エンジョイ・ライフ 『人生楽ありゃ、苦もあるさ!』

「なすべきことをなせ、何があろうとも・・・・・」(トルストイ)

日本の憲法 Vol.13 判決【武装兵の空輸は武力行使と一体】

2017年09月12日 | Weblog


イラク派遣禁止・違憲確認訴訟
平成20年4月17日、名古屋高等裁判所は、自衛隊のイラク派遣差止などを求める集団訴訟で原告側敗訴の判決を言い渡した。
しかしその傍論において憲法9条1項に違反する活動を含んでいると示した。
それは、「航空自衛隊は、アメリカの要請を受け、クウェートのアリ・アッサーレム空港からバグダッド空港への武装した多国籍軍兵員を輸送している。かかる活動は、イラク特措法3条1項2号にいう『安全確保支援活動』の名目で行われ、それ自体は武力行使に該当しないとしても、少なくとも武装兵員を戦闘地域に空輸するものについては、他国による武力行使と一体化した行動であり、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるをえない。よって、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止した同法2条2項と活動地域を非戦闘地域に限定した同法2条3項に違反し、かつ憲法9条1項に違反する活動を含んでいると認められる」と判示した。

日本の憲法 Vol.12 違憲?合憲?どんどん成立する軍事立法?平和立法?

2017年09月11日 | Weblog


1991年1月17日 湾岸戦争の勃発により、経済大国になった日本に対し、一国平和主義に終始しているのではないかとの批判が吹き荒れる。

1992年6月19日 「PKO協力法」が制定。これによって自衛隊の海外派遣の道が拓かれることになる。

1999年5月28日 「周辺事態法」が成立。これによってそのまま放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等、わが国の平和及び安全に重要な影響を与える事態が発生した場合、日本は積極的にアメリカ軍の後方地域支援、後方地域捜索救助活動、「周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律」に規定する船舶検査活動を行うこととされている。

2001年9月11日 米国同時多発テロ事件を受けて
2001年11月2日 「テロ対策特別措置法」が制定。アメリカ軍支援のための自衛隊の活動範囲がなお一層拡大された。

2003年6月6日 「有事関連3法案」が成立。「安全保障会議設置法一部改正法」、「武力攻撃事態法」、「自衛隊法等一部改正法」の3法。

2003年7月3日 アメリカ、イギリスによるイラク攻撃を機に、イラク派遣のための「イラク支援特別措置法」が成立。

2004年6月14日 「有事関連7法」が成立。「米軍行動関連措置法」、「捕虜取扱い法」、「自衛隊法一部改正法」、「国際人道法違反処罰法」、「特定公共施設利用法」、「海上輸送規制法」、「国民保護法」の7法。

2007年1月9日施行。 それまで内閣府の外局として置かれていた防衛庁が防衛省に昇格する。

★そうして、2015年9月19日に集団的自衛権の行使が可能となる「平和安全法制整備法」が成立していく。

日本の憲法 Vol.11 長沼ナイキ基地事件

2017年09月10日 | Weblog


昭和42年3月に閣議決定された第3次防衛力整備計画に基づき、北海道長沼町に航空自衛隊第3高射群のミサイル基地が設置されることになった。これに反対する原告等は、同基地建設のための国有保安林の指定解除処分を違憲として出訴した事件。

第1審の札幌地裁判決では、請求を認容し国側の敗訴判決となった。
この訴訟の争点は、①平和的生存権の存否、②司法審査の限界内の事件か否か、③憲法前文の解釈、④憲法9条の解釈、⑤自衛隊及び自衛隊法は違憲か否か。
ここでは④⑤の憲法9条の解釈をどのように判事したのかを述べてみます。
憲法9条2項にいう、「陸海空軍」とは「『外敵に対する実力的な戦闘行動を目的とする人的、物的手段としての組織体』であるということができる。このゆえに、それは、国内治安を目的とする警察と区別される。『その他の戦力』は、陸海空軍以外の軍隊か、または、軍という名称を持たなくとも、これに準じ、または、これに匹敵する実力をもち、必要ある場合には、戦争目的に転化できる人的、物的手段としての組織体をいう」。「外部からの不正な武力攻撃や侵略を防止するために必要最小限の実力」は、戦力ではないという被告・国のような考え方に立つと、「現在世界の各国は、いずれも自国の防衛のために必要なものとしてその軍隊ならびに軍事力を保有しているのであるから、それらの国々は、いずれも戦力を保持していない、という奇妙な結論に達せざるをえない」と判事して、自衛隊は、9条に違反するとした。(札幌地判昭48・9・7判時712号24頁)。

