実臨床におけるAxicabtagene Ciloleucelの治療成績

2020-09-20 12:19:21 | 悪性リンパ腫

Axicabtagene Ciloleucel in the Non-Trial Setting: Outcomes and Correlates of Response, Resistance, and Toxicity
J Clin Oncol. 2020 Sep 20;38(27):3095-3106. doi: 10.1200/JCO.19.02103. Epub 2020 Jul 15.
PMID: 32667831

目的
Axicabtagene ciloleucel (axi-cel)は、臨床試験集団における持続的な寛解率が約40%という結果に基づき、アグレッシブB細胞非ホジキンリンパ腫の再発に対してFDAにより承認された。この有効性と毒性の割合が、より適格性が緩くかつブリッジング治療を伴うような市販後セッティングでも変わらないのかは分かっていない。今回の研究では、このセッティングにおける有効性と安全性の関連と治療成績について記述する。

患者と方法
米国の7施設においてaxi-celで治療された122人の患者をmodified intent-to-treat (mITT)解析の対象にした。76人(62%)がZUMA-1試験の適格条件を満たさなかった。奏効と毒性の割合、奏功の持続(DOR)、生存、そして共変量をmITT集団に基づいて記述した。奏功や治療抵抗性のバイオマーカーになる可能性があるものを探索するため、血液や腫瘍のサンプルを用いた相関研究を行った。

結果
フォローアップ期間の中央値は10.4ヶ月だった。mITT集団において、最良の全奏効率と完全奏効(CR)率はそれぞれ70%と50%だった。奏功持続期間と無増悪生存期間(PFS)の中央値は、患者全体では11.か月と4.5か月で、CRに達した患者では到達しなかった(NR)。全生存期間の中央値は未到達(NR)で、1年全生存率は67%(95% CI, 59%~77%)だった。奏効率はZUMA-1適格群と不適格群で類似していたが(70% vs 68%)、CR率、奏功持続期間、PFS、OSはZUMA-1適格群の方が統計学的に有意に良好であった(CR率 63% vs 42%, P = 0.016。奏功持続期間中央値 未到達 vs 5.0か月, P = 0.014。PFS中央値 未到達 vs 3.3か月, P = 0.020。1年OS 89% vs 54%, P < 0.001)。grade 3以上のサイトカイン放出症候群と神経毒性の発生率は16%と35%だった。

結論
Axi-celは市販後セッティングと臨床試験セッティングで類似した全奏効率と毒性を示したが、CR率と奏功持続期間はZUMA-1適格患者の方が良好だった。


標準治療における、再発・治療抵抗性大細胞型B細胞リンパ腫リンパ腫に対するCAR T療法

2020-09-19 13:16:40 | 悪性リンパ腫

Standard-of-Care Axicabtagene Ciloleucel for Relapsed or Refractory Large B-Cell Lymphoma: Results From the US Lymphoma CAR T Consortium
J Clin Oncol. 2020 Sep 20;38(27):3119-3128. doi: 10.1200/JCO.19.02104.
PMID: 32401634 PMCID: PMC7499611

目的
Axicabtagene ciloleucel (axi-cel)はCD19を標的とした自家キメラ抗原受容体(CAR) T細胞治療であり、単アームの第2相試験であるZUMA-1試験の結果に基づいて再発・治療抵抗性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の治療として承認されている(ZUMA-1試験での最良全奏功率は83%、最良完全奏効率は58%)。著者らは、承認された適応に対する標準治療のセッティングにおける、axi-celの臨床的治療成績を報告する。

患者と方法
米国の17施設において、標準治療としてaxi-celを実施する目的で2018年9月30日までに白血球除去を実施した再発・治療抵抗性LBCL患者の全員のデータを後ろ向きに収集した。毒性のグレード評価と管理は、各施設のガイドラインに従って行われた。治療効果は2014年のLugano基準によって行った。

