明日からいよいよ7月。6月はインド映画の字幕をやっていたせいか、すごく長かったように感じましたが、7月にはその作品『ニュー・クラスメイト』も映画祭上映されます。その映画祭、<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016>はこちらで簡単に紹介していますが、今日はもうちょっと詳しく、『ニュー・クラスメイト』をご紹介しましょう。まずは、基本データからどうぞ。
『ニュー・クラスメイト』 ※ジャパン・プレミア 公式紹介サイト
2015年/インド/ヒンディー語/96分/原題:Nil Battey Sannata/英語題名:The New Classmate
監督:アシュヴィニー・アイヤル・ティワーリー
出演:スワラー・バースカル、リヤー・シュクラー、ラトナー・パータク・シャー、パンカジ・トリパーティー
(C)Films Boutique
物語の舞台は、タージ・マハルのある町アグラ(アーグラー)。主人公は、メイド(ヒンディー語では「バーイー」)として働いているチャンダー・サハーイー(スワラー・バースカル)と、その娘アペークシャー(リヤー・シュクラー)です。「アペークシャー」とは「期待」という意味なのですが、「希望」にも通じるところがあるため、この名前を日本語に翻訳すると「希美(のぞみ)」ちゃん、という感じでしょうか。「アペークシャー」は呼ぶのには長いので、母チャンダーはいつも「アップー」と愛称で呼んでいます。映画は、このアップーが10年生となった始業式の朝から始まります。
10年生というのはインドではとても大切な学年で、これを修了して最後にある「Board Exam(全国共通試験)」を受けることで、高等教育、つまり大学に行く道が開けるのです。中流以上の生活をしようと思ったら、10年生を修了できずにドロップアウト、ではまず無理。母親のチャンダーは、9年生は終えたのですが10年生で挫折してしまい、落第となったクチでした。
チャンダーがメイドとして働いているのは、女医ドクター・ディーワーン(ラトナー・パータク・シャー)の家です。映画では詳しく説明されていませんが、ドクター・ディーワーンは今は医師生活から引退しているものの、町の名士のようで、人々から尊敬されています。しかしながら、ご本人はちょっと素っ頓狂なところがある、とても気さくな女性です。チャンダーは彼女を「ディーディー(お姉さん/メイドは近しい女主人に対してはこの呼び方をすることが多いようです)」と呼び、何でも相談しています。ドクター・ディーワーンのご主人も理解のあるいい人で、チャンダーはいい家庭で働いていると言えますが、そのお給料だけでは生活が大変なのか、さらにスパイス工場と靴工場でもパートをしています。
こうして、生活費と娘アップーの学費を捻出していたチャンダーですが、ある日アップーの発言でショックを受けることに。「将来何になりたいの?」と聞いたチャンダーに対し、アップーは「メイド」と答えるのです。アップーに言わせると、「医者の子は医者、エンジニアの子はエンジニア、だからメイドの子はメイドに決まってるじゃん」という論理なのですが、娘には勉強して立派な人になってもらいたい、と思って無理を重ねていたチャンダーには大ショックでした。おまけに、アップーの数学の成績が見るも無惨なことを知ったチャンダーは、頭を抱えてしまいます。それをドクター・ディーワーンに相談したところ、とんでもないアイディアが出てきてしまい....。
(C)Films Boutique
という風に書いていくと、「ニュー・クラスメイト」が誰になるかおわかりでしょう。この学校のシーンでは、魅力的なキャラクターが何人も加わって、なかなかに見応えのあるシーンが形作られています。まず、始業式のシーンから観客の目を奪うシュリーワースタウ校長先生(パンカジ・トリパーティー)。『血の抗争』(2012)の血なまぐさいスルターン・クレイシー役とはガラッと違う愉快な校長先生を、パンカジ・トリパーティーが好演しています。数学担当の先生としてのシーンも面白く、愛すべき演技が楽しめます。
そして、アップーのクラスメイトたちも、ハマリ役のキャスティングです。アップーと同じ落ちこぼれ組の男子生徒ピントゥー(プラシャーント・ティワーリー)に、かわいい女子生徒スィーティー(ネーハー・プラジャーパティ)、そして、優等生のアマル(ヴィシャール・ナート)。いずれも自然な演技で、お話にリアリティを持たせてくれます。特に「数学と友達になってみろよ。面白い奴だぜ」と言ったりするアマルは、最後に意外な面も見せてくれ、思わずハグしたくなってしまうこと請け合いです。
もちろん、主人公2人とベテラン女優のラトナー・パータク・シャーの演技が本作の柱ですが、こういった多彩な脇役が映画の奥行きを広げてくれて、何度見ても見飽きない作品に昇華させています。かわいいご都合主義もあったりするものの、女子教育、さらには学校教育全体について、カースト制度や貧富の差なども溶かし込みながら描いていく佳作です。前にもアップしましたが、もう一度予告編をどうぞ。
