アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

まだまだ続くドニーさん祭り(下)

2011-07-10 | 香港映画

前回に引き続き、日本公開を待つドニー・イェン作品のご紹介です。

そしていよいよ、9月17日には真打ちの陳真が登場! 原題を「精武風雲・陳真(英語題名:Legend of the Fist/ The Return of Chen Zhen)」という、劉偉強(アンドリュー・ラウ)監督の『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』 (2010)です。まず、映画のデータをご紹介。

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『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』

【2010年/中国/カラー/105分/字幕翻訳:寺尾次郎】

© 2010  Media Asia Films (BVI) Ltd.  Beijing Enlight Pictures Ltd.  All Rights Reserved

<スタッフ>
  監督:劉偉強(アンドリュー・ラウ)
  プロデューサー:陳嘉上(ゴードン・チャン)
  撮影:アンドリュー・ラウ、伍文拯(ン・マンチン)
  アクション監督:甄子丹(ドニー・イェン)
  武術指導:谷垣健治

<キャスト>
  陳真(チェン・ジェン):ドニー・イェン
  キキ(「カサブランカ」歌手):舒淇(スーチー)
  日本軍人佐々木:AKIRA(EXILE)
  「カサブランカ」オーナー:黄秋生(アンソニー・ウォン)
  曾将軍:余文樂(ショーン・ユー)
  力石剛:倉田保明
  ホアン警部:黄渤(ホアン・ボー)
  力石大佐(力石剛の息子):木幡竜

9月17日(土)より新宿武蔵野館、立川シネマシティにてロードショー
シネマート心斎橋、他全国順次公開

提供・配給:ツイン/配給協力:太秦/公式HPはこちら

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そう、陳真と言えば李小龍(ブルース・リー)主演の『ドラゴン怒りの鉄拳』 (1971)の主人公ですね。『ドラゴン怒りの鉄拳』の原題は「精武門」(英語題名:Fist of Fury)なので、映画のタイトルに「精武」と付けば皆ビビッとこの元ネタを連想します。今回は、中国語原題、英語原題、そして日本語タイトルすべてがこの元ネタ映画を向いていることからもわかるように、『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』『ドラゴン怒りの鉄拳』の続編というか、後日譚になっているのです。

『ドラゴン怒りの鉄拳』では、最後に警官の一斉射撃を浴びた陳真が飛び上がったところでストップモーションになり、そこで映画が終わるのですが、あそこで陳真は死なず、生き延びてヨーロッパで第一次世界大戦に参加していた、というのが『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』のプロローグ。中国人の参戦は実際にあったことだそうで、1914年から始まった第一次世界大戦中、フランスとイギリスは第三世界から兵士をリクルート、中国人が多数徴用されて参戦していたのだそうです。この冒頭シーンは記録映画映像かと見まごう処理がしてあり、さらに戦闘シーンで早くもドニーさんの超絶アクションが披露され、一気に映画に引き込まれます。

次に舞台は1925年の上海へ。豪華なナイトクラブ「カサブランカ」では、歌姫キキがハスキーな歌声を披露し、オーナー劉が仕立てのいい長衫姿で葉巻をくゆらせています。欧米人や中国人富裕層が集う中に日本軍人が姿を現し、日本の歌を歌えと無理難題。歌い始めたキキでしたが、その時あざやかなピアノのアレンジで曲が「インターナショナル」に変わります....。変身した陳真、格好良すぎる再登場です。この口ひげドニーさん、これまでにない”おじさま”味で、これがなかなか。

2010  Media Asia Films (BVI) Ltd.  Beijing Enlight Pictures Ltd.  All Rights Reserved

日本軍は反日中国人リストを作成、次々と殺害を実行していきます。陳真は、時にはショウウインドーに飾ってあったヒット映画『仮面の戦士』のコスチュームを盗んで変身し、日本軍から狙われた人々を守ろうとします。出ました、「グリーン・ホーネット」のコスプレですよ~。ラストの対決は白い中山服(最初の写真)ですし、こういう『ドラゴン怒りの鉄拳』のアイコンが随所に散りばめられているので、ブルース・リー・ファンにはたまらないことでしょう。

