アジア映画巡礼

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『おじいちゃんはデブゴン』でサモ・ハン監督復活!

2017-03-31 | 香港映画

「サモ・ハン is BACK !」というマーク付きで、2本の作品が公開されます。

サモ・ハンことサモ・ハン・キンポー、漢字で書けば洪金寶(「サモ」はあだ名で「三毛」のこと)も、1952年1月7日生まれなのでもう65歳。最近は年に1本ぐらいの割合で映画出演やアクション監督をしているのですが、2016年は20年ぶりに監督した『おじいちゃんはデブゴン』(香港公開題名『特工爺爺』、中国公開題名『我的特工爺爺』)と、アクション監督の『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』(原題『危城』)という出演作が重なり、日本では続けての公開となった模様です。今回は、まずは『おじいちゃんはデブゴン』をご紹介しましょう。

『おじいちゃんはデブゴン』  公式サイト

2016年/中国・香港/広東語/99分/原題:特工爺爺(我的特工爺爺)/英語題:The Bodyguard

 監督・アクション監督:洪金寶(サモ・ハン)
 主演:洪金寶(サモ・ハン)、陳沛妍(ジャクリーン・チャン)、劉徳華(アンディ・ラウ)、馮嘉怡(フォン・ジャーイー)、李勤勤(リー・チンチン)、朱雨辰(チュー・ユーチェン)
 ゲスト出演:元彪(ユン・ピョウ)、元華(ユン・ワー)、元秋(ユン・チウ)、徐克(ツイ・ハーク)、石天(ディーン・セキ)、麥嘉(カール・マッカ)、胡軍(フー・ジュン)、馮紹峰(ウィリアム・フォン)、彭于晏(エディ・ポン)

 配給:ツイン

5月27日(土)より新宿武蔵野館、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー

©2016 Irresistible Alpha Limited,Edko Films Limited,Focus Films Limited,

Good Friends Entertainment Sdn Bhd. All Rights Reserved.

お話の舞台は、中国北東部の黒龍江省にある、ロシアとの国境に近い町。かつては北京にある人民解放軍の中央警衛局で、要人のボディガードとして活躍していた丁/ディン(サモ・ハン)は、リタイア後この町に住みつき、おせっかいな大家さんである朝鮮族の女性朴/ポクおばさん(リー・チンチン)に悩まされながらも、独り暮らしを続けていました。ディンの所には、近所に住む賭け事好きの男李政久/レイ・ジンガウ(アンディ・ラウ)の一人娘春花/チュンファ(ジャクリーン・チャン)がよく勝手に窓から入ってやってきていましたが、チュンファはディンに対してまるで実の孫のようにふるまい、その遠慮のなさに心慰められるディンでした。特に最近、物忘れがひどくなって医者(ウィリアム・フォン)に診てもらっていたりするディンにとっては、チュンファは心強い相棒でした。ところが、チュンファの父レイ・ジンガウがばくちの借金のカタとして、ロシアに行ってある物を盗み出してくるよう、ヤクザのボスである崔/チョイ(フォン・ジャーイー)に命じられます。そこから、ディンとチュンファの人生の歯車が大きく狂っていくことになります...。

 ©2016 Irresistible Alpha Limited,Edko Films Limited,Focus Films Limited,

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冒頭、サモ・ハン演じるディンが、体はデカいものの実に穏やかな老人として登場、さらに認知症気味の様子をいろいろ見せてくれることに、見る人は違和感を覚えるかも知れません。おまけに上の写真のような体型なので、動きにも機敏さがなく、これがあのサモ・ハン? と目を疑ってしまいます。孫娘的存在のチュンファにタメ口をきかれるような、幼児返りしたおじいちゃんをサモ・ハンが悠々と演じているのはちょっとした見もので、つい『ファースト・ミッション』(1985)を思い出してしまいました。それを補うかのように、前半はレイ・ジンガウ役のアンディ・ラウが30年前に戻ったかのようなチンピラ役を演じ、あれこれやってくれます。そして後半には、もちろん覚醒した大哥大(サモ・ハンのあだ名)のアクションの出番が待っている、というわけです。

