第四章 自閉症スペクトラム障害をもつ子どもの行動
○1.「自閉性障害をもつ子どもの多く、おそらくはそのほとんどは、乳児期から社会性とコミュニケーションの障害の徴候を示す」
☆ごくごくまれに社会性とコミュニケーションの障害を示さない自閉症の子どももいる?
もう少し年長になってその特徴があら わになってくるということだろうか?
自閉性障害とは社会性とコミュニケーションの障害を意味するので、それが見られないということは
自閉性障害ではないということなので。
2.乳児は動き回ることができないので、障害の徴候はわかりにくく親は見逃しやすい。
(1)乳児期の行動
1. 親の中には誕生間もなく何かがおかしいと感じる場合があるが、なぜそう感じたかはほとんど言うことができない。
☆この何か、こそが本態に関連しているのでは?
2.お乳をうまく吸えないなど授乳の問題はかなり共通している。
3. 三つのタイプ
①一番多いのが「天使の赤ちゃん」:おとなしく要求が少なく、一日中静かに満足そうにしているタイプ
④わずかだが、昼も夜も泣き叫びいくらあやしたりなだめたりしても止まらない赤ちゃん
③どちらにもあてはまらず、何の異常な特徴も示さないタイプ
4.サイモン・バロン=コーエン;生後18ヶ月の段階で、人や動物や行き過ぎる光景への好奇心をもったり、
そうしたものを見たり指さしたりして母親の注意を引こうとしない場合、その子はまず自閉症の可能性が高い。
5. 身体的には普通に成長するが、運動スキルの発達は遅れることが多い。とりわけアスペルガー型の人に顕著
6. 言語面の発達が遅れがち。
(2)診断的意義をもつ行動
○自閉症スペクトラム障害の診断的意義をもつ行動は、就学前の年齢で現れてくる
1.社会的相互作用の障害
a)孤立群
b)受動群:最も数が少ないタイプ
☆経験的にはむしろ最も多いと感じる。
c)積極奇異群
d)形式張った大仰な群:見られるのは青年後期以降。最も能力が高く良好な言語レベルの人たちに現れる
(2)コミュニケーションの障害
○言語に障害がある場合もない場合もある、しかし、その使い方に問題がある。
1.話し言葉を使うこと
・話し言葉の発達と異常-よく見られる ←カナーは、カナー症候群の核心部分とみていた
・ASDの子どもの4,5人に人はくらいは言葉を話さず、生涯にわたって話さないまま。
・その他の子ども達は、話し言葉が発達するが、普通に比べてずっと遅れて始まる
・エコラリア、遅延んおエコラリアがよく見られる
*状況とそのときに他者が発したことばとがそのまま結びついて学習される傾向大。
・同じ言葉や文を特定の状況でいつも使う。
・繰り返し言葉の段階から、次の段階-自分の力でわかった単語や語句を必要な時に使用することへと進む子どももいる。
・文法的、意味的間違いを繰り返しながら、少しずつ。
・前置詞抜き、前置詞の使い方の間違い、反対語の混同、対になっている言葉の混同
・大人になっても話し言葉に異常が残る人もいる。
言葉が進歩し、正しい文法と豊富な語彙を発達させる人もいる ~ アスペルガー型
しかし、そのような人でも、気づかれにくい問題をいくつも抱えている。
・話すことができるASDの人たちは、繰り返しの内容が多く、同じ質問を延々と繰り返したり、
自分が特に関心を持っていることの長話を相手の人の反応いかんに関わらずしゃべり続けたりする。
2.話し言葉を理解すること
・理解の程度についても大きな幅がある。
・部屋の外から一つまたは二つの物を取ってくるようにさせれば、その言葉の意味を理解したかどうかがより明らかになる。
・言語理解の混乱が起きる原因の一つは、言葉の意味理解に柔軟性を欠くこと。
・同じ発音で異なる意味をもつ単語で問題が生じやすい。
・文の中の一,二語だんけに反応して、そのほかを無視してしまう傾向。
・最も大きな特徴は、言葉を文字通りに解釈すること。
