえに観客は大いに楽しみ、サルマーン・カーンのタイガー出現にも大沸きした、という結果になったのでした。日本の観客にもう一歩進んでシャー・ルク・ファンになってもらうためには、『JAWAN(兵士)』(2023)の公開でしょうか。来年に期待したいと思います。

© Yash Raj Films Pvt. Ltd., 2023. All Rights Reserved.

③インド映画研究会が発足したこと

これは仲間うちでの活動なのですが、2022年12月に日本映像学会傘下のアジア映画研究会で拓徹さんと高倉嘉男さんが研究発表をしてくれたのをきっかけに、インド映画研究をしている人たちだけが集まり、さらに詳しい話を聞いていろいろと質疑応答をしていこう、というわけで、本年1月から奇数月にインド映画研究会を実施することになりました。まだメンバーは20人足らずなのですが、今年の研究発表はいずれも面白く、お互い意見も忌憚なく言えて、私にとっては楽しい勉強会が始まった、という感じです。今年の発表一覧を書いておきます。

第1回:1月28日(土) 高倉嘉男:「『~ウッド』の終焉 『インド映画』の誕生」を再考する
第2回:3月25日(土) 拓徹:「インド映画黎明期の作家P.C. バルアー:その再評価に向けて 」を再考する
第3回:5月27日(土) 藤井美佳:非英語圏の映画翻訳について
第4回:7月29日(土) 森長恵梨:サタジット・レイの映画観を再考する
第5回:9月30日(土) 安宅直子:第3次インド映画ブームとオタク、推し活
第6回:11月18日(土) 村上梨緒:『Chandigarh Kare Aashiqui(チャンディーガルで恋して)』から見るインドのLGBTQの現在

メンバーの条件は、仲間に加わった後研究発表をする、ということだけです。もし、メンバーになって下さる方がいらしたら、コメント欄へご連絡先と簡単な自己紹介を送って下さるようお願い致します。その後ご連絡先にこちらからメールしますので、よろしくお願い致します。

というわけで大収穫の2023年でした。2024年もいいことがいっぱいありますように!


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