VOL.18のマクリーン事件判決で示された通り、外国人の入国の自由が保障されないことから、憲法上の権利としては、在留の権利も保障されないと解される。ただ、在日外国人については、入国の自由自体がそもそも問題にならないことから、在留の権利も当然認められると解される。ここでさらに問題となるのは、再入国の自由の問題であり、これを示されたのが森川キャサリーン事件訴訟である。
☆事件☆
米国人の森川キャサリーンは、日本人と結婚して約9年間日本に居住していた。過去に3度海外渡航のための再入国の許可を得ていたが、1982年に韓国に旅行する計画をたて再入国の許可申請をしたところ、法務大臣が指紋押捺拒否を理由としてこれを不許可とした。
そのためキャサリーンは、この不許可処分取消と国家賠償を求めて裁判を起こした事件である。
☆争点☆
①憲法で外国人に海外旅行の自由は保障されないのか。
②憲法で外国人は再入国の自由は保障されないのか。
☆判決☆(最判平成4年11月16日民集166号575頁)
①「外国人には、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではない。」、「在留外国人の海外旅行の自由は、日本国民のそれと本質的に異なるものであり、憲法22条2項の規定が、このような両者の間の差異を超えて、特に在留外国人の海外旅行の自由まで保障したものと解する根拠はないから、在留外国人の海外旅行の自由は、憲法上保障されていないものといわなければならない。」
②「国際慣習法上、国家は外国人の入国を自由に規制することができるので、再入国に関しても当然に権利として保障されているわけではない。」
★学説★
学説では、我が国に生活の本拠をもつ、いわゆる定住外国人の再入国については、新規入国と同一視することはできず、法務大臣の再入国申請に対する裁量の範囲は狭いものになるとする説が有力とされている。
また、条約上の権利(国際人権B規約12条4項)である「自国に戻る権利」には「定住国」も含まれる解釈、見解が有力視されている。