夢の羅列<心模様はシクラメンのかほり>
夢の中で私は繁華街にいた。
ネオンがうるさいパチンコ屋があり、
けたたましい騒音のディスカウントストアやゲームセンターが並ぶ。
店頭に数台のジューサーが置かれ、生ジュースを販売している果物屋。
ははあ、これは新宿渋谷ではないな。
新宿の大ガード付近をそっくり杉並区は高円寺に持ってきたような、
JRガード下がどうしても街の中心構造になってしまうというような、
それでいて雑多感がいかににも垢抜けないローカル臭のする、
そんな繁華街を私は歩いていた。
出で立ちはジーパンにグレーのパーカーである。
まるで中学生である。
どこへ行くのかというと、
楽器店である。
何かを買うというような目的はなく、
おそらく誰かに呼ばれたのではないか。
わりと前向きな気持ちで私は楽器店に向かっていた。
現実には楽器店などには行かない。
最後に楽器店という場所に足を踏み入れたのはいつだっただろうか。
もう憶えていないくらいに、もしかするとあれは前世だったかな、
というくらいに昔のことだ。
夢に戻ると、
私は楽器店の前まで到着し、階段を上がろうとした。すると、
店の前にとても古い友人が立っていて、私の名を呼んだ。
「おお、○○。何してんの」
「いやー、心模様がいろいろあってね」
若い頃のバイク事故によるよく回らない呂律は昔のままだった。
私はしばらく彼となんとなく話しをしながら、
最初に彼が言った心模様という言葉の使い方について考えていた。
普通、いろいろあって模様のようだから「心模様」なのだが、しかし、
「心模様がいろいろあってね」は間違ってもいない。なぜなら、
模様も色や形、様々だからだ。
でもたぶん私は使わないな。
使うとしたら「心模様が複雑でね」か。
いや、これでは少し表現が硬いか。
「心模様が混濁気味でね」
「心模様が点描のようでね」
「心模様が都会のモザイクのようでね」
「心模様がアクアフレッシュの最後みたいでね」
書くほどに愚かになってきた。
最初に友人が言った使い方が一番すっきりとしてよかった。
というより、
単に「いろいろあってね」でいいのではないか。
街で偶然に会って、いきなり心模様を持ち出されても困惑するというものだ。
などとどうでもいいことを考えていたら、やはり、というか、必然というか、
あの「心もよう」という曲のイントロが聴こえてきた。
井上陽水である。
長いギターのイントロが終わり歌が始まった。
「♪真綿色した、シクラメンより」
おいおい、これでは布施明じゃないか。
「心もよう」の出だしはどうだったか。
夢の中での思考なのでどうしても「心」と「シクラメン」が混濁するのである。
いつの間にか楽器店も繁華街も友人も消えた。そして、
そんな点描意識からやっと私は抜け出し目が覚めた。
「なんにしても、もう全てが古いな」
暑い。
夢の中で私は繁華街にいた。
ネオンがうるさいパチンコ屋があり、
けたたましい騒音のディスカウントストアやゲームセンターが並ぶ。
店頭に数台のジューサーが置かれ、生ジュースを販売している果物屋。
ははあ、これは新宿渋谷ではないな。
新宿の大ガード付近をそっくり杉並区は高円寺に持ってきたような、
JRガード下がどうしても街の中心構造になってしまうというような、
それでいて雑多感がいかににも垢抜けないローカル臭のする、
そんな繁華街を私は歩いていた。
出で立ちはジーパンにグレーのパーカーである。
まるで中学生である。
どこへ行くのかというと、
楽器店である。
何かを買うというような目的はなく、
おそらく誰かに呼ばれたのではないか。
わりと前向きな気持ちで私は楽器店に向かっていた。
現実には楽器店などには行かない。
最後に楽器店という場所に足を踏み入れたのはいつだっただろうか。
もう憶えていないくらいに、もしかするとあれは前世だったかな、
というくらいに昔のことだ。
夢に戻ると、
私は楽器店の前まで到着し、階段を上がろうとした。すると、
店の前にとても古い友人が立っていて、私の名を呼んだ。
「おお、○○。何してんの」
「いやー、心模様がいろいろあってね」
若い頃のバイク事故によるよく回らない呂律は昔のままだった。
私はしばらく彼となんとなく話しをしながら、
最初に彼が言った心模様という言葉の使い方について考えていた。
普通、いろいろあって模様のようだから「心模様」なのだが、しかし、
「心模様がいろいろあってね」は間違ってもいない。なぜなら、
模様も色や形、様々だからだ。
でもたぶん私は使わないな。
使うとしたら「心模様が複雑でね」か。
いや、これでは少し表現が硬いか。
「心模様が混濁気味でね」
「心模様が点描のようでね」
「心模様が都会のモザイクのようでね」
「心模様がアクアフレッシュの最後みたいでね」
書くほどに愚かになってきた。
最初に友人が言った使い方が一番すっきりとしてよかった。
というより、
単に「いろいろあってね」でいいのではないか。
街で偶然に会って、いきなり心模様を持ち出されても困惑するというものだ。
などとどうでもいいことを考えていたら、やはり、というか、必然というか、
あの「心もよう」という曲のイントロが聴こえてきた。
井上陽水である。
長いギターのイントロが終わり歌が始まった。
「♪真綿色した、シクラメンより」
おいおい、これでは布施明じゃないか。
「心もよう」の出だしはどうだったか。
夢の中での思考なのでどうしても「心」と「シクラメン」が混濁するのである。
いつの間にか楽器店も繁華街も友人も消えた。そして、
そんな点描意識からやっと私は抜け出し目が覚めた。
「なんにしても、もう全てが古いな」
暑い。