COOLSのベーシスト大久保喜市からジェームス藤木の自叙伝が送られて来た
ジェームスはCOOLSのギタリスト
そしてなりより自分が20代前半から今までに触れ合った日本のシンガーの中で
本当に「こいつは...」と思わせる
自分にとっては特別な数少ないロックンロール
そしてR&Bシンガーの一人でもあるのだ
若い頃から歌の上手い奴は一杯見てきたし
超売れっ子の有名歌手とも一緒に演奏してきたけど
正直に言うと、どんなに格好良くても、どんなに歌が上手かろうと
人気があって会場を満杯にして大歓声を浴びたとしても
心を満足させる種類のパフォーマンスはそう滅多にあるものじゃない
やはり心に嘘はつけないのだ....
どんなにリーゼントで格好よく突っ張ったとしても
過激な内容で髪を逆立てて客をあじったとしても、あるいは
常に新しい音を取り入れ、ニューやシティなんとかって感じに溢れていても
そして、ソウルシンガーやブルースマンのファンキーさを真似したところで
いや、誤解なきよう言っておきたいのだが、
そういった物は好きだし
作る楽曲も創造力に溢れ画期的に素晴らしかったりするのだが
自分が「これは」と思うのは何か,そういった類とは
別のポイントがあるのではないか、.....と言う事なんだ
この自分の中のロックンローラー或いはロッカーとしての
良いと思える評価の判断基準というか分岐点というか
「自分にとって納得出来る点」は一体何かという事を昔から考えてはいたんだ
勿論自分もドラマーだから
その点はリスナーやファンとは違って
多分にうがった方向にはなるだろうけど
ジェームスの本を読んで沢山の人がジェームスを賞賛している
その才能、力量、人柄についての事は全くその通りで異論も無い
全くその通りで、その点は置いておくが
だけど音楽評論家でもないし
「なんとか論」を唱える程緻密で正当な認識をもっている訳でもないから
あくまでも個人の見解に留め置きたいのだが
それでも、自分がジェームスを他のロッカーと比べて「いいな」と思えるのは何故か
それをちょっと書いてみようと思ったのだ.....
まず一つに昔自分にはこういった種類の音楽をやる時に
ある種のコンプレックスがあったんだ....
それは外国の、(この場合、アメリカ、イギリスという事になるけど)
バンドや、シンガーとの血の違いというか、発音、言語、体格、容姿も含めてだが
やっぱり本場とは相当の力量の差があるなと正直にそう思ったんだ
しかし、この本を読むとジェームスはアイリッシュの血筋だそうだが
...そういった血という意味からすると、もう一人
「これは」と思ったジェームスと似たようなミュージシャンをよく知っているのさ
19歳の頃に一緒に演奏していた山口富士夫....
2つ程年上だったけど
ブルースは本当に心に染みたし、ギターも歌も良かった
「やっぱり、富士夫は黒人の血が入ってるから良いんだな」...
心からそう思ったのだけど
ある晩、ボソッとこんな事を彼は言ったんだ
「お前よ~、本当によく英語の歌詞覚えられるな~、俺さ~英語喋れないんだよ
見てくれで英語達者なように勘違いするけどさ、俺からっきしなんだよ....
ましてコンプレックスもあるからアメリカなんかに行きたくねえわ」
富士夫と違ってジェームスが英語が堪能かどうかは解らないけれど
言いたい事は富士夫もジェームスも日本で育った、完璧な日本人なんだっていう事さ
まあ流れる血に多少のプライドはあったんだろうけどね
ましてジェームスとは同い年、
多少容姿で得する事も損する事もあったんだろうけど
同じような給食食って、友達とつるんで女の子ナンパして
色んな悩みも抱えて、育った環境も違うんだろうけど、そんなの気にせず
よくいる隣の教室にいる、話はしなかったけど、
すげえ気になる毛色の変わった不良ってとこかな
だから、この点に関しては、
まず自分の「いい」と思える判断の要素には関係が無いって事さ
そんな人種や国籍や肌の色は自分の良いか悪いかと思う判断基準では無いって事だよ
只音楽が好きで、猛烈に練習して、一杯曲を覚えて
バンドを友達と作って生活するという
只それだけで
じゃあ、次に進もう
それでは演奏スタイルや声やテクニック、そういう面で良いと思ったのかという点なんだけど
まだこの国でそんなにロックというもんが市民権を持っていなかった
そんな時代を知っているんだ
その頃からいわゆる、リードシンガーやピンの歌い手って奴が嫌いでね
こっちは思い楽器しょって運んでセッティングしてだよ
汗かいて演奏して、身体使って
終わりゃばらしてあとかたずけ
横を見るとシンガーがテーブルに座って女の子なんかと喋ってる
楽器を積み終わった頃には、もうどこかへ消えちゃって
まあね、時代が歌手とバンドって括りで動くような今も変わらん芸能界的発想
ふざけんなよだよ
同じギャラかよって事さ
非常に古い偏見に満ちた考え方で若いミュージシャンには笑われるかもしれないけど
バンドってのは歌って、楽器演奏して、コーラスして