結果
白血球除去を受けた患者298人のうち、275人(92%)がaxi-celによる治療を受けた。登録制のZUMA-1試験と比較して、今回の標準治療研究においては129人(43%)が白血球除去を行った時点での併存症によりZUMA-1の適格基準を満たしていなかった。axi-celで治療された患者のうち、グレード3以上のサイトカイン放出症候群や神経毒性を呈した患者はそれぞれ7%、31%だった。非再発死亡率は4.4%だった。最良の全奏功率と完全奏効率は82%(95% CI, 77%~86%)と64%(58%~69%)だった。CAR-T細胞輸注からのフォローアップ期間の中央値は12.9ヶ月で、無増悪生存期間の中央値は8.3ヶ月(95% CI, 6.0~15.1)であり、全生存期間は中央値に到達しなかった。単変量解析と多変量解析において、ECOG-PSが2~4と不良な患者と、LDHが上昇していた患者は無増悪生存期間と全生存期間が短かった。

結論
再発・治療抵抗性LBCL患者に対するaxi-celの安全性と有効性は、標準治療セッティングにおいても登録制のZUMA-1試験に匹敵するものだった。


限局期DLBCL患者に対する、PETに従った治療に関する臨床試験結果(S1001研究)

2020-09-09 14:45:07 | 悪性リンパ腫

Positron Emission Tomography-Directed Therapy for Patients With Limited-Stage Diffuse Large B-Cell Lymphoma: Results of Intergroup National Clinical Trials Network Study S1001
J Clin Oncol. 2020 Sep 10;38(26):3003-3011.  doi: 10.1200/JCO.20.00999.  Epub 2020 Jul 13.
PMID: 32658627

目的
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は患者の25%〜35%が限局期で、進行期と比べて全生存(OS)は良好だが、治療法に関わらず持続的な再発を伴う。推奨されている治療はR-CHOPと放射線治療である。PETの結果に従った治療アプローチの有望な成績結果に基づき、著者らは治療成績を改善し毒性を軽減することを目的にNational Clinical Trials Network (NCTN)の研究をデザインした。

方法
非バルキー(< 10 cm)の1期または2期の未治療DLBCL患者に標準的なR-CHOPを3サイクル行い、中間PET-CT(iPET)を行い中央でレビューした。iPETが陰性の患者はR-CHOPを1サイクル追加し、iPETが陽性の患者にはinvolved field radiation therapyを行った後イブリツモマブ チウキセタンによる放射免疫療法を行った。

結果
158人の登録患者のうち132人が適格で、128人がiPETを受け、このうち14人(11%)が陽性だった。フォローアップ期間の中央値は4.92年(range, 1.1〜7.7年)で、増悪は6人のみで3人がリンパ腫により死亡した。11人がリンパ腫以外の原因により死亡し、年齢の中央値は80歳だった。5年無増悪生存率の推定値は87%(95% CI, 79%〜92%)、5年OSの推定値は89% (95% CI, 82%〜94%)であり、iPET陽性とiPET陰性の患者で結果は類似していた。

結論
著者らの知る範囲において、S1001研究はリツキシマブ時代の米国における限局期DLBCLに関する最大の前向き研究であり、この疾患サブセットにおけるNCTNの最良の結果を伴っていた。PETに従った治療を行ったところ、iPET陰性だった89%の患者がR-CHOPを4サイクル受け、11%のみがiPET陽性で放射線治療を必要とし、両群ともに優れた治療成績を示した。今回の研究は、R-CHOP 4サイクルのみの治療が限局期患者の大多数にとって新しい標準的アプローチであることを確立した。


non-GCB typeのDLBCLにおけるイブルチニブとR-CHOPの併用

2020-08-28 00:20:32 | 悪性リンパ腫

Randomized Phase III Trial of Ibrutinib and Rituximab Plus Cyclophosphamide, Doxorubicin, Vincristine, and Prednisone in Non-Germinal Center B-Cell Diffuse Large B-Cell Lymphoma
Clinical Trial  J Clin Oncol. 2019 May 20;37(15):1285-1295.  doi: 10.1200/JCO.18.02403.
PMID: 30901302

目的
イブルチニブはnon-germinal center B-cell型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する活性を持つことが示されている。今回の二重盲検化第3相試験では、未治療のnon-germinal center B-cell型DLBCLにおける、イブルチニブとR-CHOPの併用について評価した。

患者と方法
対象患者を、イブルチニブ(560 mg/日、経口)とR-CHOPの併用、またはプラセボとR-CHOPの併用のいずれかに1:1の比でランダムに割り付けた。主要評価項目はintent-to-treat (ITT) populationとactivated B-cell (ABC)型DLBCLにおける無イベント生存(EFS)とした。副次評価項目は、無イベント生存(PFS)、全生存(OS)、安全性とした。

