FLT3-ITD陽性AML患者を対象とした、同種造血幹細胞移植後のソラフェニブ維持療法

2020-09-09 14:02:51 | 急性骨髄性白血病

Sorafenib Maintenance After Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplantation for Acute Myeloid Leukemia With FLT3-Internal Tandem Duplication Mutation (SORMAIN)
J Clin Oncol. 2020 Sep 10;38(26):2993-3002.  doi: 10.1200/JCO.19.03345.
PMID: 32673171

目的
FMS-like tyrosine kinase 3遺伝子における遺伝子内縦列重複変異(FLT3-ITD)を伴う急性骨髄性白血病患者は、同種造血幹細胞移植(HCT)を行なっても予後が悪く、再発しやすく、AMLにより死亡する。複数の標的を持つチロシンキナーゼ阻害剤であるソラフェニブのようなFLT3阻害剤を用いた維持療法がHCT後の治療成績を改善するかどうかは現在分かっていない。

患者と方法
ランダム化・プラセボ対照・二重盲検第2相試験(SORMAIN; German Clinical Trials Register: DRKS00000591)において、FLT3-ITD陽性の急性骨髄性白血病の成人患者で、HCT後に血液学的完全寛解を達成した83人を、ソラフェニブを24か月投与(n = 43)またはプラセボを24か月投与(n = 40)のいずれかにランダムに割り付けた。無増悪生存を今回の研究の主要評価項目とした。再発または死亡のいずれか先に発生したものを「再発」と定義した。

結果
フォローアップ期間の中央値は41.8か月で、再発または死亡についてのハザード比(HR)はソラフェニブ群対プラセボ群で0.39 だった(95% CI, 0.18〜0.85; log-rank P = 0.013)。24か月無増悪生存率はプラセボ 53.3% (95% CI, 0.36〜0.68)に対してソラフェニブは85.0%(0.70〜0.93)だった(HR, 0.256; 95% CI, 0.10〜0.65; log-rank P = 0.002)。探索的データではHCT前に微小残存病変(MRD)が検出できなかった患者とHCT後にMRDが検出できた患者がソラフェニブによる恩恵を最も強く受けていた。

結論
ソラフェニブによる維持療法は、HCT後のFLT3-ITD陽性AML患者の再発と死亡のリスクを減少させた。


アントラサイクリンと幹細胞移植の種類が若年の急性骨髄性白血病患者に及ぼすインパクト(第3相試験の長期フォローアップ)

2020-08-20 16:09:40 | 急性骨髄性白血病

Impact of the type of anthracycline and of stem cell transplantation in younger patients with acute myeloid leukaemia: Long-term follow up of a phase III study
Am J Hematol. 2020 Jul;95(7):749-758.  doi: 10.1002/ajh.25795.
PMID: 32233095

EORTC/GIMEMA AML-10試験に参加した患者の長期的な評価の結果を報告する。この試験は15〜60歳の患者2157人が対象となり、標準量のシタラビンとエトポシドにダウノルビシン(DNR, 50 mg/m2)、ミトキサントロン(MXR, 12 mg/m2)、またはイダルビシン(IDA, 10 mg/m2)を加えた導入化学療法と、同じアントラサイクリンと中等量のシタラビンを併用した地固め療法を行った。完全寛解(CR)または回復が不十分な完全寛解(CRi)に到達した若年患者は同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けるよう計画された。
HLAが合致する血縁ドナーがいる場合には同種HSCTを行い、その他のケースでは全例自家HSCTを行うこととした。

フォローアップ期間の中央値は11年で、5年、10年、15年全生存(OS)率はそれぞれ33.2%、30.1%、28.0%だった。3つのランダム化群の間で、OSに関して有意な差はみられなかった(P = 0.38)。15〜45歳の若年患者においては、治療によるOSの差はみられず(P = 0.89)、一方で46〜60歳の患者では、MXRとIDAの群はDNR群と比較してOSが長い傾向がみられた(P = 0.029)。MRC cytogenetic risk subgroupの"favorable"に該当せず、導入療法後にCR/CRiを達成した患者の中では、HLA合致血縁ドナーがいた患者はいなかった患者と比較して10年、15年全生存率が高かった。CR/CRiを達成した比較的高齢の患者においては、ドナーの有無で長期成績に差はみられなかった。

結論として、本研究の長期成績により患者コホート全体において3群のOSに差がないことが確認された。


診断から治療までの時間は新たに急性骨髄性白血病と診断された患者の予後に影響するのか?

2020-08-20 12:27:04 | 急性骨髄性白血病

Does time from diagnosis to treatment affect the prognosis of patients with newly diagnosed acute myeloid leukemia?
Blood. 2020 Aug 13;136(7):823-830.  doi: 10.1182/blood.2019004583.
PMID: 32496541

新たに急性骨髄性白血病(AML)と診断された、治療に適した患者については、速やかに治療を開始することが推奨されている。これは未治療の急性白血病の予後が不良なためである。著者らは診断から治療開始までの時間(time from diagnosis to treatment start, TDT)と予後の間の関連について、German Study Alliance Leukemia-Acute Myeloid Leukemia (SAL-AML) registryから得られた実臨床の大規模データセットを用いて探索した。

強力な誘導治療を受けて12ヶ月以上のフォローアップを受けた、急性前骨髄球性白血病以外の全患者を選択した(n = 2263)。著者らは、既知の予後因子を調整した上で、TDTを0〜5日、6〜10日、11〜15日、>15日の群に分け、TDTが寛解、早期死亡、全生存(OS)に及ぼす影響について、単変量解析で解析した。

TDTの中央値は3日(4分位範囲2〜7日)だった。調整前の2年全生存率は、TDTの群で層別化すると、それぞれ51%、48%、44%、50%だった(P = 0.211)。既知の予後因子に従った多変量Cox回帰分析では、連続変数としてのTDTのハザード比は1.00だった(P = 0.617)。
全生存についての解析では、年齢が60歳以下または60歳超え、あるいは最初の白血球数が多いまたは少ないで別個に層別化しても、TDTの群間で有意な差はみられなかった。

著者らの研究は、TDTが生存と関連していないことを示唆している。AMLの強力なファーストライン治療の層別化は進歩しているため、TDTのデータは、臨床的に安定している患者に利用可能な最善の治療選択肢を割り付けるために遺伝子検査やその他の検査の結果を待つことが許容可能なアプローチであることを示唆している。

This trial was registered at www.clinicaltrials.gov as #NCT03188874.