2010  Media Asia Films (BVI) Ltd.  Beijing Enlight Pictures Ltd.  All Rights Reserved

しかしながら、日本軍は指揮官力石大佐以下、佐々木らがブラックリストに載せた反日中国人を次々と毒牙に。EXILEのAKIRAも、佐々木役で殺手(殺し屋)の雰囲気満点。

 2010  Media Asia Films (BVI) Ltd.  Beijing Enlight Pictures Ltd.  All Rights Reserved

地元警察のホアン警部は、トラブルからは逃げ腰の臆病者かと思いきや、ヘラヘラしつつもしっかり中国人魂を見せてくれます。『クレイジー・ストーン ~翡翠協奏曲~』 (2007)や『爆走自転車』 (2009)、『浮かれたゴミ屋さん』 (2009)等で達者なコメディ演技を見せてくれたホアン・ボー、この映画でもコメディ・リリーフだけかと思ったら、目の覚めるような見せ場が用意されているのです。清水圭に激似のあの顔にもだんだんと貫禄がついてきて、あんたは刑事コロンボか、と思うようないい味が出ています。アンソニー・ウォンにも、葉巻くゆらせてるだけやおまへんで~的見せ場があり、ドニーさん始めこのおじさんトリオが何とも魅力的でこたえられません。

せっかくですので、スーチーとこの3人が写っている、香港版VCDカバーを出しておきましょう。

 

そのおじさんたちといい勝負をしているのが、日本軍のリーダー力石大佐役の木幡竜。この人は陸川(ルー・チュアン)監督の『南京!南京!』 (2009)で主人公の日本軍兵士角川の上官役を演じて注目された人ですが、外見はあまり強そうに見えないのに、なんか不気味~、という雰囲気を持っている人です。プレスによると、ボクサーとして活躍後俳優に転身したとのことで、油断ならない雰囲気とアクションのうまさもそれで納得。だから役名を「力石(ただし、”徹”ではなく”毅”)」にしたのかな? アンドリュー・ラウ監督、日本の漫画の読み過ぎかも知れません。

余談ながら、この木幡さん、どことなーく長友選手に似ているのです。というわけで、クライマックスの日本人道場での陳真と力石の対決は、「長友結構強いぞ! 長谷部危うし!」とかつぶやきながら見ていたのでした。サッカーファンの皆さん、ごめんなさい。

一番最後のシーンにもオチがあります。アンドリュー・ラウ監督、この人物と陳真の対決を構想中なのでしょうか? それなら、彼女にジージャーなんていうキャスティングもアリでは? ドニーさんVS.ジージャー、一度見てみたいものですね。

 


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2 コメント

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続編あり? (アハマド)
2011-07-13 10:21:39
昨晩DVDで見ました。冒頭のシーンは素晴らしくて映画の世界にすぐ引き込まれましたが、ちょっと脚本が弱いかなあという気もしました。

あれこれ書くとネタばれになりそうなので控えますが、二つほど。力石大佐はチカライシとの字幕にズッコケ。そしてラストのオチにはニヤリ。何回も映画化されているように、中国人としてもあの人物には非常に関心があるんですね。ジージャー、いいんじゃないでしょうか!
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アハマド様 (cinetama)
2011-07-13 10:44:00
コメント、ありがとうごさいました。

「力石」は「Chikaraishi」と字幕が出たのですか? 字数も増えるのに...。劇中に音で「リキイシ」とは出てきませんでしたかねー。

なお、力石を演じた木幡竜さんのお名前は、「コハタ リュウ」と読むそうです。入力時「キバタ」で変換していた私です....。
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