3.口調と声量調節
・不自然な口調で話し、単調だったり変な抑揚があったり、声量の調節が難しい場合が多い。
4.非言語的コミュニケーションを使うこと、理解すること
・言語障害があっても自閉性障害をもたない子ども達は、ジェスチャーやパントマイムなどでコミュニケーションを補うが、
ASDを持つ場合、代替のコミュニケーションも適切に使用できない。
・ASDの幼児の非言語的コミュニケーションの理解はには多くの問題がある。しかし、成長につれて、明確で単純なジェスチャーや
表情の意味がいくらかわかるようになる。さらに言われたことの全体的な前後関係ばかりでなく、人の動作の中にも手がかりを見つ
けることによって、能力以上の理解ができるようになる。
(3)想像力の障害
・ASDの子どもたちは、ごっこ遊びや創造的な活動がスムーズには発達しない。
・おもちゃは物の感覚的な楽しみだけのためにいじるか、機能的な使用のためにのみ使う。
・想像力らしきものを見せる子どももいるが単純な流れを反復していることがほとんど。
・そのような遊びに友だちを誘うことはないが、あるとしても友だちにその繰り返しの動作に加わることを求める。
・子ども同士の創造的な遊びには加わらない。関心をもったとしてもどうしたらいいかわからない。
・ASDの子どもによって行われる想像的と思われるもう一つの行動のタイプ:TVや本の主人公のまね。
動きは限定的、反復的で創意はない。その特徴は、子どもが登場人物や物のふりをしているよりはそのものになりきっていること。
・ASDの人たちは、①想像的な空想を楽しむことはしない。②他人の感情の理解が限られるか全くなく、喜びや悲しみを分かち合うこ
とは困難。③人と考えを共有したり。現在や過去の経験を将来の計画に活かす能力に欠けている。
・彼らは楽しみを、自分の特異な興味の中に見いだす。
(4)反復した常同的動作
・この側面は、想像力の障害というコインの裏面とみなすことができる。
・(想像力およびそれを他者と共有する楽しみがなれけば)何らかの楽しみをもたらす動作を反復して安心することだけになる。
(ⅰ)単純な反復的動作
・最も単純なものは、反復的な感覚的体験
~いろいろな物の表面を味わい、かぎ、感じ、あるいは叩いたり、機械音を聞いたり、
光り輝く物をじっと見詰つめたり、目のそばで手や物をひねったりひっくり返したり、物をさまざまな角度から見つめたり、
電灯をつけたり消したり、物をくるくる回したり、あるいは回っているものを見たりする
時に、自分を噛んだり、頭突きをしたり、引っ掻いたりするなどの自傷のカタチを取る。
→悩み、怒りや欲求不満の反応の一つであることが多い、また、することのないときにする反復的行動である場合もある。
(ⅱ)手の込んだ反復的なルーチン
・こうしたルーチンの固執は、カナー型の子どもに見られる。
・物を一直線に並べる、複雑な順序で体を動かす、持ち物を厳密な配列にするなど
・親が始めた行動から受け継いだルーチン:同じ道、同じ席、
・特定のものへの愛着
・偏食
・ビデオや音楽、音楽と視覚刺激を組み合わせたコマーシャル
・能力の高い子どもでは、特定のものへの虜になるかたちをとる。時刻表、恐竜、天気、天文学など。その興味は収集すること。記録
すること。それについておしゃべりすること。
[感想・考察]
ASDの人たちの状態像が具体的によく描かれていてわかりやすい。現在においてもASDの人たちの状態像を記述するとして、ウイング氏以上のことを書くのは難しいだろう。とすると、次の課題というか謎は、こうし状態像や行動特徴はなぜどのように生じるのかと
いうことであろう。ウイング自身は、それを脳神経学によって解明されていくものと考えているようだ。しかし、脳と状態像・行動特徴との関連がわかってくるにしても、なぜそのようなことが生じるのかの説明は心理学的なものになるのではなかろうか?
