土地の借り主が有する権利に「地上権(ちじょうけん)」と「借地権(しゃくちけん)」があり、違いが難解です。
地上権と借地権は、「借りた土地をどのように使用できるか」「その権利を譲渡や転貸する際の土地所有者の承諾の必要性」「土地が貸し借りされる期間」という三つの違いがあります。
地上権と借地権をわかりやすく解説し、三つの違いを簡単にご紹介しましょう。
地上権と借地権の一つめの違いは、借りた土地をどのように使用できるか
まずは、地上権と借地権をわかりやすく簡単に解説します。
地上権とは、工作物や竹木を所有するために他人の土地を使用する権利です。
工作物とは建物や道路、太陽光発電設備、駐車場、トンネル、高圧電線などであり、竹木とは樹木や竹を指します。
地上権は「地上権設定契約」を結びつつ土地が貸し借りされることにより土地の借り主が取得し、地上権を有する土地の借り主は、地上権を行使して借りた土地に工作物を建てつつ使用したり、竹木を育成して商売をすることなどができます。
これに対して、借地権とは、建物を所有するために他人の土地を使用する権利です。
借地権は「借地契約」を結びつつ土地が貸し借りされることにより土地の借り主が取得し、借地権を有する土地の借り主は、借地権を行使しつつ借りた土地に住宅を建てて居住することなどができます。
つまり、地上権は工作物と竹木を所有するために他人の土地を使用する権利であるのに対し、借地権は建物を所有するためのみに他人の土地を使用する権利であるというわけです。
これが、地上権と借地権の一つめの違いです。
つづいて、地上権と借地権の二つめの違いをご紹介しましょう。
地上権と借地権の二つめの違いは、権利を譲渡や転貸できる条件
地上権と借地権の二つめの違いは、土地の借り主がその権利を譲渡や転貸できる条件です。
「譲渡」とは有償無償問わず何かしらを譲り渡すことであり、売却も含まれます。
転貸とはいわゆる又貸しであり、「借りた土地をさらに第三者に貸す」などの行為を指します。
そして、地上権を有する土地の借り主は、土地所有者の承諾がなくとも、地上権を譲渡や転貸することが可能です。
これに対して、借地権を有する土地の借り主は、原則として土地所有者の承諾がなければ、借地権を譲渡や転貸できません。
なお、地上権も借地権も土地の借り主が有する権利ですが、土地が貸し借りされる際は、地上権より借地権が採用される傾向があります。
その理由は、先述のとおり、借地権を譲渡や転貸する際は、原則として土地所有者の承諾が必要となるためです。
土地所有者の立場からすれば、自らの承諾がなくとも譲渡や転貸できる地上権は好ましくなく、自らの承諾がなければ譲渡や転貸できない借地権が採用されるのが通例となっています。
つづいて、地上権と借地権の三つめの違いをわかりやすく簡単にご紹介しましょう。
地上権と借地権の三つめの違いは、土地が貸し借りされる期間
地上権と借地権の三つめの違いは「土地が貸し借りされる期間」です。
地上権は、土地の借り主と土地所有者が、土地を貸し借りする期間を自由に設定できます。
これに対して、借地権は、最短でも30年にわたり土地が貸し借りされます。
借地権は、土地の借り主と土地所有者が「借地契約」を結びつつ土地が貸し借りされることにより、土地の借り主が取得しますが、その契約に30年に満たない期間が設定されていたとしても無効です。
最短でも30年にわたり土地が貸し借りされるのは、借地権を有する者を保護するためです。
借地権を有する者は、借りた土地に建物を建てつつ居住することなどが可能ですが、せっかく建物を建てたにもかかわらず、土地所有者から立ち退きを命じられては困ります。
よって、借地権は「借地借家法」という法律により、土地が貸し借りされる期間は最短でも30年と定められています。
以上が地上権と借地権の三つの違いであり、まとめると以下のとおりです。
- 地上権は「工作物と竹木を所有するための他人の土地を使用する権利」であるのに対し、借地権は「建物を所有するために他人の土地を使用する権利」である
- 地上権は土地所有者の承諾を得ずとも譲渡や転貸できるのに対し、借地権は原則として土地所有者の承諾がなければ譲渡や転貸できない
- 地上権は土地が貸し借りされる期間を自由に設定できるが、借地権は最短でも30年にわたり土地が貸し借りされる
ちなみに、私が運営するサイト「誰でもわかる不動産売買」で公開するコンテンツ「地上権と区分地上権とは?賃借権との違いなどわかりやすく解説」では、より詳しく地上権を解説中です。
同コンテンツでは、他人の土地の地下や上空を使用する権利である「区分地上権」、法的に与えられる「法定地上権」もわかりやすく解説し、地上権と賃借権の違い、地上権と地役権の違いもご紹介しています。
地上権にご興味のある方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。それではまた次回の更新でお会いしましょう。不動産のあいうえおでした。