砂蜥蜴と空鴉

ひきこもり はじめました

電源オフ

2005年11月07日 | ログ


携帯を捨ててもう35分にもなろうか。

いま僕は独立している。

世界から独立している。

視界は六面体の白だ。

僕らは箱庭の世界で生活している。

生存に必要なエネルギーは箱が自動的に供給する。

知識も。栄養も。欲望さえも。

ただ繋がりだけが欠落している。

それを補う為に携帯は箱の中の唯一の異物として許された。

発信される電波。

受信される電波。

付随される感情。

送信される愛情。

僕はそれを破棄した。

僕はそれを拒絶した。

別に孤独主義者じゃない。

一人は怖い。

もう電波は届かない。

繋がりは失われ、僕は箱の中で成長していく。

僕はなぜ携帯を捨てたのだろう。

僕はなぜ幸福を捨てたのだろう。

肉体は充足し精神は枯渇していく。

情報は充足し他人は枯渇していく。

僕は携帯を廃棄した。

僕は手の平を広げていく。

僕は携帯を廃棄した。

僕は大きく背伸びをする。

僅かでも電波を吸収するために。