たとえば、反復的行動や固執は、心理学的な法則として仮説される『なじみの法則』(一度経験したことやなじんだことは、そうしても生き延びることができているという事実によって、ポジティブな性格を帯びるという法則)によって説明されるかもしれない。
○1.「自閉性障害をもつ子どもの多く、おそらくはそのほとんどは、乳児期から社会性とコミュニケーションの障害の徴候を示す」
☆ごくごくまれに社会性とコミュニケーションの障害を示さない自閉症の子どももいる?
もう少し年長になってその特徴があら わになってくるということだろうか?
自閉性障害とは社会性とコミュニケーションの障害を意味するので、それが見られないということは
自閉性障害ではないということなので。
2.乳児は動き回ることができないので、障害の徴候はわかりにくく親は見逃しやすい。
(1)乳児期の行動
1. 親の中には誕生間もなく何かがおかしいと感じる場合があるが、なぜそう感じたかはほとんど言うことができない。
☆この何か、こそが本態に関連しているのでは?
2.お乳をうまく吸えないなど授乳の問題はかなり共通している。
3. 三つのタイプ
①一番多いのが「天使の赤ちゃん」:おとなしく要求が少なく、一日中静かに満足そうにしているタイプ
④わずかだが、昼も夜も泣き叫びいくらあやしたりなだめたりしても止まらない赤ちゃん
③どちらにもあてはまらず、何の異常な特徴も示さないタイプ
4.サイモン・バロン=コーエン;生後18ヶ月の段階で、人や動物や行き過ぎる光景への好奇心をもったり、
そうしたものを見たり指さしたりして母親の注意を引こうとしない場合、その子はまず自閉症の可能性が高い。
5. 身体的には普通に成長するが、運動スキルの発達は遅れることが多い。とりわけアスペルガー型の人に顕著
6. 言語面の発達が遅れがち。
(2)診断的意義をもつ行動
○自閉症スペクトラム障害の診断的意義をもつ行動は、就学前の年齢で現れてくる
1.社会的相互作用の障害
a)孤立群
b)受動群:最も数が少ないタイプ
☆経験的にはむしろ最も多いと感じる。
c)積極奇異群
d)形式張った大仰な群:見られるのは青年後期以降。最も能力が高く良好な言語レベルの人たちに現れる
(2)コミュニケーションの障害
○言語に障害がある場合もない場合もある、しかし、その使い方に問題がある。
1.話し言葉を使うこと
・話し言葉の発達と異常-よく見られる ←カナーは、カナー症候群の核心部分とみていた
・ASDの子どもの4,5人に人はくらいは言葉を話さず、生涯にわたって話さないまま。
・その他の子ども達は、話し言葉が発達するが、普通に比べてずっと遅れて始まる
・エコラリア、遅延んおエコラリアがよく見られる
*状況とそのときに他者が発したことばとがそのまま結びついて学習される傾向大。
・同じ言葉や文を特定の状況でいつも使う。
・繰り返し言葉の段階から、次の段階-自分の力でわかった単語や語句を必要な時に使用することへと進む子どももいる。
・文法的、意味的間違いを繰り返しながら、少しずつ。
・前置詞抜き、前置詞の使い方の間違い、反対語の混同、対になっている言葉の混同
・大人になっても話し言葉に異常が残る人もいる。
言葉が進歩し、正しい文法と豊富な語彙を発達させる人もいる ~ アスペルガー型
しかし、そのような人でも、気づかれにくい問題をいくつも抱えている。
・話すことができるASDの人たちは、繰り返しの内容が多く、同じ質問を延々と繰り返したり、
自分が特に関心を持っていることの長話を相手の人の反応いかんに関わらずしゃべり続けたりする。
2.話し言葉を理解すること
・理解の程度についても大きな幅がある。
・部屋の外から一つまたは二つの物を取ってくるようにさせれば、その言葉の意味を理解したかどうかがより明らかになる。
・言語理解の混乱が起きる原因の一つは、言葉の意味理解に柔軟性を欠くこと。
・同じ発音で異なる意味をもつ単語で問題が生じやすい。
・文の中の一,二語だんけに反応して、そのほかを無視してしまう傾向。
・最も大きな特徴は、言葉を文字通りに解釈すること。
3.口調と声量調節