2審の札幌高裁判決では、「憲法9条2項前段は、一義的に明確な規定とはいえない。自衛戦力の保有の是非に積極、消極の2説があっていずれの説も一応の合理性を持つ」と判事して、第1審判決を破棄、自判して原告の請求を却下した(札幌高判昭51・8・5行裁例集27巻8号1175頁)。

最高裁判決では、自衛隊の合憲性についてはまったく触れず、訴えの利益なしとして上告を棄却し原告の敗訴が確定した。(最判昭57・9・9民集36巻9号1679頁)。

日本の憲法 Vol.10 第9条の法規範性が欠如していく Ⅰ

2017年09月09日 | Weblog


防衛力、防衛費が拡充されていく変遷を追ってみる。
1950年6月、朝鮮戦争の勃発を契機に、マッカーサー元帥の指示により、同年7月警察予備隊が創設され再軍備への第1歩が踏み出される。
1951年9月、サンフランシスコ講和会議で「日本国との平和条約」ならびに「日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約」(旧安保条約)が調印され、翌1952年4月発効される。同時にGHQが廃止される。
同年10月、警察予備隊の改変が行われ、陸上部隊、保安隊、海上部隊として設置される。
1954年3月、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定」(日米MSA協定)が調印され、同年5月に発効される。
同年7月、「防衛庁設置法」ならびに「自衛隊法」が制定される。
その自衛隊法が定める自衛隊の任務とは、自衛隊法3条に「自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全のため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務」と定めている。
1960年1月、旧安保条約は、全面的に改訂され、新たに「日本国とアメリカ合衆国との間に相互協力及び安全保障条約」(新安保条約)が成立し、膨大な防衛費を投入するようになり今日に至っている。

日本の憲法 Vol.9 第9条2項【戦力及び交戦権の否認】

2017年09月08日 | Weblog


「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

この2項にいう「前項の目的を達するため」との解釈には、①全面放棄説と②部分放棄説がある。
①全面放棄説:1項に掲げられた目的である「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し」を指すとして、2項後段で一切の戦力の保持が禁止され、交戦権が否認されていることから、自衛のための戦力の保持も禁止されていると解釈をする説。(通説)
②部分放棄説:「前項の目的」とは、「国際紛争を解決する手段として」の戦争を放棄することを指し、したがって、侵略戦争のためには戦力の保持は許されないが、自衛のための保持は禁じられていないと解釈をする説。

次に2項でいう「戦力」とは、一般に「外敵の攻撃に対して実力をもってこれに対抗し、国土を防衛する事を目的として設けられた人的・物的手段の組織体」を指す。(多数説)
これに従えば、現在の自衛隊は、その人員・装備・編成等からして、9条2項にいう「戦力」に該当すると言わざるを得ない。

さらに、2項でいう「国の交戦権は、これを認めない」との規定も2説に分かれる。
第1節:国の交戦権を認めないとは、国が有する戦争を行う権利を否認する事。すなわち、すべての戦争を否認することを意味すると解釈する説。
第2節:国の交戦権をもって、国家が交戦国として国際法上認められている各種の権利。たとえば敵国兵力の殺傷、船舶の臨検・拿捕の権利、占領地行政に関する権利などの総体と解釈する説。

日本の憲法 Vol.8 第9条1項 【戦争の放棄】

2017年09月07日 | Weblog


「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」

後段の「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」の「国際紛争を解決する手段としての戦争」とはどんな戦争を意味しているのか論争が絶えない。
①部分放棄説:国際法上の用語例に従って解釈すると、侵略戦争を意味し、ここで放棄される戦争とは侵略戦争のみであるする説。(多数説)
②1項全面放棄説:戦争はすべて国際紛争解決のためのものであり、国際紛争を解決する手段としての戦争とそうでない戦争を区別する事は実質上困難であるとして、9条1項で自衛戦争を含む一切の戦争が放棄されているとする説。

