高校野球の練習試合が解禁になりました。三年生にもなればあっという間なのですよね。もちろん、選手だけではなく、マネージャーさんも同じ気持ちでしょう。
そして、高校野球(だけではないのですが)、(練習)試合でのアナウンスはやっぱりいいですよね。1月の「週刊報知高校野球」でウグイス特集がありました。神宮球場や戸田球場での東京ヤクルトスワローズ戦やジャイアンツ球場での二軍戦を中心に、プロ野球の試合で場内アナウンスを担当する北原麻稚さん(日本総業(株))が上達の秘訣を教えてくれています。
1. “ゆっくり”“焦らず”
◆日常会話よりも、ゆっくり丁寧に
野球のアナウンスに不要な言葉はありません。選手紹介、交代、注意喚起など、すべて大切なものです。
“焦らず”“ゆっくり”“丁寧に”“確実に”話すことがポイントです。
私も緊張すると早口になりがちなので、そんな時は吹奏楽部の方が楽譜に書き込むように、“ここはゆっくり意識!”と原稿に書き加えるようにします。
2. ワントーン上げよう
◆ワントーン上げてみる
普段、高校野球のアナウンスを聞く機会があります。
高校によっては先輩方から受け継いだ言い回しなどもあると思うのですが、もっと明るくアナウンスしたらいいのにな、と感じることが多いです。
選手も見に来ているお客さんも、みんな野球を楽しんでいます。
まずは野球を楽しむのが一番。ワントーン、上げてほしいなと思いますね。
3. 目線を上げて読んで
◆目指すは「スコアブックとの一体化」
原稿を机に置いたまま、マイクでしゃべると目線が下になるので、のどが詰まってしまいます。
原稿を手で持ち、目線が下がらない位置で読み上げるようにしましょう。
手が震えてしまうときは、バインダーやクリアファイルを使うと固定されて、読みやすいです。
また、私は机に上半身を密着させ、机でおなかを支えるように固定した上で、アナウンスをしています。
その方が声が安定する気がするからです。他の方に話を聞くと、固定しない方がしゃべりやすいという方もいらっしゃいます。
ぜひご自身に合った姿勢を見つけてくださいね。
スコアブックを書きながらのアナウンスは最初、難しいかもしれませんが、慣れるまでは細かく記す必要はないと思います。
私も最初は覚えるのが大変でしたが、今となっては、スコアブックがなくてはアナウンスできません(笑)。
経験を積んでいくと、スコア記入としゃべりが徐々に一体化してくるんです。
4. 念入りに準備しよう
◆「試合前の準備」と「試合中の準備」
試合前、相手チームの難読名はすぐにベンチやマネジャーさんに聞きに行くなど、早めに対処しましょう。
大学時代、東都リーグの公式戦で国学院大の谷内(やち)選手を「たにうち君」と言ってしまい「ちゃんと下調べしないと」と反省しました。
現在、ヤクルトで谷内選手のお名前をコールするたび、「あの時はごめんなさい」と初心に戻っています(笑)。
準備といえば宮本慎也さんがNHKの番組に出演された時、「先を読み、考える準備力」について話されていて、アナウンスも一緒だなと思いました。
例えばショートはゴロでダブルプレーの際、どう二塁に投げたらセカンドは一塁に投げやすいかを考えた上で、捕球するというのです。
アナウンスも「代打が出そうだな」と思ったらベンチを見たり「次の投手は誰かな」と考えながらブルペンを確認したりと、展開を見ながら予測できることはたくさんあります。
試合前の準備だけでなく、試合中にできる準備もある―。それを頭の中でいつも考えるようにしています。
5. 社会人野球がお手本
◆社会人野球のアナウンスは最高のお手本
さらなるレベルアップを目指す方は社会人野球の大会に足を運んでみて下さい。
社会人野球のアナウンスは皆さん一律ですごくきれい。いいアナウンスをたくさん聞く経験を積んでいけば、必ず上達しますよ。
北原さんは野球好きで、埼玉・武蔵越生高では野球部のマネジャーを夢見ていたそうですが、中学時代から続けていた吹奏楽部に入部。亜細亜大進学後に念願の野球部マネージャーとなり、東都リーグで場内アナウンスを務めました。
東都リーグではスコア記入を覚えることから始めて、二年生からオープン戦のアナウンスができるようになります。最初は二部リーグで神宮第二球場がデビュー戦だったそうです。たとえ、所属校が一部でも二部の球場に行くことになります。そうして、経験を積んで三年生になってから、神宮球場のアナウンスを担当したそうです。
最初はとにかく緊張だったそうですが、自身の声で試合が進行していくのが、徐々に喜びへと変わっていったそうです。必死に取り組む姿が、現在勤務している日本総業(株)の関係者の目に留まったとのことです。
北原さんは「好きな、しゃべることを仕事にしていける。自分にとってこんないいお仕事はないと思っています」とのことです。
現在は、ふたたび二軍からスタートし、下積みの中で野球愛を増して行っているそうです。
「新入団の若手やリハビリ中のベテランが『何とか一軍に行ってやるぞ』と頑張る姿を普段から見ていますので、その選手が一軍に上がった試合でアナウンスを担当できるのは、一番の喜びです。名前を呼ぶときには親御さんの気持ちにもなります(笑)」
野球場でプレーを観るのは楽しいことです。でも、その進行役として、情報を分かりやすく伝えてくれ、明るく聞きやすいアナウンスは、試合後の心地よさを増してくれます。
高校三年のマネージャーさんも高校野球生活はあとわずか。アナウンスする機会も限られてきます。ですから、球児の一球とともに大事にして欲しいと思います。
「本日はご来場下さいまして、誠にありがとうございました。どなた様もお足元にお気をつけてお帰り下さいませ」