百字ノート
「生きおさめる」という事
日記を書いて、書いたら破り棄てる、という事をしていた時期がある。二十
代の半ば。アテのない人生だから、せめて日毎の生きおさめをしようと自分を
縛っていたのだ。融通のきかぬ性格が生きるゆとりを失わせていた。いや、明
日は希望だと思えない心の空虚さが、どうにかして生に句読点を打ちたいと気
負わせていたのだった。
日記
書いたのち 棄てた。書き棄てることで日を
日に継いだ―黒いじゅず玉のように。
始めるとは
断念であり
断ち切ったおれへの祈りで
それはあったのだ。
書いたのち
棄てた。ゆえに今日
であった。
*この詩は、二十代半ばに書いたもの。詩人石原吉郎と出会って詩を書き始めた。
★たんぽぽの 何とかなるさ 飛んでれば
★いつも読んでくださり、ほんとうに有難うございます。