その出会いは、当店でディスプレイ用として活躍していたことから非売品にしていたおしゃれな布張りのトルソーを、どうしても譲ってほしいと私に声をかけていただいたことから始まりました。
おしゃれなご主人様は、パタンナーの仕事をして見えるとのことでしたので、偶然数日前に有名なデザイナーさんから大量に布の出品を頂いたので、もしよろしかったらご覧になりませんか?と声をかけたところ「是非」とのことで、後日またご来店くださいました。
ご一緒されていたキュートなその女性は使い込みまでのプロセスを堪能できそうな希少な独特なピンク色のレザー原皮を「ブックカバーにしてみたいわ」と言って選んでくださいました。抜群な洋服の着こなしと人柄が溢れているその女性が交換にと当店に出してくださった品々のセレクトとても素敵でした。そんな卓越したセンスに惹かれて、思わず聞いてしまいました。
「当店のディスプレイをしてみませんか?」
突然の私の申し出に快く快諾していただけました。
トントン拍子でコレコーレ恒例の「身体払いの交換!」が決まりました。
コレコーレでは、スタイリストやファッション関係者や各専門分野の目利きの方々に暇な時に気軽に店作りに協力して頂くことでコレコーレにある品物と交換できる方法を「身体払いの交換!」と呼ばれていました。
数日後、突然コレコーレ名物社長とのコラボレートが始まったのでした。
片桐社長のディスプレーへのリクエストは、いつも一貫していて「意外性の創造」がディスプレーの基本コンセプトになっています。
早速、片桐社長は意外性の発想を始めやすい方法として、難解な場所のディスプレーをスタイリストの可奈子さんに依頼しました。
天井にぶら下がっている人体型のボディーの交換です。
2階への階段を上り詰めていくと真っ先にアピールするレディーズのディスプレーです。
割と難しい場所なので、本来はあまり色を多く加えないで同色系統でまとめている場所ですが可奈子さんはスタイリストでもあることから、あえて難解な色あわせを逆さまの人体ディスプレーに組み合わせて天井への驚きを作り出すことに挑戦したようでした。
最初は片桐社長がいくつかのヒントを与えてみていましたが、そのこなし方の巧みさと手早さに感動してすべてやりたいようにやって頂くようにしたようでした。
まだ店内の商品を掌握できていないはずなのに、確かな選択眼で店の中から次々と的確に選ばれていく品々がとても的を得ていて、ここまで多彩なファッ
ションビジネスの経験を積んできた難しい社長の意図を楽しそうに答え続けるら人にあまり出会ったことが無かったのでとても驚きました。
センスとは何か?という質問に片桐社長は、
「目的を最善を尽くして、いち早く果たす能力のこと」と、
とてもシンプルに答えてくれていました。
センスの高さとは、
いかなる状況でも
目的を果たすために用意できる様々な物がもつ本質性を
瞬時に咀嚼して、
目的を果たすために最善化させるために組み合わせ、
加工を加え創造する力そのものが創造力であり、
センスそのものであると言う意味であり、
その組み合わせ方や加工に意外性という視点が
高ければ高いほどに、
そのセンスがより上級なメッセージや
インパクトを生み出す力を発揮するもので、
それこそがハイセンスというものの
能力の本質だと説明されていました。
私には、可奈子さんが生み出していく空間作りそのものが
センスという言葉の本当の意味を
目の前で実感させて頂くことが感じられたような気がしました。
店においてあるものを熟知していても
なかなか柔軟な発想で必要な空間作りに役立つ小物や
代用の見立てを瞬時に行うことは、なかなかできるものではありません。
ましてや、まだ数回しか見ていない店の中から手早く探し出してくる能力をみて本当に驚きました。
完成した最初のディスプレイは、とても強い印象を生み出しました。
まずは、天井に逆さま釣りとなった黒い人体型ボディに組み合わされました。
カラフルストッキングとトロピカルなドルチェ&ガッバーナのジャケット。
天井からアクティブな躍動感のある動きまで表現されました。
次に、あるアーチストがコレコーレのディスプレーのために作ってくれた
大胆な金装飾額縁とシュールな歯茎と口のアートに
2メートル近い金髪を組み合わせて演出した
ドルチェ&ガッバーナの大胆な赤のチェック柄のビスチェワンピース。
二つのドルガバの洋服がとても強い臨場感とシュール感を生み出しました。
シュール感と真っ赤な背景スクリーンとの色彩コントラストとして
緑がシュールというキーワードで大胆に配色されました。
布製のキュービック型のオブジェにとても大きな演出用のサングラスを
組み合わせることで生まれたシュールでユニークな演出は、
シンプルなグリーンのドレスと逆さまの海賊感が踊りだしているボディーの動きに
とても印象的に調和していました。
完成した全体ディスプレーには、色合わせ、素材合わせだけでなく
物語までが演出されました。
真っ赤な背景スクリーンのキャンパスに描かれた緑とイエローのテーマカラーが
パイレーツ(海賊)風に巧妙に配色されたことで、
躍動感のあるシティーパイレーツの話題が今にも店内に溢れてきそうです。
とてもアクティブで印象的な夏がスタイリスト可奈子さんから表現されました。
逆さまな黒人体に
カラフルに組み合わされた人体の手には
シルバーメッシュ感の輝きが
いかにも動き出しそうに釣り糸で巧みに演出されました。
本当に素敵なセンスのディスプレーに大感激でした。
こんなに素敵な交換を何でお返しできたら良いのかと宿題を投げかけられたような
名物「身体払い交換」を体験しました。
早速フェイスブックでも友達になっていただきました。
これからの学びがとても楽しみです。