絶望的に体の硬い人

　前に、（元体操選手とかでない）普通の人に「Y字バランス」を見せてもらったことがある。こんな近くにできる人がいるんだ、という感慨というか衝撃というか、だいたい僕の生活にそんなのなかった。せいぜいテレビの中の話のような、あの美しい線が目の前に。

　時は流れ、昨年暮れのフランス旅行でフレンチカンカンをみてきた。プロフェッショナルのダンサーによるムーラン・ルージュの舞台なんだけど、やっぱりきれいですね。12月28日の夜だった。以来、「いつかあの舞台に」なんて思ってはいないけど、柔らかい体を目指して日々開脚に挑戦している。そうしたら、もしかしたら走るのも劇的に速くなったりしないだろうか、なんて期待もしながら二か月が過ぎて、なんでいまだに人並みの柔らかさすら手に入らないか。ヨガ教室なんて行ったら「ふざけてんのか」と思われるくらい曲がらないんで、たぶんみんなが当たり前のようにする基本姿勢だってできないと思う。そんな絶望的な硬さに気がついたのが、つい先月のことだった。