今日は二重に嬉しいことがありました。まず一つ目は、グレゴリ青山さんから「グレさんぽ」が掲載された雑誌「月刊フラワーズ」2023年2月号をいただいたこと。マンガ好きの私ですが、最近は全然読んでいないので、こういう表紙は「うっ、眩しい目がつぶれる!」という感じです。
グレゴリさんの「グレさんぽ」、もう102話になるのですね。てことは9年? その前が「マダムGの館」でしたっけ? よくインド映画ネタを取り上げて下さっているのですが、今回のネタはインド人の若き研究者シュエタ・アロラさんがグレゴリさん宅に調査に訪れた時の話で、インド映画のいろんなシーンや歌詞が出てきます。さらに、「インド映画ファンあるある」も満載で、インド映画ファンなら必見! の作品となっています。ぜひお正月休み用にお求めになって、心置きなく笑って下さいね。書店では紐掛けがしてあるので見られないと思いますが、万一見られたとしても、絶対読んではいけません。静かな書店で、ギャハハ! と大きな笑い声を上げてしまうこと請け合いだからです。いやー。グレゴリさん、このギャグの呼吸、秀逸です、と、じらせてばかりではお気の毒なので、チラリと部分をご覧に入れましょう。「トーラー・サー・デーク・ロー(ちょっとだけよ~)」
シュエタさんはもう研究期間が終了して帰国してしまったのですが、こんなにそっくりに描いてもらって、嬉しいと思いますよ~。ご家族とかに自慢してるんじゃないかな、と思いますが、このマンガの中にもあるように日本での研究テーマは全然違うことだったのに、日本に来てインド映画等インドのポピュラーカルチャーが広く受容されているのに驚き、研究テーマを変えようか、と目下検討中のようです。私もいろいろやり取りする中で、YouTuberのマヨさんらの存在を教えてもらったりして、とても助かりました。特に、『RRR』(今日知ったのですが、この映画のタイトルを書く時はアルファベットを全角で書くのが正式なんだそうです)でゲストが来日した折、マヨさんが素敵なインタビューをしていて、こういう人を前もって知っていてよかった、とシュエタさんに感謝したのでした。もう皆さんご覧になっていると思いますが、マヨさんの「インタビューwithS.S.ラージャマウリ監督、NTR Jr.、ラーム・チャラン」を下に付けておきます。外語大の卒業生だそうなので、英語もお上手だし、ヒンディー語はマシンガン・トークだし(もうちょっとゆっくりの方がdecentだと思うけど、インド人にはウケますよね)、とても楽しいインタビューになっています。最後の方ではきちんと重大な質問もしてあって、感服しました。後日編のトーク動画もありますので、下を見た後よかったらどうぞ。
インド映画「RRR」の日本公開!!S.S.ラージャマウリ監督とW主演のNTR Jr.さんとラーム・チャランさんにインタビュー!
というわけで、シュエタさんはまた来日するかも知れないのですが、皆さんにもこの将来有望な研究者を知っておいていただきたく、「月刊フラワーズ」今月号をお求めいただければと思います。620円ですよ、厚さ3.4㎝で(トーストなら3枚分)。私も、マンガ熱が再燃しそうです。萩尾望都は大学院時代に友人の下宿で見つけて読んだ「戯び玉」(あれ、この表記の題だったと思うのに、ネットでは「あそび玉」になってる)以来ファンだし、西炯子もすぐ自画像が思い浮かぶぐらいだし、逢坂みえこも相変わらず絵もストーリーも達者だし...おっと、マンガの話をしだすとキリが無いので、次に行きましょう。
次に、『バーフバリ』シリーズや『RRR』の字幕翻訳者にして、TUFS Cinemaの南アジア担当者である藤井美佳さんからいただいたのは、上のご本です。この本、内容がなかなかユニークで、これまでの文化紹介本とはひと味もふた味も違うような印象です。私もまだ目次を拝見しただけなのですが、面白そうな小見出しが並んでいます。出版社のHPに目次が掲載してあったので、それをコピペしておきますね。
「インド文化読本」丸善出版、188P.、2022年11月30日、定価2,640円(2,400円+税)
第1章 南アジア世界をかたちづくるモノたち――印章、土器、装身具から
はじめに/モノと南アジアの人類社会/印章――インダス文明の特質を探る/土器――南アジア各地をつなぐモノ/石製装身具――南アジアと周辺地域の関係/土偶――古代南アジアの信仰世界/おわりに――考古学からみた南アジア世界のダイナミズム