Nil Battey Sannata Official Trailer with Subtitle | Swara Bhaskar, Ratna Pathak
そして、この映画のタミル語版リメイク作品が、現在インドでは公開中。もともと、ヒンディー語版と共に、アシュヴィニー・アイヤル・ティワーリー監督の母語であるタミル語での製作も企画されていたようで、二言語製作と言ってもいいようです。タミル語版のタイトルは『Amma Kanakku』で、「お母さん、数学する」というような意味なのでしょうか(タミル語がお出来になる方、教えて下さい)。こちらのお母さん役は、何と『神さまがくれた娘』(2011)で大金持ちの娘を演じていたアマラー・ポール。そして、『マルガリータで乾杯を!』(2014)の母親役レーヴァティが、「ディーディー(タミル語だと何と呼んでいるのでしょう?)」役を演じています。こちらの予告編も付けておきます。
Amma Kanakku - Official Trailer | Amala Paul, Samuthirakani | Ilaiyaraaja | Ashwiny Iyer Tiwari
日本での公開も実現しないかな、 と思い、女性映画の公開に実績がある配給会社さんにお声を掛けているのですが、もし興味をお持ちの配給会社さんがいらっしゃいましたら、ぜひお見逃しなく。上映は次の2回です。
7月17日(日)14:00~ SKIPシティ映像ホール
7月20日(水)11:00~ SKIPシティ多目的ホール
詳細は映画祭のHPでどうぞ。ご覧になった方は、このページにコメントなどお寄せ下さいね。2週間先ですが、お待ちしています。
でも、7/17は用事があって行けないんです。SKIPシティ、自宅から自転車でも行ける距離なのに。
7/20に休みが取れるかなあ。
ほんとに、お近くですのに日曜日がダメとは残念ですね。
かといって、年休を取って見ていただくほどの世紀の大傑作かどうかというと....。
でも、アップー役のリヤー・シュクラーの演技などたいしたもので、かわいくない女子中学生を見事に出現させてくれています。
監督が来てQ&Aしてくれるようなら、水曜日のご鑑賞をご一考下さい。
「ニュー・クラスメイト」初回上映、見てきました!
ギリギリ着でかなり前の席で見ましたが、場内ほぼ満席、
上映後のQ&Aでも好意的な感想が多くて、泣いてしまったという方もおられました。
特に最初の娘を起こすシーンで、お母さんがわりと男っぽい言葉遣いで訳されていて、
これは母子2人の家庭であることや、お母さん女優の声が低めなことからの判断かな? なんて思いました。
Q&Aはプロデューサーが来日されて対応されてました。
インド国内上映では群舞シーンがあったのが国際版ではカットしたそうです。
もし日本で公開されたら、フルバージョンで公開してほしいものです!
記事をアップした時のお願いを聞いて下さり、大感謝です!
たくさんの方がSKIPシティまで足を運んで下さったと知って、とてもありがたく思っています。
お母さんと娘の会話をぞんざいな言い方にしたのは、ヒンディー語での言い方のうち、一番敬語度が低い言い方をしているからです。
これは、親しさを表す言い方でもあるのですが、お母さんのこれまでの苦労もほの見えるような、ぞんざいさと親密さが混じった言い方にしてみました。
他の人と接する時はちょっと変えてありますので、それはおわかりいただけたと思います。
お母さん役の女優さんの声が低め、というのには気がつきませんでした。
群舞シーンは数学の歌かと思いますが、あれは入った方がいいのか悪いのか....。
日本公開が決まったら、配給会社さんのご判断になると思います。
とその前に、まずどこかが買って下さるといいんですけど、今日の好評ぶりがいい判断材料になるかも知れませんね。
なるほど、敬語の程度が違うんですね。
別な深読みをしました。
国際版で群舞をカットしたのは、「文化的な違いがあるから」というような理由を答えられてましたが、
確かにあの映画の内容だとあまり必要ないかもですね。
日本公開も、コテコテのインド映画と、そうじゃないインド映画、
幅が広くなってきてますます面白いですね。
ちなみに、本国ではこの作品はシネコン数カ所で上映されて、料金が高いせいもあり、中間層~ハイクラスの観客が多かったようだとのことでした。
新たな情報をいろいろ教えて下さって、ありがとうございます。
この映画の歌としては、YouTubeにアップされているのが2曲あるのですが、実際の映像は違っていたのでは、と思います。
(ダイジェスト映像が付けてある感じです)
https://www.youtube.com/watch?v=Ooi7g1ML1Bo
https://www.youtube.com/watch?v=YVaA-gyLWBo
2曲目は、BGMに使われたっぽい曲ですね。
興収はWikiによると、6週間上映されて6900万ルピー(1億2千万円ぐらい)とのことなので、健闘したと言えるのではないかと思います。
日本でも、買って下さるところがあるといいですねー。(kればっかり)