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テレビ番組のダイエット企画でよく目にする断食といえば、一定期間、宿舎に缶詰めになり、逃げ場のない中で行う修行のようなもの
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遁世して仕事や人間関係のしがらみから解き放たれ、ダイエット一本に集中できるのであればそんな断食も可能だろうが、社会生活を営みながらそれを実行するのは不可能に近い…
ダイエット指導を得意とする工藤内科の工藤孝文医師は、体重がなかなか落ちない停滞期に入った患者に対し、ダイエットの起爆剤として「断食」を勧める場合があるという。
「いくら運動と食事制限をしていても、むくみや便秘、ストレスなどで体重が減らないこともあります。そんなとき、効果の出やすい断食を勧めて、患者のモチベーション回復を図る場合があります。また、体質改善の観点からも、断食は非常に有効といえます」(工藤医師、以下同)
ダイエット指導を得意とする工藤内科の工藤孝文医師は、体重がなかなか落ちない停滞期に入った患者に対し、ダイエットの起爆剤として「断食」を勧める場合があるという。
「いくら運動と食事制限をしていても、むくみや便秘、ストレスなどで体重が減らないこともあります。そんなとき、効果の出やすい断食を勧めて、患者のモチベーション回復を図る場合があります。また、体質改善の観点からも、断食は非常に有効といえます」(工藤医師、以下同)
空腹状態が8時間続くと、体内のブドウ糖がなくなる。すると、肝臓で脂肪が分解されてケトン体ができ、主なエネルギー源となる。さらに、ケトン体はDNAに働きかけ、細胞の中のミトコンドリアのスイッチをオンにして、効率よくエネルギーを作り出すようになる。すると常に脂肪を燃やしやすく、太りにくい体になるというわけだ
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「断食は、このように痩せ体質へのスイッチを入れるだけではなく、若返り効果も期待できます。金沢医科大学・古家大祐教授の実験では、48時間の断食によってサーチュイン遺伝子という若返りの遺伝子が活性化し、そこから作られるサーチュイン酵素が2~4倍になったという結果が得られました。カロリー制限を7週間継続する実験においても、サーチュイン遺伝子は活性化しました。断食やカロリー制限が、若返りの遺伝子を呼び起こしてくれるのです」
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「断食は、このように痩せ体質へのスイッチを入れるだけではなく、若返り効果も期待できます。金沢医科大学・古家大祐教授の実験では、48時間の断食によってサーチュイン遺伝子という若返りの遺伝子が活性化し、そこから作られるサーチュイン酵素が2~4倍になったという結果が得られました。カロリー制限を7週間継続する実験においても、サーチュイン遺伝子は活性化しました。断食やカロリー制限が、若返りの遺伝子を呼び起こしてくれるのです」
【「週1」「夜だけ」の
断食も効果あり】
断食も効果あり】
毎日カロリー制限をした場合と、週1回、半日断食をした場合とでは、後者の1週間の総摂取カロリーが前者の3倍あっても、ケトン体の値に大きな差は見られなかったという実験結果もあるという。
毎日過度なカロリー制限をすると、筋肉量が減って不健康な痩せ方になるおそれがあるので注意が必要だ。一方で、断食も医師の監修がない場合には半日から1日にとどめるのが望ましい。工藤医師は、どれか1食だけを抜く場合は「夜だけ断食」を推奨している。
「摂取した糖を脂肪に変える『ビーマルワン』という時計遺伝子があって、これが活発に働く20時以降に食事を取ると、太りやすくなります。逆に言えば、昼間はビーマルワンの動きが鈍るので、しっかり食べても脂肪がつきにくいため、夜に断食するのが効率的です。消化器官に食べ物が入ったまま寝ると、血流が全身に行き渡らず疲れが取れません。胃が空のまま寝るというのは、実はものすごく大事なことなんです」