第2章 歴史にみるインドの多様性――古代から独立後まで
古代インド世界の形成/古代インド世界の展開と地域性の誕生/ムスリム侵入後のインド地域性の成長/ムガル帝国の成立と地域統合・再編/英国による植民地支配――「国際性」から地域的多様性へ/独立後のインドにおける多様性――変動する地域性
第3章 インドの民族と言語の多様性
インドの民族と言語の多様性――現状/インドの民族と言語の多様性――その形成過程/諸言語の最古層、サンスクリット語/インド最大言語、ヒンディー語/インド・パキスタン独立後の動き/ドラヴィダ語族のマラヤーラム語と異民族交流・融合の歴史/ムンダ諸語およびチベット・ビルマ語族の諸語/アンダマン諸島の言語/公的に認定されている言語としての英語/結び
コラム1 「甘党の国」を支えるサトウキビ栽培
ココナツは捨てるところがない作物
第4章 関係性に埋め込まれたカースト
社会のにおいに気づく/旅行者からフィールドワーカーへ/カーストという概念とその実際/生まれによって定められる/植民地支配下のカースト/カーストをどう捉えるか/カーストをみえなくする――インド婚活市場/「結婚は当然同じカースト出身者と」
第5章 インドの教育
インドの教育の原点は師弟/語学が得意なインド人と三言語教育/インドの大学――マハラーニー大学/インドの大学院――ジャワーハルラールネルー(ネヘルー)大学院大学/インドの小学校――同級生と遊べない/インドの子育て――宿題は親と一緒がデフォルト/インドの中学高校生――人生を左右する10年生と12年生/教育環境の格差
第6章 さまざまな宗教、さまざまなお墓――お墓でみるインド宗教史
タージ・マハルもお墓である/多様性の国インドの多様な宗教/「ヴェーダの宗教」と「外来の宗教」/輪廻か終末か/そもそもお墓がないのでは?/ブッダとストゥーパ/サーンチーのストゥーパ/「特別な墓」としてのストゥーパ/イスラーム墓廟建築の展開――聖者廟からタージ・マハルへ/ヒンドゥーの特別な墓、あるいはそれに近いもの/「チャトリ」の文化――ヒンドゥー王族の霊廟建築/英国人墓地の不思議なお墓/インドのお墓の過去と今
コラム2 メヘンディーと女の人生
花嫁のメヘンディー/メヘンディ―を染める理由/はじめての「一人出張」
第7章 インドの文学――ウルドゥー文学の今
ウルドゥー語の輪郭/ウルドゥー文学の神髄、ガザル/20世紀のインドにおけるウルドゥー語の状況/ガザル・ブームの到来/失われた話芸、ダースターンゴーイー/ダースターンゴーイーの復活/ウルドゥー語・文学の復興と発展をめざして――レーフタ財団/レーフタ財団の活動①「レーフタ」ウェブサイト/レーフタ財団の活動②文字学習サイト「アーモーズィシュ」/レーフタ財団の活動③「ジャシュネ・レーフタ」の開催/ウルドゥー文学の抱える課題/ウルドゥー文学作品の「読み手」と「書き手」
第8章 インドのポピュラー音楽の変遷
インドの映画音楽/初期の「歌う俳優」から「プレイバック・シンガー」の時代へ/音楽の聴かれ方の変化――レコード、ラジオ、カセットテープ/経済自由化がポピュラー音楽にもたらした変化/A.R.ラフマーンの登場と、新世代のつくり手たち/映画音楽の聴かれ方/インディーポップ/ロックの誕生と変遷/エレクトロニック音楽/ヒップホップ・カルチャー/インディペンデント音楽のパフォーマンスの場/混じり合い、多様化する音楽実践
第9章 インドの医薬・医療事情
世界の薬局/インドが薬品を低価格で供給できるワケ/世界の薬局への成長/世界的医薬品研究開発・製造拠点への発展/高い技術力で医薬品の差別化/新薬とワクチンの開発/国境を越えるオープン・イノベーションと高度人材/ヘルスケア産業の成長/医療機器産業におけるメイク・イン・インディアとリバース・イノベーション/高度医療と医療ツーリズム/デジタル化とオンライン薬局/公的健康保険制度の未整備と医療費の高い自己負担/州医療公社による医薬品無償供給サービスと国営薬局/モーディーケアの導入とデジタル化/インドの医療の「光」と「影」と
コラム3 都市文化としての美容産業
美の政治学/インド経済自由化と美容業界の発展/BPC産業で働く女性たち
第10章 インドの中間層の家庭における食の変遷
1980年代から2020年の変化/食におけるケガレ意識/家庭料理/経済自由化政策以降/「キッチンという名の牢獄」/健康志向――家庭料理における油
