夢の羅列<ピンク・リーゼント・後編> 20171209
つづき。
(私の開店休業中の店舗を知人に貸したら、とても良い店に改装され、
その店の前で私が出来映えに感激していると当の知人がやってきた。)
おいおい、リーゼントかよ。しかも革ジャン。
そりゃ'50というより、大昔の暴走族だよ。
店の雰囲気が台無しじゃないか。
まあそんなことより、いい店になったな。
いやいや……。
仕事が早いな。
いやいや……。
見習いたいよ。(本音)
いやいや……。
すっかり店を乗っ取られているのに私は素直に彼を褒めた。
普段から口数の少ない知り合いは、やはり言葉少なめだった。
二人でしばらく立ったまま店の経営の話や最近の状況などの話をした。
すると知り合いが、この先の神社の境内で祭礼をやっているので行こうと言い出した。
まあ、どうせ私は立っていても座っていても、どこにいてもボンクラなので、
祭りにでも顔を出せば少しはご利益でもあるかと行くことにした。
未舗装の道を歩き、暗い石の階段を上がると思ったよりも人がいて、
露店の灯りや薄桃色の提灯などで境内はなんとなく卑猥な雰囲気だった。しかも、
場内に流れているのがスローテンポのダブレゲエなのだ。
あちこちで若い子たちが静かに踊っているのが見える。
リーゼントが振り向いて私に訊いた。
「ちょっと暗がりでクスリをやってくるけど、アンタどうする」
私は無言で微笑み、バイバイの手を小さく振った。
リーゼントが石灯籠の陰に消える瞬間、
ポマードに光る後頭部が提灯を反射してピンクに揺れた。
おわり。
つづき。
(私の開店休業中の店舗を知人に貸したら、とても良い店に改装され、
その店の前で私が出来映えに感激していると当の知人がやってきた。)
おいおい、リーゼントかよ。しかも革ジャン。
そりゃ'50というより、大昔の暴走族だよ。
店の雰囲気が台無しじゃないか。
まあそんなことより、いい店になったな。
いやいや……。
仕事が早いな。
いやいや……。
見習いたいよ。(本音)
いやいや……。
すっかり店を乗っ取られているのに私は素直に彼を褒めた。
普段から口数の少ない知り合いは、やはり言葉少なめだった。
二人でしばらく立ったまま店の経営の話や最近の状況などの話をした。
すると知り合いが、この先の神社の境内で祭礼をやっているので行こうと言い出した。
まあ、どうせ私は立っていても座っていても、どこにいてもボンクラなので、
祭りにでも顔を出せば少しはご利益でもあるかと行くことにした。
未舗装の道を歩き、暗い石の階段を上がると思ったよりも人がいて、
露店の灯りや薄桃色の提灯などで境内はなんとなく卑猥な雰囲気だった。しかも、
場内に流れているのがスローテンポのダブレゲエなのだ。
あちこちで若い子たちが静かに踊っているのが見える。
リーゼントが振り向いて私に訊いた。
「ちょっと暗がりでクスリをやってくるけど、アンタどうする」
私は無言で微笑み、バイバイの手を小さく振った。
リーゼントが石灯籠の陰に消える瞬間、
ポマードに光る後頭部が提灯を反射してピンクに揺れた。
おわり。