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読書メモ ローナ・ウイング著、久保ら訳 自閉症スペクトラム 東京書籍 1998 その4

2020-03-24 11:41:38 | 発達臨床
第三章 診断するということ

(1)自閉性障害の診断には難しい面が残っている
1.見ただけでわかるというわけにはいかない。
 2.自閉症の診断ができる検査はないし、サブグループを鑑別できる検査も開発されていない
 3. 血液、X線、脳スキャン、脳波およびその他の身体的検査をしても答えは出せない
4. 「心の理論」の諸検査はあるが、それで診断はできない
(2)診断は、幼少期から見られる行動パターンを知ることによってなされる
  ○診断のために提案されたシステムでの診断に当たって不可欠とされる特徴の共通点
   ①社会的相互作用の障害
   ②コミュニケーションの障害
   ③想像性の障害
   ならびに、硬直した反復的な行動パターン 
○しかし、諸事情によって、診断に不一致が起こる。
○診断にあたっては、
   1)乳児期からの病歴と現在の行動についての記述が、親の面接を通じて体系的に集められ    ること → 自閉症スペクトラム障害の診断用に組まれた質問票を用いること
2)行動観察
3)一連の心理検査
(3)サブグループ
1.カナー型とアスペルガー型の典型例はある。両方の特徴を持っている例もある。年齢によ  って変化することもある。
2. ICDやDSMでは、アスペルガー型は初語の発現時期や適応スキルの発達に遅れはないこと  を他の自閉症との違いとしている。しかし、アスペルガー型の人の多くに言語開始の遅れな  どがよくみられる。
3. ICD-10における非定型自閉症=DSM-4における広汎性発達障害という診断
→ 親にとっては役に立たない。同じ症状を示し同じニーズを抱えているから。
 4.「小児期崩壊性障害」
:生後2年まで発達が正常で、以後次のうち二つの領域でスキルを喪失する
    言語、遊び、社会的スキルまたは適応行動、排泄の制御、運動スキル
→ この診断名も混乱の元。
  自閉性障害をもつ子どもで、生後1年ごろにはことばが出たのにその後話さなくなるこ  とがある。その後話すようになるときもならないときもある。
  a.臨床像の上で自閉症と区別がつかない。b.経過や予後の点では、同じ重症度にある他                      の自閉症障害と同じ
崩壊という言葉:ごくまれに脳の進行的な病変があるためにそうなる場合があり、
その進行過程の一段階において自閉的な行動パターンが観察される
この病態については、本態が何であるかをはっきりさせる必要がある。その上で、通常の自閉症スペクトラム障害と区別する必要がある。
→ 自閉症スペクトラム障害の人を援助する立場からは、
   自閉症スペクトラム障害の下部グループの診断は、ほとんど意味がない。
 (臨床的に重要なこと)①まずその人が自閉症スペクトラム障害であるかどうかの区別
②その上で、能力のパターンを見極める

[感想・考察]
・この人はASDだなということはわりととらえやすいが、確かにそうかという医学的診断となると相当な情報を集めてでないと
 確度が下がるということと、情報がいくらあったとしてもそれはあくまでも“状況証拠”の次元でしかないという困難がある。
 それに、最近よく経験するが、発達障害の知識があると人をそのように理解すること・類別することが多くなるということで
 ある。それによってその人についての理解が深まり、関わりに役立ち、結果としてその方が生きやすくなればいいのだけれど
 そして、そのような場合が多いのだなということも感じている。ただ、しかし、とも思う。この判然としない思いは何だろう?
・孤立型や受動型などのタイプ分けはかって盛んに活用されて、それなりに子ども理解には役立つ面があったと思うが、現在は
 どうなのだろうか?現在もなお役立つ類型として活用されているのだろうか? このタイプ分けには、もう一つ謎があって、
 それは発達との関連である。この類型は、ひょっとして発達次元の違いを表しているのではないかという問いである。
・ASDの下位分類について批判的なウイングの意見には共感を覚える。ただ、アスペルガータイプという分類は、便利で有効だ
 なという経験的な感触はまだ強い。しばらく、その感触と分類の意義との矛盾を持っておくことが大事かなと思う。


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