「白秋」に想ふ―辞世へ向けて

人生の第三ステージ「白秋」のなかで、最終ステージ「玄冬」へ向けての想いを、本やメディアに託して綴る。人生、これ逍遥なり。

『マンガでわかる微分積分』

2009年09月14日 | Science
『マンガでわかる微分積分』(石山たいら・大上丈彦・共著、メダカカレッジ・監修、サイエンス・アイ新書)

  一応理系の学部―それも微積分を多用する学科―を卒業したので、微積分のことはわかっているつもりでいた。ところが本書を読んで、実は微積分のことが何にもわかっていないことがよくわかった。卒業してからそれなりの年数がたってしまったので、いまでは微積分の基本的な公式や計算さえかなり忘れてしまった。それでも当時は微分方程式の解法や偏微分の計算までやった覚えがある。ところが、それは天下りの公式に当てはめて答えを求めていたにすぎなかったのだ。
  微分と積分は逆演算だといわれる。たしかに微分と積分は足し算と引き算、あるいは掛け算と割り算のように計算の仕方が逆になっている。ところが微分と積分との本当の関係については何もわかっていなかった。理系プロパーの人から見ればど素人のように思われるだろうが、不定積分の積分定数(C)の意味についてもこの本を読んで初めて納得がいった。理系出身といいながら、まったくもって恥ずかしい限りだ。
  本書で扱われている範囲は整関数のみだが、読者に対する姿勢というか、著者の心意気はけっして低くない。左ページが文章、右ページがマンガという見開きの構成になっていて、文章とマンガがうまくマッチしている。全体を読んだ後、マンガだけを見直してもいい復習になりそうだ。もちろんこの本だけで微積分のすべてがわかる訳ではない。しかし、初心者にとっては微積分が「なんとなく」わかるようになるだろう。初心者にとっては「なんとなく」わかるという感覚が重要なのだと思う。
  本書はある必要に迫られて読みはじめた。微積分の初心者ではないつもりだったので、「なんとなく」程度はわかっているはずだった。ところが「なんとなく」さえわかっていなかったのだ。この本を読んで初めて微積分が「なんとなく」わかった気がしてきた。脱初心者のつもりでいる者にとって、本当の意味で脱初心者にしてくれた本だともいえそうだ。この気持ちを元手にして、微積分を「なんとなく」わかってくれる人を増やせたらと思う。

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