移植適応のある新規診断多発性骨髄腫患者における、ダラツムマブ、レナリドミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾンの併用療法

2020-08-30 22:23:37 | 多発性骨髄腫

Daratumumab, lenalidomide, bortezomib, and dexamethasone for transplant-eligible newly diagnosed multiple myeloma: the GRIFFIN trial
Blood. 2020 Aug 20;136(8):936-945. 
PMID: 32325490  DOI: 10.1182/blood.2020005288

レナリドミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾンの併用療法(RVd)と、それに引き続く自家幹細胞移植(ASCT)は移植適応のある新規診断多発性骨髄腫(NDMM)患者に対する標準的なフロントライン治療である。移植適応のあるNDMM患者を対象に、RVdにダラツムマブ(D)を加えた治療(D-RVd)について評価した。
対象患者(N = 207)をD-RVdまたはRVdいずれかによる導入療法(4サイクル)、ASCT、D-RVdまたはRVdを用いた地固め療法(2サイクル)、レナリドミドまたはレナリドミド+Dによる維持療法(26サイクル)のいずれかに1:1の比でランダムに割り付けた。
主要評価項目である、ASCT後の地固め終了までにstringent complete response (sCR)を達成した割合は、D-RVdの方がRVdよりも良好であり、事前に指定されていた片側検定の有意水準0.10を満たしていた(42.4% vs 32.0%; オッズ比, 1.57; 95%信頼区間, 0.87-2.82; 片側 P = 0.068)。
より長くフォローアップすることで(中央値 22.1ヶ月)、D-RVdの奏功はRVdと比べて深くなり(62.6% vs 45.4%; P = 0.0177)、intent-to-treat populationにおける微小残存病変(MRD)陰性化率(閾値10^-5)も同様だった(51.0% vs 20.4%; P < 0.001)。
D-RVd群の4人(3.8%)とRVd群の7人(6.8%)で疾患の増悪がみられた; それぞれの24ヶ月無増悪生存率は95.8%と89.8%)。
grade 3/4の血液学的有害事象はD-RVd群で多かった。D-RVd群では感染症が多かったが、grade 3/4の感染症の頻度については同等だった。
D-RVd群の方がplerixaforの使用頻度が高かったが、CD34+細胞の採取量中央値はD-RVd群で8.2 x 10^6/kg、RVd群で9.4 x 10^6/kgだった。好中球と血小板の生着までの時間(中央値)は同程度だった。
RVdによる導入療法と地固め療法にダラツムマブを加えることで移植適応のあるNDMM患者における奏功が深まり、安全性に関する新たな懸念事項はなかった。
本研究はwww.clinicaltrials.govに登録されている(NCT02874742)。


non-GCB typeのDLBCLにおけるイブルチニブとR-CHOPの併用

2020-08-28 00:20:32 | 悪性リンパ腫

Randomized Phase III Trial of Ibrutinib and Rituximab Plus Cyclophosphamide, Doxorubicin, Vincristine, and Prednisone in Non-Germinal Center B-Cell Diffuse Large B-Cell Lymphoma
Clinical Trial  J Clin Oncol. 2019 May 20;37(15):1285-1295.  doi: 10.1200/JCO.18.02403.
PMID: 30901302

目的
イブルチニブはnon-germinal center B-cell型のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する活性を持つことが示されている。今回の二重盲検化第3相試験では、未治療のnon-germinal center B-cell型DLBCLにおける、イブルチニブとR-CHOPの併用について評価した。

患者と方法
対象患者を、イブルチニブ(560 mg/日、経口)とR-CHOPの併用、またはプラセボとR-CHOPの併用のいずれかに1:1の比でランダムに割り付けた。主要評価項目はintent-to-treat (ITT) populationとactivated B-cell (ABC)型DLBCLにおける無イベント生存(EFS)とした。副次評価項目は、無イベント生存(PFS)、全生存(OS)、安全性とした。