第11章 インド社会と外食産業の発展
「中の人」アルンの誕生/外食産業の発展/外食産業発展の陰で/「中の人」も健康志向――外食産業の今後
第12章 安心安全な食の流通
コロナ禍でみえた二つの安心安全/デリーでの有機栽培販売の始まり/インドにおける有機農業と消費の伸長/消費者が置き去りにされた農業/インドの小農/運搬の課題/気候変動と農業/安心安全な食の流通
第13章 インドの動画配信サービス
モバイル端末と配信/地域言語と南インド映画の台頭――コンテンツへの投資/動画配信に規制はあるのか?/おわりに
コラム4 近代インドの罪と罰
英領インドの「法の支配」とその実態/犯罪集団の統制/政治的運動の犯罪化/独立インドと犯罪
執筆者紹介
【編者】小磯千尋、小松久恵
【執筆者】飯田玲子、上杉彰紀、小川道大、上池あつ子、菊池智子、栗田知宏、鈴木真弥、冨澤かな、長井優希乃、藤井美佳、Prashant PARDESHI、三井昌志、宮本隆史、村上明香、山崎のり子
索引
藤井美佳さんの担当は、「第13章 インドの動画配信サービス」で、まとめるのが大変だったろうな、と思います。この本はページデザインもユニークで、ページの下3分の1強が画像や図表、注や情報元を集めた部分になっており、本文が縦組みなのに対して下部は横組みになっています。本文の字も小さめで、情報量がすごそう、とちょっと圧倒されました。最先端のインドに関して、かなりの情報を、しかも正確な情報を仕入れることができると思いますし、小ぶりの判型なので持ち歩いて読めるスグレモノの本と言えると思います。こちらもぜひ、ご自身へのクリスマスプレゼントとしてお求め下さい。
明日はクリスマス・イブですね。宇野昌磨も100点超えで首位発進したし(フィギュアスケートも好きなんですよー。今回は99.9点でなくてよかったわ)、皆様、どうぞ楽しいクリスマスを。最後に、ケーララのクリスマス・キャロルの動画を見つけましたので、付けておきます。毎年新たに映像を作っているみたいですね。サンタを先頭にしたイブのパレード、一度見てみたいです。
GABRAYALINTE DARSHANA | CHRISTMAS CAROL 2022
いつも楽しくブログ読ませていただいています。公開されるインド映画をいつもこのブログで知ることができて感謝しています。昨年はリティックの映画が2本、そして来年は「バンバン」…もう、長年のリティックファンとしては、うれし涙の2022年、23年です。
さてさて、「グレさんぽ」シュエタさん編、早々にご紹介いただき、ありがとうございます!cinetamaさんのおかげで、素敵な人と出会えて、楽しい時間を過ごすことができたうえに、漫画のネタにもさせていただき、具だくさんのカレーを食べたような幸せ感をあじあわせていただいています。本当にありがとうございました!
そしてすいません、この漫画を読んでくださった方々へ。(あ、月刊フラワーズの発売は12月28日です)登場していただいたcinetamaさんのヘアスタイルは少々昔のヘアスタイルで、今はエレガントグレーのショートカットですよー。と、声を大にしてお伝えいたします。
それにしても、cinetamaさん、少女漫画もお好きなのですね!いつか漫画評論も読んでみたいです。
これからもブログ、楽しみにしています。お体に気を付けて、よいお年をお迎えくださいませ。
あらら、発売日はまだまだ先だったんですね。本屋にすぐ走って下さった方、すみません! クリスマス・プレゼントには間に合わなかったですねー。
少女漫画はここに書いた「あそび玉」を読んだのをきっかけに好きになり、萩尾望都、山岸涼子、一条ゆかり、大島弓子等々、1970年代から読み始めて折に触れ読んでいました。一時期、ずっと雑誌を購読していたこともあります。
とりわけ好きだったのが川原泉で、この人の作品だけは買って手元に置いてあり、人生がヘタる展開をした時に読み直して元気をもらっていました。そういえば、ここ10年ぐらいは読み返してないなあ...。
ホントに、漫画は心を救ってくれます。
グレゴリさんのご本もたくさんいただいているので、うちの漫画文庫はこの両巨匠が看板ですね。
さっきもスケートを見ていて、グレゴリさんを思い出していました(全日本も観戦に? さかもっちゃんが優勝してよかった!)。
これからも、面白いネタを拾い上げて下さいね。楽しみにしています。