適当に失望して下さい。私は適当に頑張ります。
この身は人を型として作られた。故に人は私を人形と呼ぶ。
主人は私を人と呼んだ。故に私は人を名乗ろう。
我が身は血肉にて動かず。我が心は心臓にて鼓動せず。我が眠りは作為に過ぎず。
されど主人は私を人と呼んだ。ならば私は人間だ。
我が身は鋼にて躍動する。我が心は電子にて構成する。我が眠りは作為に過ぎぬ。
されど私は人の名を名乗る。人形は主人の命に従うゆえに。
人は私を意味なく作った。故に主人は私に意味を与えた。
主人は望んだ。私が人となることを。
強く、望んだ。
ゆえに私は人となろう。この身は鋼にて作られし身。
されど私には思いがある。
主人の思いが。私の決意が。
この身にその温もりがある限り、私は誰よりも人であり続けよう。
アスファルト / 土瀝青(どれきせい)。
舗装の為に用意された石油層の残滓を釜として青天の陽光は蟻を焼く。
黒と赤褐色で彩られた姿は簡単に加熱し焼却された。
現実者の足先は彼の身を丁寧に磨り潰し
停滞の風はその苦痛を永遠とする。
道路に意味もなく埋葬される魂。
埋葬された墓標に刻む名などない。
故に陽はかつての己の名を名もなき死者に与えてゆく。
その御名は『九尾』
太平の獣にして金色の老。
かつて権勢と共に在った名は冥府へと流転した。