結果
合計838人がイブルチニブ+R-CHOP群(n = 419)またはプラセボ+R-CHOP群(n = 419)のいずれかに割り付けられた。年齢の中央値は62.0歳で、評価可能な患者の75.9%がABC subtypeであり、ベースラインの患者背景に大きな差はなかった。
イブルチニブとR-CHOPの併用は、ITT population (ハザード比 [HR], 0.934)とABC population (HR, 0.949)のいずれにおいてもEFSを改善しなかった。事前に計画されていた解析では、治療と年齢の間に有意な相互作用が示された。年齢が60歳未満の患者においては、イブルチニブとR-CHOPの併用によってEFS (HR, 0.579)、PFS (HR, 0.556)、OS (HR, 0.330)のいずれも有意に改善し、重篤な有害事象がわずかに増加した(35.7% vs 28.6%)。しかしR-CHOPを6サイクル以上受けた患者の割合は治療アーム間で類似していた(92.9% vs 93.0%)。60歳以上の患者においては、イブルチニブとR-CHOPの併用によってEFS、PFS、OSが悪化し、重篤な有害事象が増加した(63.4% vs 38.2%)。また、R-CHOPを6サイクル以上受けた患者の割合が低下した(73.7% vs 88.8%)。

結論
今回の研究は、ITT populationとABC populationにおける主要評価項目を満たさなかった。しかし、年齢が60歳未満の患者においては、イブルチニブとR-CHOPの併用でEFS、PFS、OSが改善し、安全性は管理可能だった。60歳以上の患者では、イブルチニブとR-CHOPの併用は毒性の増加と関連しており、R-CHOPの中止や治療成績悪化につながった。さらなる研究が是認される。

Trial registration: ClinicalTrials.gov NCT01855750.


再発または治療抵抗性のホジキンリンパ腫を対象とした抗CD30 CAR T細胞療法

2020-08-21 00:19:06 | 悪性リンパ腫

Anti-CD30 CAR-T Cell Therapy in Relapsed and Refractory Hodgkin Lymphoma
J Clin Oncol. 2020 Jul 23;JCO2001342.  doi: 10.1200/JCO.20.01342.
PMID: 32701411

目的
B細胞リンパ腫に対するキメラ化抗原受容体(CAR)T細胞療法が有効であることが示されてきた。著者らは、CD30に特異的なCAR T細胞(CD30.CAR-Ts)を用いた同じアプローチがホジキンリンパ腫(HL)の治療にどのように使えるかを示す。

方法
著者らは、2つの独立した施設において2つの第1/2相試験を並行して実施した(ClinicalTrials.gov: NCT02690545、NCT02917083)。再発または治療抵抗性のHL患者を対象に、ベンダムスチン単剤、ベンダムスチン+フルダラビン、またはシクロフォスファミド+フルダラビンでリンパ球を除去した後、CD30.CAR-Tsを投与した。主要評価項目は安全性とした。

結果
41人がCD30.CAR-Tsを投与された。治療を受けた患者の前治療歴(中央値)は7 (lines)(range, 2-23)だった(ブレンツキシマブ・ベドチン、チェックポイント阻害薬、自家幹細胞移植、同種間細胞移植を含む)。
grade 3以上の毒性で最も頻度が高かったものは血液学的有害事象だった。サイトカイン放出症候群は10人でみられ、全てgrade 1だった。神経毒性はみられなかった。
活動性の病変がありフルダラビンベースのリンパ球除去を受けた患者32人における全奏効率は72%で、19人(59%)は完全奏効だった。フォローアップ期間の中央値は533日で、評価可能な患者の1年無増悪生存率と1年生存率はそれぞれ36%(95% CI, 21%〜51%)と94%(79%〜99%)だった。体内でのCAR-T細胞の拡大は細胞の用量に依存していた。

結論
濃厚な前治療歴のある再発・治療抵抗性HL患者にフルダラビンベースのリンパ球除去を行った後CD30.CAR-Tsを投与すると、持続的な奏効率が高く、安全性プロファイルは優れていた。これはCAR-T細胞療法を標準的なB細胞リンパ腫以外に拡大することの実現可能性を強調するものである。