  ©2016 Irresistible Alpha Limited,Edko Films Limited,Focus Films Limited,

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ただ、このアクション・シーンも、ディンが途中で息切れしたりと、かなりリアリズム寄り。こういうリアルなアクション、しかも老齢に入った自分がそれを意識しながら演じてみせるアクション作品を、サモ・ハンは一度撮ってみたかったのかも知れません。他のアクション・シーンも結構リアルで、それだけに残酷に思われるシーンもあって、そのためか<R15+>指定がついてしまいました。小学生の女の子が準主役なのに、中学生以下は見に行けないとは残念ですね。そういう少々残酷な描写の穴埋めをするかのように、実に多彩なゲストがあちこちに出演していて、香港映画好きをなごませてくれます。上に「ゲスト出演」として名前を挙げた人たちの中で、ウィリアム・フォンだけは出番をバラしてしまいましたが、あとの皆さんがどこに出てくるのか、楽しみにしていて下さいね。

   ©2016 Irresistible Alpha Limited,Edko Films Limited,Focus Films Limited,

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もう一つ面白かったのは、黒龍江省という土地の選び方です。中国語版Wikiを調べてみると、黒龍江省[糸妥]芬河市でロケをしたとありましたが、画面に出て来た名前はちょっと違っていたような...。平屋の住宅がずらっと並ぶ、映画のセットのような町で、アクションの舞台となる駅の引き込み線のシーンも迫力があります。ここはどうやら朝鮮族の人が多く住んでいるらしく、大家さんであるポクおばさんのセリフに「私は朝鮮族で...」といった表現が出てきます。さらに、この紹介文を書いている時に役名の漢字表記をしらべてみたら、アンディ・ラウが演じる役レイ・ジンガウは何と「李政久」と表記されているではありませんか。韓国の大スター、イ・ジョンジェの漢字表記が「李政宰」なので、似ていますね。また、悪役のチョイも漢字表記は「崔」で、朝鮮名を想起させます。そして、アンディ演じるレイ・ジンガウが命じられて、盗みをはたらくために出張る先は、ロシアのウラジオストック。中国北東部の地理的環境が、プロットにうまく生かされています。

伝説復活!デブゴン再びー『サモ・ハンis BACK!』特報

予告編を上に付けておきましたが、こちらには2本目の『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』の予告編も一緒に入っていますので悪しからず。それを補うために、エンドロールで流れるアンディ・ラウの歌「原諒我(俺を許してくれ)」のMVを付けておきます。これは、ヤクザな父親であるアンディ演じるレイ・ジンガウの気持ちを代弁すると共に、サモ・ハンのディンがかつて孫娘を見失ってしまったことを後悔する気持ちも代弁しています。映画のいいシーンがいろいろ使ってありますので、ぜひ見てみて下さいね。

劉德華 Andy Lau - 原諒我 (粵語版) (電影《特工爺爺》主題曲) MV [官方]

 

 


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2 コメント

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久しぶりに・・・ (Jaan)
2017-04-02 21:40:24
cinetamaさん、こんにちは。
寒い日が多いですが、体調は大丈夫ですか?

最近は、アジア映画はインドや韓国が多いですが、サモ・ハンさんの映画の予告編観て、久しぶりに香港映画が観たくなりました♪

MVもアンディさんの声が映像を引立て、哀愁漂い、これだけで泣けてしまいました(T_T)

ゲスト出演でユン・ピョウさんの名前があり、ますます気になります。
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Jaan様 (cinetama)
2017-04-03 00:48:14
コメント、ありがとうございました~。

『おじいちゃんはデブゴン』はちょっと変わったテイストの作品で、香港公開時のシャープな宣伝映像(↓)とはだいぶギャップがありました。
http://blog.goo.ne.jp/cinemaasia/e/1015b7a6b7579db131fa6949482c08a8
ユン・ピョウも恰幅がよくなっていて、童顔がおじさん顔になっていました。
これだけ縁のある人をゲストで出すなら、ジャッキー・チェンにも出てもらえばよかったのに、と思うぐらい、ゲストは多彩です。
お楽しみに~。
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