日本の憲法 Vol.7 不敬罪は存立している?【プラカード事件】

2017年09月06日 | Weblog


不敬罪とは、明治憲法下においての皇室に対する罪で天皇が神聖不可侵であり日本国の元首として統治権の主る地位に在るとして設けられたもので、天皇の尊厳を維持することが国家の存立を確保する所以であるとの当時の国民の確信に基づいて制定された法律であり、敗戦にともない新日本国憲法の施行とともに国民主権により国民の自由意思への変遷に至り、刑法75条の不敬罪を含む73条から76条までの皇室に対する罪が存立する基礎を失い、刑法より削除されるに至った(昭和22法124)。
しかし、昭和21年5月19日の「食料メーデー」デモに参加した被告人X等は、天皇を侮辱したことが書かれたプラカードを掲げ参加し逮捕され、刑法75条不敬罪に問われ、1審では刑法230条1項の名誉棄損罪として懲役8ヵ月に処された。
2審の東京高等裁判所は、敗戦にともなう天皇制の変貌は顕著であるが、不敬罪は天皇個人に対する所為は名誉棄損罪の特別罪にあたるとし次のように判示した。
「新憲法の下に於いても天皇は一定範囲の国事に関する行為を行い、特に国の元首として外交上特殊の地位を有せられるのみならず、依然栄典を授与し、国政に関係なき儀式を行う等国家の一員としても一般人民とは全く異なった特別の地位と職能とが正当に保持せられてこそ始めて日本国がその正常な存立と発展とを保障せられるものであることを表明したものと認むべきである。・・・果たして然らば天皇の保有せられる国家上の地位は新憲法の下においても一般国民のそれとはその内容において相当の相違があり、この差異は本件犯行当時においてはこれに優るとも劣らぬものがあったことは健全な国民感情と社会通念に照らして十分にこれを窺ひ知ることが出来る。すなわちかかる条件の下にあっては、天皇個人にたいする誹毀誹謗の所為は依然として日本国ならびに日本国民統合の象徴にひびを入らせる結果となるもので、従ってこの種の行為にたいして刑法不敬罪の規定が所謂名誉棄損の特別罪としてなお存続しているものと解するを相当とする。」(東京高判昭和22年6月28日刑集2巻6号607頁)
被告人は上告をしたが、昭和23年5月26日、最高裁大法廷判決(刑集2巻6号529頁)は原判決を維持した。

日本の憲法 Vol.6 天皇に民事裁判権は及ぶか?

2017年09月04日 | Weblog


昭和63年秋以降、昭和天皇の重病の快癒を願う「記帳所」が多くの自治体において設置され、それに公金が支出された。
千葉県住民のX氏は、千葉県が「県民記帳所」設置に公金を支出したのは違法であり、昭和天皇の不当利得返還債務を現天皇が相続したとして、地方自治法242条の2第1項4号に基づき千葉県に代位して返還請求を求める住民訴訟を提起した。
1審の千葉地裁は、民事裁判権の及ばない相手を被告とする訴えで不適法却下という判決を下し、原審の東京高裁もそれを支持した。
原告はそれを不服として、訴訟手続きの法令違反、裁判を受ける権利の侵害、平等原則違反などを理由に上告した。
最高裁は、「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ、天皇には民事裁判権が及ばないものと解するのが相当である。したがって、訴状において天皇を被告とする訴えについては、その訴状を却下すべきものであるが、本件訴えを不適法として却下した第1審判決を維持した原判決は、これを違法として破棄するまでもない。記録によれば、本件訴訟手続きに所論の違法はなく、また、所論違憲の主張はその実質において法令違背を主張するものにすぎず、論旨は採用することができない。」と述べ、『上告棄却』の判決を言渡し原告側敗訴が確定した。(最判平成元年11月20日民集43巻10号1160頁)

日本の憲法 Vol.5 砂川事件

2017年09月03日 | Weblog


1957年7月、米軍立川飛行場周辺に基地拡張反対派の集団が結集し、集団の一部が立ち入り禁止の境界柵を壊し飛行場境界内に約1時間にわたり立ち入ったため、23名が「旧日米安保条約3条に基づく行政協定に伴う刑事特別法」2条違反容疑で逮捕、うち7名が10月に起訴された。
第一審東京地裁判決(伊達判決)は、「わが国が外部からの武力攻撃に対する自衛に使用する目的で合衆国軍隊の駐留を許容していることは、指揮権の有無、合衆国軍隊の出動義務の有無に拘わらず、日本国憲法9条2項前段によって禁止された陸海空軍その他の戦力の保持に該当するものといわざるを得ない」と判事した(東京地判昭和34・3・30下判集Ⅰ巻3号776頁)。
最高裁は、憲法9条2項が「その保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊はたとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである」と判事した(最大判昭和34・12・16刑集13巻13号3225頁。第3部第6章第2節3参照)。

日本の憲法 Vol.4 象徴天皇制

2017年09月02日 | Weblog


日本国憲法では、明治憲法下における天皇主権の否定と変革により国民主権のもとで天皇の憲法上の地位を「象徴」と規定した。
なぜ天皇制廃絶に至らなかったのか、なにゆえ天皇象徴性として日本国憲法に留め置くことになったのかについて①天皇条項宣言的規定説と②天皇条項創設的規定説が対立している。
①「天皇条項宣言的規定説」:明治憲法的天皇制を排斥しつつも、歴史的存在としての「天皇」を存続せしめるものであると捉える説。
②「天皇条項創設的規定説」:歴史的存在としての天皇を完全拒否した上で無から新たに「天皇」と称する存在を創設したものであると捉える説。
また日本国憲法は、国民主権主義のもと天皇が日本国の象徴であるとの地位は日本国民の総意に基づくものとされている。