『ミッション・マンガル』なので、何とか「マンガル(火曜日)」にはアップしようと思っていたのですが、今週も果たせずじまい。前にも書きましたが、火曜日は「मंगरवार (マンガルワール)」と言います。順番に書くと、日曜日「रविवार(ラヴィワール)」、月曜日「सोमवार(ソームワール)」、火曜日「मंगलवार(マンガルワール)」、水曜日「बुधवार(ブドワール)」、木曜日「बृहस्पतिवार(ブリハスパティワール)」または「गुरुवार(グルワール)」、金曜日「शुक्रवार(シュクラワール)」、土曜日「शनिवार (シャニワール)」または「सनीचर(サニーチャル)」となります。それぞれの曜日の名前から「~ワール」を取ったのが、天体の名前となります。え、月は「ソーム」なの? 「チャーンド」じゃないの? と思われる方もあるかと思いますが、「चाँद(チャーンド)」も「चंद्रमा(チャンドラマー)」も同じく月のことを指します。ヒンディー語は、同じ曜日の言い方もいろいろあったりするように、バラエティに富んでいるんですね。
『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打ち上げ計画』 公式サイト
2019年/インド/ヒンディー語/130分/原題:Mission Mangal/字幕:井出裕子
監督:ジャガン・シャクティ
出演:アクシャイ・クマール、ヴィディヤ・バラン(ヴィディヤー・バーラン)、タープスィー・パンヌー、ソーナークシー・シンハー、クリティ・クルハーリー(キールティ・クルハリ?)、シャルマン・ジョシ(ジョーシー)
配給:アット エンタテインメント
※1月8日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次公開
© 2019 FOX STAR STUDIOS A DIVISION OF STAR INDIA PRIVATE
LIMITED AND CAPE OF GOOD FILMS LLP, ALL RIGHTS RESERVED.
さて、本日のミッションは、主演である男優アクシャイ・クマールのパワー分析です。『ミッション・マンガル』では、火星探査ロケットを飛ばすミッションの責任者ラケーシュ役。これが熱血チーム長では全然なくて、何かぬるい感じのおじさんなんですが、ビシッと1本筋が通っているところが「いいね!」と押したくなる上司なんですね。冒頭にある別ミッションのロケット発射失敗でも、小さな齟齬を無視して「自分の受け持ちはOKです」と判断してしまったタラ(ヴィディヤ・バラン)を責めず、「私の責任だ」とマスコミとの会見で謝るという、今の世間ではまずお目にかからないタイプの男性です。こんな上司、日本はもちろん、特にインドではぜーったいに見つかりませんよ。(インドの偉いお役人の無責任ぶりには、何度泣かされたことか)
© 2019 FOX STAR STUDIOS A DIVISION OF STAR INDIA PRIVATE
LIMITED AND CAPE OF GOOD FILMS LLP, ALL RIGHTS RESERVED.
普段は鼻歌を歌い(この歌が、何を歌っているんだか聞き取れない。フィルムソングでしょうか?)、前述の会見前にもお菓子をつまむ(成功した時にみんなが口に入れて祝うために、バルフィーか何かのお菓子が用意してあるんですね)などの行儀の悪さを見せるラケーシュですが、頑固に自分の信念を貫くヒーロー性もあって、部下からは絶大な信頼を寄せられる人物として描かれます。そして、ちゃらんぽらんに見えながら、冷静に物事を判断する頭の良さと心の温かさとを兼ね備えている、というキャラが、アクシャイ・クマールにはぴったりなんですね。これが、同世代の主役級スターの中で、アクシャイ・クマールに次々とオファーが来ている秘密とも言えます。1967年9月9日生まれのアクシャイ・クマールは現在53歳。3人のカーン、つまりアーミル・カーン(1965年3月14日生まれ)、シャー・ルク・カーン(1965年11月2日生まれ)、サルマーン・カーン(1965年12月27日生まれ)とほぼ同年代と言ってよく、これまではこの3人の活躍の影になって、二級とは言いませんが一級スターよりちょっと下に見られていたアクシャイ・クマールなんですが、2010年代に入って、一挙に存在感が増しました。
© 2019 FOX STAR STUDIOS A DIVISION OF STAR INDIA PRIVATE
LIMITED AND CAPE OF GOOD FILMS LLP, ALL RIGHTS RESERVED.
日本の皆様には、『パッドマン 5億人の女性を救った男』(2018)でお馴染みのアクシャイ・クマール。他に日本公開作品では、主演作では『KESARI/ケサリ』(2019)と『チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ~印度から中国へ~』(2009)、準主演作では『ロボット2.0』(2018)、そしてカメオ出演作では『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』(2007)があります。また、DVDスルー作品では、『スタローンinハリウッド・トラブル』(2009)も見られます。アクシャイ・クマールは1991年に『Saugandh(誓い)』でデビューしており、すでに150本近い作品に出演していますが、彼のスター歴は大体3つの時期に分けられます。最初は「キラーリー(khiradi)期」で、1992年の『Khiradi(戦士、ゲームをする人などの意味)』から始まって、「キラーリー」がタイトルについた作品が何本も作られました。気が良くて向こう見ずな主人公が織りなすアクション&コメディが、当時の観客に支持されたのです。そして次は、「バディ・コメディ期」とでも言えばいいのか、複数の主人公が活躍するドタバタコメディ作品が支持されました。スニール・シェーッティーとのペアにパレーシュ・ラーワルが加わったコメディ『Hera Pheri(ドタバタ)』(2000)をきっかけに、このシリーズや「Housefull」シリーズが生まれて人気を呼びます。そして第3期が「実録もの期」とでも呼べる、実在した主人公を演じる作品が続く現在です。
© 2019 FOX STAR STUDIOS A DIVISION OF STAR INDIA PRIVATE
LIMITED AND CAPE OF GOOD FILMS LLP, ALL RIGHTS RESERVED.
『ミッション・マンガル』も、そして『パッドマン』や『KESARI/ケサリ』も、すべて実在の人物がモデルになっている作品です。ほかにも、日本で映画祭上映された『エアリフト~緊急空輸~』(2016)など、多くの実録もの作品にアクシャイ・クマールは次々と起用されていきます。それまでは、非現実的な夢のヒーローが好まれたボリウッド映画が、地に足がついた主人公を好むようになった、つまりは観客がそういうヒーロー像を要求するようになったのが、アクシャイ・クマールの魅力とパワーを開花させたのです。そのあたりを、ぜひ『ミッション・マンガル』でご確認下さい。予告編からもアクシャイ・クマールの魅力の一端がわかりますが、私が一番好きなのは彼の笑顔と少々かすれた声。昔は、何て深みのない声なんだ、役者としては失格ね、などと思っていたこの声ですが、今となってみると主人公の実在感を出すのに大きく貢献しています。さて、あなたのご意見は? 『ミッション・マンガル』公開前でも、いろいろご意見をお寄せ下さい。
『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』予告