今日の1枚は、年間マイベストシングル候補最有力のコチラ。
SMAP
「華麗なる逆襲/ユーモアしちゃうよ」
2015/2/18リリース
VICL-38088(通常盤)
ビクターエンタテインメント
思い起こせば、SMAPのCDレヴューをちゃんとするのは初めてだ。何故、今まで書く事が無かったのかと言えば、このブログを始めた頃彼らのシングル楽曲が好みと乖離していたというのが一番大きいかな。
しかし、ここ数年のSMAPの曲に関しては素晴らしく好みだと言えるモノが多く、一度ちゃんと書かないとな~と思っていた。そんなタイミングでリリースされたこの作品。
この最高にカッコいいシングルをレヴューできる喜びは喩え様も無い。
「華麗なる逆襲」を初めて耳にしたのはドラマのエンディング。その時は“あ~イイね~”“カッコいい~”という普通にポジティヴな感想。しかし、その後ラジオ音源を初めて耳にした時、楽曲の持つパワーとアレンジの凝り具合に唸らされた。コレ、当たり前の様にアイドル(SMAPを普通にアイドルと定義してイイのかは別の議論かと思いますが・・・)がシングルとしてリリースする曲じゃねぇなと感じたのです。
作詞・作曲が椎名林檎。それはまぁある程度理解できる人選。以前も書いてるし、独特の世界を反映させるのも提供相手のテイストに寄せるのも出来る人だし。
しかし、この曲を(椎名林檎との組合せは相性がいいのは承知としても)村田陽一に全面的にアレンジさせるという方向性がまず素晴らしすぎて鳥肌立つ。
それに応えた村田陽一が施した化粧がまた見事で。斎藤有太(Wurlitzer)鳥越啓介(W.Bs)玉田豊夢(Dr)の3Rhythm、フロントに西村浩二、菅坡雅彦 (Tp)村田陽一(Tb)竹野昌邦(As)山本拓夫(Ts)の5管ホーンという変則オクテット、加えてグレート栄田ストリングスという布陣は生楽器大好きな私からすればシビレまくる面子。
インストを聴くとよくわかりますが、イントロのウーリッツァーの音色からもうグッと惹き込まれるんです。玉田氏のドラムの音の生々しさやハイハットの切れも申し分なく、ウッドベースのグルーヴも素晴らしい。間奏ではラテンな鍵盤に乗せて村田氏の躍動感溢れるトロンボーンソロ~007チックなクライムジャズ的ホーン~ストリングスという流れが圧巻。そこからのラスサビとオールドジャズテイストのアウトロという一分の隙もない構成・・・・・・もう、ファクターがあり過ぎて逆に辛いくらい(笑)でも、詰め込み過ぎてる訳じゃなくちゃんと引き算もされてる。村田陽一恐るべし。
そして、もう一つのAサイド「ユーモアしちゃうよ」がまた最高で。「Mr.S-SAITEI DE SAIKOU NO OTOKO-」の作・編曲と同じく市川喜康&マシコタツロウ+ha-jの作りだしたお洒落で楽しい極上ポップス。おそらく打ち込みなんだろうと思うんだけど、この古今東西の名ポップの要素が満載な感じ、大好きです。モータウンやフレンチポップの匂いもするし、ザクっとしたギターのコードカッティングや全体を支配する鍵盤の躍動感もイイ感じ。80年代と90年代のおいしいトコ取りな、お茶目でシャレオツな21世紀の渋谷系グルーヴポップという感じ?楽曲の完成度という点だけで言えば「華麗なる~」より上かもしれん。
通常盤に収録されているtofubeatsくんのREMIXもまた最高です。生楽器で仕上げた村田先生に対するDTM側からの完璧な回答を示すリ・アレンジには脱帽。加えられたコーラスが実にイイ味わいで、コレはスマスマにトーフくん呼んで一緒にやって欲しいと熱望してしまう。
この3曲とインスト2曲、この全てが全て素晴らしいというのが驚くべき事です。インストまで一つの楽曲として成立していて楽しめるシングル。しかもアイドルの。自分のお金でレコード買う様になって30数年経ちますが、こんな経験は滅多に無いです。
この曲を引き寄せるSMAPも凄いし、この曲を与えるスタッフも凄い。そして何よりもこの曲を仕上げたクリエイターやプレイヤーが最高に素晴らしい。
こんな楽曲がテレビで流され、色んな人に届く事の幸せを感じています。それはSMAPという存在だからこそなし得る事。その事に感謝します。
そして、願わくばこの曲たちがファン以外の人々の耳にもっと届いて欲しい。こんな楽曲が世の中に溢れて欲しい。
歌詞に共感するとか、歌がうまいとか、泣けるとか、励まされるとか、勇気づけられるとか、私にはどうでもイイです。ポップに求めるモノはそんなコトではありません。
この曲たちの様に、カッコ良かったり、ゾクゾクしたり、身体が自然と揺れたり、ワクワクしたり、気持ち良かったり・・・・そんなコトが私には大事です。
それを十二分に満たしてくれたのがこのシングル。これだけのキャリアを積んで、なお進化を続け、傑作を放つSMAPに心から敬意を表します。