アントラサイクリンと幹細胞移植の種類が若年の急性骨髄性白血病患者に及ぼすインパクト(第3相試験の長期フォローアップ)

2020-08-20 16:09:40 | 急性骨髄性白血病

Impact of the type of anthracycline and of stem cell transplantation in younger patients with acute myeloid leukaemia: Long-term follow up of a phase III study
Am J Hematol. 2020 Jul;95(7):749-758.  doi: 10.1002/ajh.25795.
PMID: 32233095

EORTC/GIMEMA AML-10試験に参加した患者の長期的な評価の結果を報告する。この試験は15〜60歳の患者2157人が対象となり、標準量のシタラビンとエトポシドにダウノルビシン(DNR, 50 mg/m2)、ミトキサントロン(MXR, 12 mg/m2)、またはイダルビシン(IDA, 10 mg/m2)を加えた導入化学療法と、同じアントラサイクリンと中等量のシタラビンを併用した地固め療法を行った。完全寛解(CR)または回復が不十分な完全寛解(CRi)に到達した若年患者は同種造血幹細胞移植(HSCT)を受けるよう計画された。
HLAが合致する血縁ドナーがいる場合には同種HSCTを行い、その他のケースでは全例自家HSCTを行うこととした。

フォローアップ期間の中央値は11年で、5年、10年、15年全生存(OS)率はそれぞれ33.2%、30.1%、28.0%だった。3つのランダム化群の間で、OSに関して有意な差はみられなかった(P = 0.38)。15〜45歳の若年患者においては、治療によるOSの差はみられず(P = 0.89)、一方で46〜60歳の患者では、MXRとIDAの群はDNR群と比較してOSが長い傾向がみられた(P = 0.029)。MRC cytogenetic risk subgroupの"favorable"に該当せず、導入療法後にCR/CRiを達成した患者の中では、HLA合致血縁ドナーがいた患者はいなかった患者と比較して10年、15年全生存率が高かった。CR/CRiを達成した比較的高齢の患者においては、ドナーの有無で長期成績に差はみられなかった。

結論として、本研究の長期成績により患者コホート全体において3群のOSに差がないことが確認された。


免疫調節薬で治療される多発性骨髄腫患者を対象とした、アピキサバンを用いた静脈血栓一次予防

2020-08-20 13:11:23 | 多発性骨髄腫

Primary prevention of venous thromboembolism with apixaban for multiple myeloma patients receiving immunomodulatory agents
Br J Haematol. 2020 Apr 21.  doi: 10.1111/bjh.16653.
PMID: 32314352

免疫調節薬(IMiDs)は多発性骨髄腫(MM)患者の生存率を改善し、全てのフェイズの治療において中核を成している。IMiDsは忍容性が良好であるものの、静脈血栓塞栓症(VTE)の頻度を上昇させる。

今回の第4相、単アームのパイロット研究において、IMiDsで治療されているMM患者50人にVTEの1次予防目的でアピキサバン 2.5 mgを内服で1日2回投与し、前方視的に6ヶ月間モニターした。安全性に関する主要評価項目は、6ヶ月の間に発生した大出血と、臨床的に関連のある非大出血の発生率とした。有効性に関する主要評価項目は6ヶ月間の症候性VTEの発生率とした。

使用されたIMiDsはレナリドミド(58%)またはポマリドミド(42%)だった。6ヶ月の評価期間中に、大出血やVTEは発生しなかった。3人が臨床的に関連している(非大)出血を呈し、医学的な対応を受け、全例でアピキサバンを再開できた。アピキサバンに対するアレルギー反応のために開始後早期に治療を中止した患者が1人いた。脳卒中、心筋梗塞を合併、または死亡した患者はいなかった。

今回のパイロット研究において、低用量のアピキサバンはIMiDs投与を受けるMM患者のVTE1次予防として安全で忍容性良好であった。低用量アピキサバンをIMiDs投与を受けるMM患者の標準的な血栓予防戦略として検証するため、さらなる研究が必要である。