昨日朝日カルチャーセンター新宿教室でさせていただいた講義には、たくさんの方にお越しいただき、ありがとうございました。当初、10人も来て下さればいいなあ、でも、予備も含めて、プレゼント用インド版映画ポスターを20枚ほど買って帰ろう、と思い、ムンバイから50枚ぐらいえっちらおっちら持ち帰ったのですが、その自分用の分から何枚か流用して用意したプレゼント25枚も、全然足りないぐらいたくさんの方が来て下さいました。その中には朝日カルチャーの会員でない方も10名ちょっといらして、担当者の方がとても喜んでいらっしゃいました。あらためて、御礼申し上げます。
風邪でまだ声が本調子でなかったのですが(その風邪を気遣って下さった方もいて、感謝感激)、私にとってもいろんなことが整理できた1時間半でしたので、その導入部分をちょっとまとめておこうと思います。でも、聞きに来て下さった皆さんは、高い受講料を払って下さっているので、ブログではほんのさわりだけ、ということでご了承下さいね。
「新感覚インド映画」というのは聞き慣れない言葉だと思いますが、インド映画ファンの皆さんは、ここ10数年でインド映画、特にヒンディー語映画が変わってきた、ということは感じていらっしゃると思います。日本の映画関係者、映画祭に関わっている方たちもそれを感じていて、この2、3年、「インド映画ニューウェーブ」と呼ばれたりすることもあるようになってきました。
ただ、私としては「ニューウェーブ」あるいは「ニューシネマ」という呼び方は、1960年代末から1970年代にかけて、バース・チャテルジー監督の『天空(Sara Akash)』(1969)やシャーム・ベネガルの『芽ばえ』(1974)などが登場し、芸術映画が変貌を遂げた時に使われた呼び方なので、どうも近年の変化するインド映画にはふさわしくない、と違和感があります。そんな話を友人としている時に、彼女から、「それじゃ、”新感覚インド映画”はどうですか?」と言われ、この表現に飛びついたのでした。実はその友人と、もう1人の友人が編集を担当してくれることになったインド映画本「インド映画完全ガイド~新感覚<NEO>インド映画が面白い!~(仮題)」が、世界文化社から10月初めに出版されることになっています。今、いろんな方が原稿を執筆して下さっている最中で、昔出た「インド映画娯楽玉手箱」(キネマ旬報社、2000年)以来のまとまったインド映画紹介本になる予定です。これでもって、「新感覚インド映画」という言葉を定着させようと思っているのですが、さて。
Dil Chahta Hai - Extended Trailer
私がインド映画というかヒンディー語映画が変貌しつつある、と一番最初に感じたのは、2000年の『心が望んでる(Dil Chahta Hai)』という作品でした。上に予告編を付けましたが、予告編は今見ると、従来型のインド娯楽映画という点が強調されているような気がします。でも、自然体の演技、普段通りの台詞回し、肩の力の抜けた展開は、それまでのインド映画には見られなかったものでした。あと音声がアフレコではなくて同録だったのにも驚きました。作られた音ではないためちょっとした違和感があったのですが、それすらも新鮮でした。監督は、ファルハーン・アクタル。これが監督第1作です。のちに、『DON』シリーズを大ヒットさせ、また『ミルカ』(2013)の主演男優も務めるなど、俳優としてもキャリアを積んでいくことになるファルハーン・アクタルの、輝かしきデビューでした。
Khosla Ka Ghosla trailer - Sanona Movies
そして、2000年代の半ばになると、ノンスターの低予算映画なのに、思わず引き込まれる面白い作品がたくさん登場してきます。たとえば、上の『コースラー家の巣(Khosla Ka Ghosla)』(2006)。定年間際にやっとのことで手に入れた自宅用の土地を横取りされた一家が、取り戻すために大芝居を打つ、というとてもトリッキーな映画です。監督はディバーンカル・バネルジーで、やはりこれがデビュー作でしたが、これまたのちにアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された『シャンハイ』(2012)など、面白い作品を作る監督に成長していきます。
ほかにも、東京国際映画祭で上映されたナーゲーシュ・ククヌール監督の『運命の糸』(2006)や、マドゥル・バンダールカル監督の『セレブページ(Page 3)』(2005)、『会社法人(Corporate)』(2006)、『信号(Traffic Signal)』(2007)、そして『ファッション(Fashion)』(2008)など、いろいろ面白い作品が登場してきます。
さらに、2009年に登場したアヌラーグ・カシャプ監督の『デーウD』は、これぞまさにカルトムービーと思わせられました。それまで何度も映画化されている文芸作品「デーウダース」を現代に置き換え、特異な表現を交えながら思う存分に現代的解釈を施した作品で、これでアヌラーグ・カシャプ監督は名声を確立することになります。日本でも大阪アジアン映画祭で上映されたのですが、今だったらどこかの配給会社が買ったかも知れないなあ、とちょっと残念です。
Dev.D - Theatrical Trailer
こんな風な映画を、当時の私は「ニッチ(隙間)映画」と呼んだりしていたのですが、これらはまさに新感覚インド映画でした。今日本でヒットしているのは、新感覚インド映画の中でも比較的穏やかな作品ですが、この『デーウD』のようにもっとトンがった作品や、『ドナーはヴィッキー』(2012)のように新しいテーマに挑んだ作品も登場、ますますバラエティに富んで来つつあります。少し前の作品なので公開は無理としても、「新感覚インド映画フェスティバル」というような特集上映で何かできないかなー、と昨日お話をしながら考えてしまいました。TIFFの「Crosscut Asia」でも狙ってみようかと考えていますが、当面は本のことで頭がいっぱい。また表紙など決まりましたらご披露しますので、楽しみにしてお待ち下さいね。
エメラルドグリーンのサリーに身を包んだcinetamaさん(とてもお似合いで、素敵でした☆)にようやくお会いでき、感激と緊張の中、あっという間の1時間30分でした♪
また、プレゼントまでご用意して頂き、ありがとうございました。
私はポスターだったのですが、「DHOOM:3」で嬉しくて、思わず飛び跳ねて喜びましたヽ(^。^)ノ
ポスターを巻いてあった用紙も以前資料で使われたものでしょうか?「アジア映画史」でこちらもじっくり読ませていただき、今回の資料とともに、大切に保管しております。
ご紹介いただいた映画も興味津々で、今回見せて頂いた「運命の糸」は、続きが見たいと思いました。
「コースラー家の巣」も気になりますね~。
是非、「新感覚インド映画フェスティバル」実現してほしいです♪
本の発売も嬉しくて、こちらで披露されるのを楽しみに待っております♪
もちろん、発売されたら購入しますよ!
お忙しく、なかなか体を休められないとは思いますが、ご無理なさらずに。
一日も早い回復をお祈りしています。
またお会いできる日を楽しみにしております♪
また、金曜日もお越し下さり、ありがとうございます。私もお目にかかれて嬉しかったです(背がお高いので、よけい親近感が...).
心配して下さった体調も、いただいたお茶のおかげか少しずつ上向きになっています。実は今もちょうど飲んだところでした。
ポスター、『チェイス!』現地版でしたか。よかったです~。
巻いていた紙は、ずっと昔の授業のレジュメが出てきたので、それを使ってみました。
大学では余ると再生紙用ボックスに入れたりするのですが、たまたま一時期そのボックスがなく、もったいないと思って持ち帰っていたものです。
今も、あんなレジュメを使って毎回授業をしています。
また何かの折にお会いして、すこしゆっくりお話できるといいですね。そんな機会を願っていますので。