ナ・テジュ「ひとりで」
ナ・テジュの詩「ひとりで」に導かれた。
ひとりで
群れをなして咲いている花より
二輪、三輪、咲いている花が
ひそひそと 睦まじく見えるときがある
二輪、三輪、咲いている花より
たった一輪 咲いている花が
より堂々として 美しいときがある
きみが今日 ひとりでさみしく
花として立っていることを
そんなにつらく思わないで
(ナ・テジュ作、黒河星子訳『花を見るように君を見る』、かんき出版)
独りぼっち
1
学校で独りぼっちの姉を見たことがある
校舎の窓から遠くをみていた
姉は中三 僕は中一
「あそこに、おまえの姉ちゃんがいるぞ」
僕は友だちに言われるまで気づかなかった
校庭からみあげた姉は
家でもみせないようなさびしげな顔で
遠くを見ていた
2
僕は独りぼっちがいやじゃない子どもだった
転校続きの小学生だったので友だちは少なかった
はじめから作る気がわかなかった
中学へ進んで転校がなくなった 友だちができた
いまでもつき合っている何人かの友だち
友だちっていいなと あったかな笑顔が教えてくれた
3
職場で毎日いじめにあったとき
同期は気づかない様子だった
上司は見て見ぬふりをしているように映った
僕はとうとう病み 会社を休んだ
休職したら 上司はいっぱい気遣ってくれた
同期は見舞いの葉書などをくれた
十か月後に復職したとき 上司は
いじめた先輩社員を転勤させていた
同期は何かと優しくしてくれた
退職して三十年余り いじめた先輩の消息はきかない
上司はすでに亡くなり 同期との音信は途絶えた
けれど ぬくもった記憶はいまもあたたかい
●ご訪問ありがとうございます。
ナ・テジュの詩は、独りぼっちへのエールです。いい詩だと打たれました。
わたしは、その独りぼっちへのエールをもらった者として、そばにいてくれた人の温もりを書いておきたいと思いました。