結果
合計838人がイブルチニブ+R-CHOP群(n = 419)またはプラセボ+R-CHOP群(n = 419)のいずれかに割り付けられた。年齢の中央値は62.0歳で、評価可能な患者の75.9%がABC subtypeであり、ベースラインの患者背景に大きな差はなかった。
イブルチニブとR-CHOPの併用は、ITT population (ハザード比 [HR], 0.934)とABC population (HR, 0.949)のいずれにおいてもEFSを改善しなかった。事前に計画されていた解析では、治療と年齢の間に有意な相互作用が示された。年齢が60歳未満の患者においては、イブルチニブとR-CHOPの併用によってEFS (HR, 0.579)、PFS (HR, 0.556)、OS (HR, 0.330)のいずれも有意に改善し、重篤な有害事象がわずかに増加した(35.7% vs 28.6%)。しかしR-CHOPを6サイクル以上受けた患者の割合は治療アーム間で類似していた(92.9% vs 93.0%)。60歳以上の患者においては、イブルチニブとR-CHOPの併用によってEFS、PFS、OSが悪化し、重篤な有害事象が増加した(63.4% vs 38.2%)。また、R-CHOPを6サイクル以上受けた患者の割合が低下した(73.7% vs 88.8%)。

結論
今回の研究は、ITT populationとABC populationにおける主要評価項目を満たさなかった。しかし、年齢が60歳未満の患者においては、イブルチニブとR-CHOPの併用でEFS、PFS、OSが改善し、安全性は管理可能だった。60歳以上の患者では、イブルチニブとR-CHOPの併用は毒性の増加と関連しており、R-CHOPの中止や治療成績悪化につながった。さらなる研究が是認される。

Trial registration: ClinicalTrials.gov NCT01855750.


再発または治療抵抗性のホジキンリンパ腫を対象とした抗CD30 CAR T細胞療法

2020-08-21 00:19:06 | 悪性リンパ腫

Anti-CD30 CAR-T Cell Therapy in Relapsed and Refractory Hodgkin Lymphoma
J Clin Oncol. 2020 Jul 23;JCO2001342.  doi: 10.1200/JCO.20.01342.
PMID: 32701411

目的
B細胞リンパ腫に対するキメラ化抗原受容体(CAR)T細胞療法が有効であることが示されてきた。著者らは、CD30に特異的なCAR T細胞(CD30.CAR-Ts)を用いた同じアプローチがホジキンリンパ腫(HL)の治療にどのように使えるかを示す。

方法
著者らは、2つの独立した施設において2つの第1/2相試験を並行して実施した(ClinicalTrials.gov: NCT02690545、NCT02917083)。再発または治療抵抗性のHL患者を対象に、ベンダムスチン単剤、ベンダムスチン+フルダラビン、またはシクロフォスファミド+フルダラビンでリンパ球を除去した後、CD30.CAR-Tsを投与した。主要評価項目は安全性とした。

結果
41人がCD30.CAR-Tsを投与された。治療を受けた患者の前治療歴(中央値)は7 (lines)(range, 2-23)だった(ブレンツキシマブ・ベドチン、チェックポイント阻害薬、自家幹細胞移植、同種間細胞移植を含む)。
grade 3以上の毒性で最も頻度が高かったものは血液学的有害事象だった。サイトカイン放出症候群は10人でみられ、全てgrade 1だった。神経毒性はみられなかった。
活動性の病変がありフルダラビンベースのリンパ球除去を受けた患者32人における全奏効率は72%で、19人(59%)は完全奏効だった。フォローアップ期間の中央値は533日で、評価可能な患者の1年無増悪生存率と1年生存率はそれぞれ36%(95% CI, 21%〜51%)と94%(79%〜99%)だった。体内でのCAR-T細胞の拡大は細胞の用量に依存していた。

結論
濃厚な前治療歴のある再発・治療抵抗性HL患者にフルダラビンベースのリンパ球除去を行った後CD30.CAR-Tsを投与すると、持続的な奏効率が高く、安全性プロファイルは優れていた。これはCAR-T細胞療法を標準的なB細胞リンパ腫以外に拡大することの実現可能性を強調するものである。