睡眠不足になると、食欲を増進させるホルモン「グレリン」が過剰に分泌され、翌日過食しやすくなるそうだ。不眠はダイエットの敵と心得て、消化器官を休ませてあげるのがベストだろう。また、断食中口にしてよいのは、水やお茶など糖分の入っていない飲み物で、とりわけ体温に近い温度の白湯は臓器に負担をかけにくいという。それでも物足りないときには、だしのうまみが救世主になってくれるはずだ。
毎日過度なカロリー制限をすると、筋肉量が減って不健康な痩せ方になるおそれがあるので注意が必要だ。一方で、断食も医師の監修がない場合には半日から1日にとどめるのが望ましい。工藤医師は、どれか1食だけを抜く場合は「夜だけ断食」を推奨している。
「摂取した糖を脂肪に変える『ビーマルワン』という時計遺伝子があって、これが活発に働く20時以降に食事を取ると、太りやすくなります。逆に言えば、昼間はビーマルワンの動きが鈍るので、しっかり食べても脂肪がつきにくいため、夜に断食するのが効率的です。消化器官に食べ物が入ったまま寝ると、血流が全身に行き渡らず疲れが取れません。胃が空のまま寝るというのは、実はものすごく大事なことなんです」
睡眠不足になると、食欲を増進させるホルモン「グレリン」が過剰に分泌され、翌日過食しやすくなるそうだ。不眠はダイエットの敵と心得て、消化器官を休ませてあげるのがベストだろう。また、断食中口にしてよいのは、水やお茶など糖分の入っていない飲み物で、とりわけ体温に近い温度の白湯は臓器に負担をかけにくいという。それでも物足りないときには、だしのうまみが救世主になってくれるはずだ。
「昆布のグルタミン酸、かつお節のイノシン酸といったうまみ成分が、脳を満足させ、ハッピーにさせてくれます。逆に、食べ過ぎてしまうのは、脳がアンハッピーな証拠。ストレス解消のために糖や脂肪を摂取するのではなくて、イライラしたときにはだしを飲んでください。最初はマズイと感じるかもしれませんが、慣れれば塩を入れなくてもおいしく感じられるようになり、食べなくても平常心を保てますよ」
【人間、ドカ食いする日もあるさ
断食はできるときにやればいい】
断食はできるときにやればいい】
断食は「毎週何曜日にやる」と厳密に決める必要はなく、生活状況や体の調子に合わせて行えば十分、と工藤医師は言う。
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「『今日はあまりおなかがすかないなぁ』という日にやればいいです。ジムで運動した日なんかは、血糖値が上がってアドレナリンが出ておなかがすかなくなるから、そういうときは絶好のチャンス。2週間に1回でもいいし、1週間に2回でもいいです。まるまる夕飯を抜かなくても、炭水化物のみ抜いておかずを少し食べるといった具合に、加減するのもアリですよ」
工藤医師は、ダイエット外来の患者がドカ食いした場合も、とがめることはないそうだ。ただ、患者が自己嫌悪に陥らないようにケアは欠かさないという。
「ドカ食いしたときに『食べ過ぎた。最悪』と思い詰めると、ストレスで過食の連鎖が起きてしまいます。そういうときは、『食べ過ぎたけど、おいしかったしリフレッシュになった。明日からまたがんばろう』と前向きなマインドに切り替えることが大事です。ダイエットの大敵はストレスなので、無理のない範囲で『週に1回、夜だけ』から始めてみてはいかがでしょうか」
工藤医師は、ダイエット外来の患者がドカ食いした場合も、とがめることはないそうだ。ただ、患者が自己嫌悪に陥らないようにケアは欠かさないという。
「ドカ食いしたときに『食べ過ぎた。最悪』と思い詰めると、ストレスで過食の連鎖が起きてしまいます。そういうときは、『食べ過ぎたけど、おいしかったしリフレッシュになった。明日からまたがんばろう』と前向きなマインドに切り替えることが大事です。ダイエットの大敵はストレスなので、無理のない範囲で『週に1回、夜だけ』から始めてみてはいかがでしょうか」
思いのほかゆるゆるな断食法だが、間食・過食・夜更かしといった惰性の行動を見直すきっかけになりそうだ。自分の体の真の要求に耳を傾けることが、痩せ体質へ近づくための第一歩かもしれない。