曲の構成を責任持ってこなしてなんぼって感じが今でもどこかに残ってて
両方出来なきゃ仕事になんかならなかったぜって事
自分はギターは弾きますが、歌やラスコーは駄目です
あるいは歌なんで楽器はやりません...って
ああそうですか、としか言いようはないけれど
そんな年寄りじみた不満をジェームスなら解って貰えるような気もするんだ
初期衝動の原点が「歌って演奏する」、そんな感じに憧れたからね
そんな話を取り立ててしなくても、「わかってるよ」って感じ
同じ時代、そしてサーキットはちょっと違ってたかもしれないけど
笑って答えてくれるような
今はさ、LIVEHOUSEに行きゃ、アンプもドラムもヴォーカルシステムも
PAもちゃんと用意されてる
便利な時代....有難い事だよね
GSの先輩達の頃はボーやもいてその点は楽だったんだろうけど
日本のロック創世記なんてのは商業的にもからっきしで
自分たちの手探りでなんでもやらなきゃならなかった時代
反対に今はLIVEOUSEにしてみりゃバンドは「一番のお客さま」なんだろうな
とまあ、多分に愚痴めいた昔話になってるけど
そういった面ではギターも歌も抜きん出てるってのは
それだけで、相当凄い事ではあるんだが
良いと思える重要なポイントなのかもしれないけど
ジェームスの歌は最高で、シャウトした時の高揚感ってのかな
本当に好きだし、ギターのリズム感も良いし
なによりダンスミュージックのこだわりは凄いと思うんだけど
だけど、そいつは「共感できると」いう事ではあるけれど
「いい」という事とはこれも又違うような気がするんだ
では最終的にジェームスのどこが良いかっていう事なんだけれど
簡単に言えばミュージシャンにとって「良い」ってのは
こいつと一緒に演奏したいって事なのさ
見たり聞いたりして上手いとかカッコいいとか
凄い才能や有能さに触れるのが解る事はあるんだけど
一緒に演奏したり仕事するのは又別の話
こいつとステージやったらストレス無く、面倒臭くなくって楽しいだろうなって
何か面白いLIVEが出来るだろうなって
そんな夢を持たせてくれる奴の事を言うんだ
何か演奏とか仕事とかのもっと先にある不確かな夢みたいなものさ
ジェームスと初めて会ったのは
COOLSの初めてのアルバムのレコーディング
其の頃、楽器の経験があるのはジェームスと喜市くらいで
後のメンバーは素人ってとこかな
同じレコード会社って事もあって
又当時ミュージシャンとしてまだ未熟って事もあって
彼らの1枚目のLPのレコーディング
実は演奏は全てハルヲフォンがやっているんだ
従ってその頃はジェームスがどんな演奏をするのかは解らなかった
でも其のとき近田がこんな事を言ったのを今でも覚えてるんだ
「60歳になったら、俺とお前と、
そしてジェームスとロックンロールバンドやろうぜ」って..
近田がそう言うんだから、何かもってるんだろうなって其のときは思ったけどね
実際に歌を聞いたのはそれから何ヶ月後かのクールスとのジョイント
ゲストがハルヲフォンで
演奏が終わって楽屋にいたら
隣の楽屋から上条さんが大声でメンバーにどなってるのが聞こえてきたのさ
「いいかお前ら!相手は(ハルヲフォン)滅茶苦茶上手いし、経験もある
お前らひるむな、俺たちは別だって居直って、全力で行け!」....
まあ、正直言って、「凄い芸能界チックなフィールドにいるバンドなんだな」って思ったよ
俺たちは敵なのかい?
それなら見てやろうじゃないかって気持ちで舞台の袖から聞いていたんだ
その頃、歌は舘ひろし、ピッピ、ムラだったんだけど
ジェームスが「SLOWDOWN」歌った時はぶっ飛んだ
これ近田が言う意味も解るなと....
さっき夢の話をしたけどね
この時夢の最初の思いがあったのさ
笑ってしまう程、ガキっぽくて、それがなんなのって言うくらい
狭いフィールドの他に何も影響力の無い夢なんだけどね
「こいつとラスカルズやりてえな..奴がフェリックスで俺がエディーで,
そしたら良い感じだろうな」って.....
それから40年以上がたって
この間、この本の出版記念というLIVEやジェームスのパーティに行ってきたんだ
その間、近田はジェームスの曲を書いたり
個人的に仲良く付き合ったりしてたんだろうけど
俺は本当に何十年ぶりだったんだ
ジェームスの歌はあの頃と変わってなかったし
多少体調を壊していると聞いて心配はしてたんだけど
演奏の途中でこう思ったんだ
「こいつとラスカルズやりてえな..奴がフェリックスで俺がエディーで,
そしたら良い感じだろうな」って.....ww
40年か...
思いつくままに書いたからとりとめのない文章になってしまった
ジェームスに会った時に奴は笑いながらこう言ってきた
「練習、きらいでしょ....ww」って
「うーん、ジェームス....意味は解らないけど、言っている事は解る気がするよ...」
本を贈ってくれた喜市どうもありがとう
そしてジェームス
「今度いつか機会があったらラスカルズやろうぜ!」
俺はずっと、そして今でもそんな夢を持ってるのさ.......。