「親に止められているから…」。
1月25日、小学校で体のあざについて聞かれた長女は口ごもった。
同日に児童相談所に保護され、やっと虐待を告白した。
「幼少の子にとって親の言葉は誰よりも重い
。口止めされたら言えないだろう」。筑紫野署幹部は推し量る。
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「たたいてあざが残るといけないと思った」
捜査関係者によると、母親(29)と八尋潤容疑者(29)は
「やくそくをわすれない」などの誓約書を複数回書かせて机の前に貼らせ、
守らなかった数に応じて水風呂の入水時間を決めたという。
昨年12月29日には両手両足を縛って浴槽いっぱいの水風呂に入れた。
意識を失った長女に蘇生措置をしたり、救急車を呼んだりすることもなかった。
八尋容疑者は水風呂を選んだ理由をこう供述している。
「たたいてあざが残るといけないと思った」
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筑紫野市の事件「溺死や凍死の可能性があった」
「もうおねがい ゆるして」「もうぜったいぜったいやらないからね」。
目黒区の事件で、亡くなった5歳女児は謝罪文を書き残した。
両親から午前4時に起床して書き取りなどを命じられ、学校にも通わせてもらえなかった。
野田市で10歳女児が死亡した事件では、一度は女児が学校のアンケートで虐待を訴えたが、
父親が「お父さんにたたかれたというのはうそ」と女児に書かせた書面を児相に提出していた。
西南学院大の安部計彦教授(児童福祉)は
「親が逮捕される虐待事件が近年大きく報道され、親は傷を隠したり、
見つからないようなやり方をしたりと巧妙化している」と指摘する。
真冬に水温11度の水風呂に入れた筑紫野市の事件でも
「溺死や凍死の可能性があった」(同署幹部)。
長女の命を救えたのは、教諭がたった一つのあざを見逃さなかったからだった。