先日の練習前に子どもたちに高校野球監督の言葉(+いろいろ)を配りました。
そこに「やったつもり、言ったつもり、踏んだつもり、つもりつもって何もない」という、花巻東高(岩手)・佐々木監督の言葉をいただきました。
この言葉だけを抜き出したため、意味が判らないかも知れませんので、この言葉の本意を書き留めます。
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「心をつかむ高校野球監督の名言」 田尻賢誉より
野球では、単純なミスが良く起こる。いわゆるボーンヘッドといわれるものだ。そういうプレーは、大きく試合の流れを変えてしまう。
「よく報連相といいますけど、ウチは報連相確確と言っています。報連相のあとに確認、再確認しなさいと。ベースを踏むのも、一回踏んで、もう一回踏むくらいのつもりでいろということです。送りバントで二塁に行ったランナーが、相手の「ファウル、ファウル」という声にだまされて一塁に戻ってタッチアウトとか。「そういうことがないように確認して、再確認だと。人のことを疑えというわけじゃないですけど、チームメイトに聞いても不安なところがあれば、審判に聞いてもいいんです」
佐々木監督自身も、あくまで慎重に、ここまでやるかというくらい確認をする。
「試合が雨で中止というのは、悪いけど、流石先生から聞いても信じません。人から聞いた話で誤報の可能性もある。他校の部長から「中止じゃないか?」と言われてもまだ信じない。中止だと思って、一回気が抜けて、もう一回入れようとすると絶対失敗しますから・・・」
ボーンヘッドで負けることほど情けない。技術も能力も関係なく、誰でも徹底できることだからだ。そんなミスで負けた時の後悔は普通に負ける何十倍にもなる。高校野球はトーナメントの一発勝負。だからこそ、慎重になる必要がある。
「とにかく確認、再確認する。やったつもり、言ったつもり、踏んだつもり・・・。つもりつもって何もない。仕事は報告までして完了だと話しています。やりっぱなしはダメ。上の人に「あの件どうなった?」と言われるようじゃダメ。やりました、できませんでしたまで報告をして完了なんです」
確認は何度してもやるすぎということはない。確認、再確認。
ボーンヘッドをなくす意識のないチームは常勝チームになれない。
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昨年の夏の甲子園準決勝戦で前橋育英高(群馬)に1-4で敗れた日大山形高(山形)のピッチャー庄司瑞選手は「試合前はそうでもなかったんですけど、一回表、マウンドに上がったら、いつもみたいに気持ちが乗ってこなかった」と試合後に言っていました。
山形県勢最高戦績は2006年日大山形高のベスト8。だから、このチームは入学したときから甲子園ベスト4を目標にしていました。
初戦の後、「昨日の夜のミーティングで監督が『明日勝ったら俺は日本一を目指す』と言っていたので、僕もそのつもりでやりたい」と庄司は考えたそうです。
荒木監督は、この言葉の意味を「初戦で勝って満足しないよう彼らの目指すべきところを確認した。そうしたら、ベスト4だと言ったから、刺激を与える意味で『俺はてっぺんを目指す』って言ったんです」と言っていました。
準々決勝で明徳義塾高(高知)を破り、目標のベスト4を果たした後、「この後どうするか。頂点をねらうという風に気持ちを切り替えていかないと」と、危惧していたそうです。
そして、準決勝前夜に選手に「ベスト4ではいつか抜かれる。だから抜かれない記録をつくろう。優勝すれば並ばれることはあっても、抜かれることはない」と語ったそうです。
その思いは選手に届いていると信じていたはずの準決勝戦。ところが、一回から三回まで1点ずつを失い敗退。ピッチャー庄司選手の疲れもあったとは思いますが、本人は「ベスト4という目標を達成して満足してしまったのかも。監督に切り替えろとは言われ切り替えたつもりになっていたんですけど、奥の方の気持ちは違った。結局、『つもり』だったんだと思う」と言っています。
この話。ボーンヘッドで負けたのではありません。
一発勝負のトーナメント。
「つもり」でやることと「明らかな目標」とすることとの気持ちの違い。
だからこそ、「つもり」でやっていれば、そこには気の緩み、油断や準備不足などが露呈してしまうのです。
中途半端な心構えでやっているのでは勝てないということなのですよね。