十九才のとき奥さんにドキドキさせられながらここでバイトした本をつくる主人は、もういしまへん。ゆるいことばにハッとさせられる今になってなして、そげんこと。そこでいったん涸れていた涙のつぶが記憶の斜面をこぼれ落ちる鼻先までゆるしとぉくれやす。それをちゃんと唇でつかまえていたいのにことばは逃げる沈黙のうえをゆっくりとしかし確かな足どりで