・不自然な口調で話し、単調だったり変な抑揚があったり、声量の調節が難しい場合が多い。
4.非言語的コミュニケーションを使うこと、理解すること
・言語障害があっても自閉性障害をもたない子ども達は、ジェスチャーやパントマイムなどでコミュニケーションを補うが、
ASDを持つ場合、代替のコミュニケーションも適切に使用できない。
・ASDの幼児の非言語的コミュニケーションの理解はには多くの問題がある。しかし、成長につれて、明確で単純なジェスチャーや
表情の意味がいくらかわかるようになる。さらに言われたことの全体的な前後関係ばかりでなく、人の動作の中にも手がかりを見つ
けることによって、能力以上の理解ができるようになる。
(3)想像力の障害
・ASDの子どもたちは、ごっこ遊びや創造的な活動がスムーズには発達しない。
・おもちゃは物の感覚的な楽しみだけのためにいじるか、機能的な使用のためにのみ使う。
・想像力らしきものを見せる子どももいるが単純な流れを反復していることがほとんど。
・そのような遊びに友だちを誘うことはないが、あるとしても友だちにその繰り返しの動作に加わることを求める。
・子ども同士の創造的な遊びには加わらない。関心をもったとしてもどうしたらいいかわからない。
・ASDの子どもによって行われる想像的と思われるもう一つの行動のタイプ:TVや本の主人公のまね。
動きは限定的、反復的で創意はない。その特徴は、子どもが登場人物や物のふりをしているよりはそのものになりきっていること。
・ASDの人たちは、①想像的な空想を楽しむことはしない。②他人の感情の理解が限られるか全くなく、喜びや悲しみを分かち合うこ
とは困難。③人と考えを共有したり。現在や過去の経験を将来の計画に活かす能力に欠けている。
・彼らは楽しみを、自分の特異な興味の中に見いだす。
(4)反復した常同的動作
・この側面は、想像力の障害というコインの裏面とみなすことができる。
・(想像力およびそれを他者と共有する楽しみがなれけば)何らかの楽しみをもたらす動作を反復して安心することだけになる。
(ⅰ)単純な反復的動作
・最も単純なものは、反復的な感覚的体験
~いろいろな物の表面を味わい、かぎ、感じ、あるいは叩いたり、機械音を聞いたり、
光り輝く物をじっと見詰つめたり、目のそばで手や物をひねったりひっくり返したり、物をさまざまな角度から見つめたり、
電灯をつけたり消したり、物をくるくる回したり、あるいは回っているものを見たりする
時に、自分を噛んだり、頭突きをしたり、引っ掻いたりするなどの自傷のカタチを取る。
→悩み、怒りや欲求不満の反応の一つであることが多い、また、することのないときにする反復的行動である場合もある。
(ⅱ)手の込んだ反復的なルーチン
・こうしたルーチンの固執は、カナー型の子どもに見られる。
・物を一直線に並べる、複雑な順序で体を動かす、持ち物を厳密な配列にするなど
・親が始めた行動から受け継いだルーチン:同じ道、同じ席、
・特定のものへの愛着
・偏食
・ビデオや音楽、音楽と視覚刺激を組み合わせたコマーシャル
・能力の高い子どもでは、特定のものへの虜になるかたちをとる。時刻表、恐竜、天気、天文学など。その興味は収集すること。記録
すること。それについておしゃべりすること。
[感想・考察]
ASDの人たちの状態像が具体的によく描かれていてわかりやすい。現在においてもASDの人たちの状態像を記述するとして、ウイング氏以上のことを書くのは難しいだろう。とすると、次の課題というか謎は、こうし状態像や行動特徴はなぜどのように生じるのかと
いうことであろう。ウイング自身は、それを脳神経学によって解明されていくものと考えているようだ。しかし、脳と状態像・行動特徴との関連がわかってくるにしても、なぜそのようなことが生じるのかの説明は心理学的なものになるのではなかろうか?
たとえば、反復的行動や固執は、心理学的な法則として仮説される『なじみの法則』(一度経験したことやなじんだことは、そうしても生き延びることができているという事実によって、ポジティブな性格を帯びるという法則)によって説明されるかもしれない。