「魔球」と言えば、ある年代以上の方にとっては野球マンガの中に出てくる、(やや)現実離れした変化球を思い浮かべる方が多いと思います。
現在の野球マンガでは現実的なストーリーが多くなったこともあり、魔球の存在は絶滅危惧種に近くなりました。
マンガ上で初めて登場した魔球は「くりくり投手(1958年; 貝塚ひろしさん)」のくりくり投手が投げた「ドロッカーブ」、「タマタマボール」だったと言われているそうです。どんな魔球なのかは判りませんが。
そして、魔球という言葉が具体的に登場したのが「ちかいの魔球(1961年; 福本和也さん/ちばてつやさん)」とされています。「止まる魔球」、「消える魔球」、「分身魔球」がそれで、名前から想像がつきます。
その後、「巨人の星(1966年; 梶原一騎さん/川崎のぼるさん)」で星飛雄馬の「消える魔球」を筆頭に魔球ブームは最盛期を迎え「アストロ球団(1972年; 遠崎史郎さん/中島博徳さん)」では試合中にも関わらず「スカイラブ投法」、「七色の変化球」、「ファントム大魔球」、「ファイナル大魔球」と魔球を編み出しています。
同じころ、「侍ジャイアンツ(1971年; 梶原一騎さん/井上コオさん)」では「ハイジャンプ魔球」、「エビ投げハイジャンプ魔球」、「大回転魔球」、「分身魔球(横)」、「分身魔球(縦))、「ミラクルボール=ハイジャンプ+大回転+分身魔球」と出てきましたが、これらは審判がよくボークを取らないものだなと、今になって思えちゃうほどのものです。
さて、そんな魔球ですが、日本の野球界に登場したのは意外と古く、1894年(明治27年)ころに第一高校と外国人チームが対戦した時に、第一高校が三振の山を築かれ、この時の相手ピッチャーが投げたボール(変化球)に対して「神技だ、魔球だ」と言われたのが最初になるそうです。このときの監督が「ベースボールを野球という日本語にした」中馬庚さんです。
1897年(明治30年)に中馬庚さんは野球専門書を出版し、その中でカーブを「魔球」と称したそうです。
つまり、この頃は変化球という言葉がなかったこともあり、変化球=魔球と呼んでいたとのことです。
その後、大正時代より球種をカタカナ表記するようになり、徐々に「魔球」という言葉は使われなくなり、1930年代には「変化する球」という表現が使われ、1950年代に「変化球」という言葉が定着したそうです。変化球という言葉は戦後からなのですね。
そして、今では特別に優れた球種や新種の変化球、特定の選手の特に優れた決め球を魔球と呼ぶ場合が多いそうです。
さて、現代にはもう一つの魔球があるそうです。名付けて「ホレる魔球」だそうです。
1.相手の得意分野を狙う魔球
相手の得意分野めがけて会話の球を投げる。そして、大事なのは球を投げた後、相手の話を聞く態度。話題を振ったからには、しっかり真剣に聞く。この「相手の得意分野を狙う魔球」は、話を聞くところまで含めて完成です。
2.相手への興味をアピールする質問魔球
質問をするのは興味がある証拠。直接に好きとは言わないけど、さりげなく好意をアピール。
3.相手が話しているときは球を投げない
相手が話しているときに、無理矢理割り込んで話すのは最悪。しかも、関係ない話だったりつまらない話だったりするのはダメでしょう。話を遮られたら嫌です。その場の空気は読まなければなりません。タイミングです。
4.感情に寄り添うオウム返しの魔球
相手の喜怒哀楽に寄り添いつつオウム返しの球を投げるというこの魔球。「大変だった」と言うなら、「大変だったね」とオウムのように繰り返す。その上で、相手の気持ちになって話せば「分かってくれてる」と思われます。
5.相手の言葉が響いたリアクション魔球
相手の言葉が響いたら、すかさず「リアクション」という球を投げます。ちょっと大袈裟なリアクションの方が人気です。
その昔、ピンクレディーが
♪ キリキリ舞よ キリキリ舞よ
魔球は 魔球は ハリケーン♪
と歌っていましたが、これらの魔球は相手を打ち取ってはいけません。相手に打ち返してもらう魔球です。
さて、これらの魔球を自由自在に操れるかは、あなた次第です。