「白秋」に想ふ―辞世へ向けて

人生の第三ステージ「白秋」のなかで、最終ステージ「玄冬」へ向けての想いを、本やメディアに託して綴る。人生、これ逍遥なり。

『赤毛のアンの今日が幸せになる言葉』

2007年04月01日 | Yuko Matsumoto, Ms.
『赤毛のアンの今日が幸せになる言葉』(松本侑子・著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
  言葉はときに人を傷つける。権威となって圧迫することもある。その一方で、人は言葉に癒されたり、励まされることも少なくない。この本は、『赤毛のアン』のなかから「今日が幸せになる言葉」を抜き出したものだ。『赤毛のアン』は、実際に読んでみるとわかるのだが、世間でよく思われているような少女趣味的な小説ではけっしてない。人生の本質をついた言葉や、物事を前向きに捉えようとする意思を託された言葉があちこちに散りばめられていて、むしろ大人っぽい感じがする。しかし、この本を読むために『赤毛のアン』を知っている必要はない。自分の場合も、この本を手に入れたときは、まだ『赤毛のアン』の内容をほとんど知らなかった。
  心理療法の一つに論理療法とか合理情動療法と呼ばれるものがある。簡単にいえば、クライエントの非合理的な信念や思考パターンを見出し、それを合理的なものに変容させることで問題を軽減しようとする療法である。今日何らかの失敗をしてしまったとき、明日もまた失敗するにちがいないと思い込んでしまうことがよくある。たしかに今日の仕事上の失敗が将来の査定に影響することはあるかもしれないが、明日の失敗に直接つながるわけではない。そのような思い込みこそが非合理的な信念なのである。そんな思考パターンに陥った人に対して、アンはこう答えてくれる―「明日はまだ何の失敗もしていない新しい一日だと思うと、ほっとするわ」と。自分というノートの明日というページにはまだ何も書かれていないのだ。それはまぎれもない事実だ。少なくとも、そう考えることで、明日も失敗する可能性はずっと減るにちがいない。
  心が疲れたり傷ついたときに、この小さな本をそっと開くと、心が少しは楽になる気がする。いわばもっとも手近な心理療法や精神安定剤的な役割を果たしてくれている。アンやマリラや、その他の登場人物の言葉の一つひとつに、松本侑子さんが短いコラムを付しているが、これは“お薬”をよりのみやすくしてくれているようなものだ。人によって効き方はまちまちだろうが、座右に置いておけば思わぬ薬効があるかもしれない。
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2 コメント

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言葉 (でぃー)
2007-08-14 01:39:40
いいね^^言葉についていろいろ考えることが出来たと思う。これからは前向きに進んで生きたいと思った今日は失敗したけど明日は成功するぞって気分で
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ありがとうございます^^♪ (Euler)
2007-11-28 21:32:13
コメント、ありがとうございます。
たかが言葉、されど言葉、です。
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