早ければ高校野球の来年の選抜大会から、「1週間500球以内」の球数制限が採用されることが、11月5日に開かれた「投手の障害予防に関する有識者会議」で最終答申の骨子としてまとめられ、内定しました。対象は甲子園大会と地方大会。軟式野球にも適用されます。
3年間を試行期間とし、罰則のないガイドラインとされます。また、雨天などによるノーゲームの投球数も加算される方向で、各校による複数投手の育成にかかる時間などを考慮したとのことです。3年後にデータを検証し、ルール化するされるとのことです。
また、日程を緩和するため3連戦(3日連続)を回避する日程の設定なども盛り込まれ、最終的には3連投を禁止するルールとする考えのようです。
■日本ソフトボール協会副会長・宇津木妙子委員
「障害予防のためにも、指導力向上が必要。指導者のライセンス制を目指す必要がある」
■弁護士・岡村英祐委員
「答申は安全配慮への答えになったと思う」
■筑波大監督・川村卓委員
「前向きな議論で答申をまとめることができた。球界全体が変わるきっかけになればいい」
■中体連軟式野球専門委員長・土屋好史委員
「学童、中学生の障害予防は喫緊の問題。各団体にもアプローチしたい」
■行岡病院副院長・正富隆委員
「球数制限だけでは解決しないという議論もした。いかに選手を守るかが必要」
■佐賀北元監督・百崎敏克委員
「球数制限には反対だった。それでも障害予防のための決まりを作る趣旨は分かった。球数だけに限らず、いろいろ広がったのは有意義だ」
この「1週間」での投球制限を2018年と2019年の選抜大会と選手権大会において、最終戦から当てはめてみます。
■2019年
選抜大会 石川昂弥選手(愛知・東邦高) 5日間4試合 / 430球
選手権大会 奥川恭伸選手(石川・星稜高) 6日間4試合 / 379球
■2018年
選抜大会 根尾昂選手(大阪・大阪桐蔭高 → 中日ドラゴンズ) 5日間3試合 / 392球
選手権大会 吉田輝星選手(秋田・金足農業高 → 北海道日本ハムファイターズ) 5日間4試合 / 570球
吉田選手が制限にひっかかることになります。吉田選手は二回戦から準決勝までの7日間4試合で592球を投げていましたので、準決勝の途中で降板、決勝は登板できないことになります。
こう言ってはいけないのかも知れませんが、ここ2年は該当者が少ないというのが現実であり、すでに投球制限に向かっていたのだと思えます。
しかし、一昔前はやっぱり違っていました。
■2007年
選手権大会 野村祐輔選手(広島・広陵高 → 現;広島東洋カープ) 7日間5試合 / 588球
■2006年
選手権大会 斎藤佑樹選手(西東京・早稲田実業高 → 現;北海道日本ハムファイターズ) 6日間5試合 / 689球
選手権大会 田中将大選手(北海道・駒大苫小牧高 → 現;ニューヨーク・ヤンキース) 7日間5試合 / 577球
少なくとも、決勝のマウンドは最後まで投げられない状況であったことは事実です。
2019年の選手権大会から、準々決勝の翌日に加え、準決勝の翌日にも休養日が設けられるようになりましたが、休養日がなく、もっとも投手に負担の大きかった時代があります。
■1998年
選手権大会 松坂大輔選手(神奈川・横浜高 → 元;中日ドラゴンズ) 7日間5試合 / 643球
この夏の松坂選手は当時のスケジュールのこともあり、三回戦から決勝まで4日連続4連投でした。初戦から計算していきますと、二回戦から準々決勝までの5日間で506球を投げています。よって、準々決勝での大阪・PL学園戦の延長17回裏の大詰めの場面で交代しなければなりませんでした。
これからの高校野球は、絶対的なエースが地方大会から一人で投げ抜くことはなくなり、複数の投手を育成し、継投や先発ローテーションのようなチーム作りをしなければ全国制覇どころか、甲子園出場すら難しくなっていくことだと思います。
それととも、甲子園大会のベンチ入り選手も増やした方がいいと考えますが。